白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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女流棋聖戦・準決勝その1(牛-鈴木戦)

2016年12月02日 23時36分42秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
「やさしく語る 碁の本質」の売れ行きは、なかなか好調のようです。
出版元に在庫が無くなったらしく、著者ルートでの購入が、一時停止となりました。
近々増刷されるかもしれませんが、お急ぎの方は、全国の書店等でご購入頂くか、電子書籍版をご利用ください。

また、早くも次回作のお話が来ました。
対象レベルは同じぐらいになる予定です。
内容は、まだ何も決まっていません。
じっくり構想を練ろうと思います。

さて、本日は第20期女流棋聖戦準決勝、牛栄子初段(黒)と鈴木歩七段の対局をご紹介します。
なお、準決勝の2局は、幽玄の間にて中継されました。



1図(実戦黒25)
黒△と打った場面ですが、全体を見渡してみましょう。
白は左上、下辺共に隙間の無い、がっちりとした構えです。
鈴木七段の堅実な棋風が、よく表れた布石といえるでしょう。

一方、黒の構えははA~Eなど、白から打ち込める場所だらけです。
その代わり、広さやスピードでは白を圧倒しています。
こちらも思い切りの良い、牛初段らしさが表れています。





2図(実戦白26~白30)
ここで白は1、3を決めましたが、これはどうだったでしょうか?
確実に眼を作った手ですが、黒を固めており、右下への打ち込みを殆ど狙えなくなっています。
何もせずに、白5周辺に打ってみたかったですね。
準決勝という事で、負けられない気持ちが、堅い着手を選ばせたのかもしれません。





3図(実戦黒31~黒35)
白が守った所を、さらに黒1と追及したのは、攻めっ気の強い牛初段らしいですね。
白2の打ち込みが見え透いていますが、黒3、5と大きく睨んで、十分戦えると見ています。





4図(実戦白36~黒45)
白3のようなスベリに、頭が痛くなる方は多いですね。
白7に黒8と押さえると、白9に切りが入って鬱陶しい事になります。
ですから私は、白7には一旦黒9と引いておきましょう、と教えています。
しかし、頑張れる所は徹底的に頑張るのが、牛初段です。





5図(実戦白46~白52)
鈴木七段は白1、3の手筋から、白7までがっちり守りました。
意外なほどの堅さで、棋風というより、本調子でない印象を受けました。





6図(実戦黒53~黒59)
牛初段は黒1から、白を攻めながら周囲を固めていきます。
黒3や黒5の守りを先手で打ち、大きな黒7へ回る事ができました。
黒好調でしょう。





7図(実戦白60)
鈴木七段も、危機感を感じていたのでしょう。
白1のツケとは!
この手の意味を簡単に言えば、白Aからの分断と、白B付近からの右辺侵入を両睨みにした手です。

それにしても、この手は凄いですね。
非凡な発想です。





8図(実戦黒61~黒67)
黒は1つハネてから、黒3と右辺を守って頑張りました。
白4、6で中央を分断されますが、なんとかなると見ています。





9図(実戦白68~黒75)
黒6までと逃げて、とりあえずは捕まりそうにありません。
しかし、それを横目に、白7と仕掛けて来ました。
ここで戦いを起こし、場合によっては左右の絡み攻めを狙おうという事でしょう。
それに対して、黒8は一見ソッポですが、意味があります。





10図(変化図)
もし白1と下辺を受けてくれれば、黒2とツケるつもりでしょう。
白3から分断に来れば、黒18まで取ってしまいます。
黒△が、予め白Aの切りを防いでいる事をご確認ください。





11図(実戦白76~白82)
という訳で、白1から反撃しました。
白7まで、黒△を取り込まれては、黒が損したようにも見えますが・・・。





12図(実戦黒83~白94)
黒1の押さえを打てる事が大きいのです。
白2、4と2手かけても、まだ連絡が不完全です。
ひとまず黒は、先手で打てる所は打っておき、白12の後・・・。





13図(実戦黒95~黒99)
黒1から、下辺の白に寄り付き開始!
一歩一歩ですが、確実に白に迫っています。





14図(実戦黒143)
最終的には黒△まで、攻めの効果で、中央に大きな黒地ができました。
これが物を言い、牛初段が黒番6目半勝ちを収めました。

所々堅さが見られた鈴木七段に対し、牛初段は終始のびのびと戦った印象です。
まだ17歳の牛初段、流石に勢いがありますね。


明日はもう準決勝のもう1局、星合志保初段宮本千春初段の対局をご紹介します。
19歳と22歳の若手同士の対決は、早碁ならではの波乱万丈な展開となりました。
題して、「あれ、おかしいですね。もしかして頓死!?(仮題)」です。
お楽しみに!
(タイトルは予告なく変更される事があります)