白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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損コウ

2018年05月19日 23時57分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨日は仕事で忙しく、更新をお休みしました。
無理せず時々はお休みしていきます。

ところで、Youtubeの日本棋院チャンネル解説した件ですが、現在はその部分も見られるようになっています(私の解説は2時間48分47秒付近から始まります)。
Youtubeの仕様で、放送中や終了直後には全ては見られないことがあるとのことでした。

私も確認してみましたが、手元の端末を操作しながらという、不慣れな形式に手間取ったところもありましたが、それなりにはまとめられているでしょうか。
ただ、ある問題に気が付き、それが最初から最後まで気になって仕方がありませんでした。
まあ、そのあたりも日本棋院メールマガジンの方に書いておこうと思います。


さて、本日は第5回立葵杯の準決勝が行われました。
そのうちの1局、謝依旻女流本因坊と星合志保二段の対局で、私が注目した場面をご紹介しましょう。
今回はちょっとマニアックな感じです。



1図(テーマ図)
謝女流本因坊の黒番です。
黒1の当てに白2と弾いて受けました。
次に黒Aと取り、コウ争いが始まっています。

このコウに黒が負けると、右上隅が死んでしまいます。
逆に、白が負けた場合は右上一帯の白が全滅してしまう可能性があります。
非常に価値の大きなコウ争いです。





2図(実戦)
黒1のコウ立てに注目してみましょう。
この手では黒2と打ち、白1となればここの白地は1目です。
しかし、実戦は2目になっているので、黒1は明らかに損なコウ立てですね。

プロは損コウを打つことを強く嫌います。
1目、2目と損を重ねていってしまうと、コウに勝っても得をしないということにつながりますからね。
アマの皆さんと対局していると、コウ争い中に10目や20目得してしまうこともありますが・・・。

ではなぜ黒1と打ったかと言えば、黒Aもコウ立てになるからです。
1目払って1回のコウ立てを買ったようなものですね。





3図(実戦)
黒1に対して白2と遠慮しましたが、これも部分的にはあり得ない手です。
白Aと押さえた方が1目得ですからね。
しかし、そう打つと黒2のコウ立てができてしまいます。
つまり、実戦は1目払って相手のコウ立てを1つ消したということになりますね。

プロは数字にシビアであり、1目どころか3分の1目、6分の1目といった損にすら神経を尖らせています。
しかし、本局では両者共に計算を捨て、なりふり構わずコウを勝ちにいっているのです。
必死に戦っていることがよく伝わってきて面白いですね。


本局は謝女流本因坊が勝ち、吉田美香八段との決勝に進みました。
吉田八段は女流タイトルを多数獲得した実力者ですが、謝女流本因坊とはあまり打っているイメージがありません。
どんな対局になるのか、楽しみですね。