白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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藤村洋輔三段ー二十四世本因坊秀芳

2016年12月15日 23時40分46秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
木曜日は棋士の手合日です。
私も対局があり、苦しみながらも何とか勝つ事ができました。
終局は6時過ぎ、大広間で一番最後の終局でした。
久しぶりに頭が痛くなるまで考えた気がします。

さて、本日も幽玄の間では、多数の対局が中継されました。
その中から、藤村洋輔三段二十四世本因坊秀芳の対局をご紹介しましょう。



1図(実戦黒41)
藤村三段は北海道出身、依田紀基九段門下の21歳です。
さて、まずは黒△に注目してください。
これは左右の白を分断した手ですが、何故AやBではないのでしょうか?





2図(変化図)
実は隅の白は、まだ生きていません。
黒1と1回逃げておいて、黒3、5とコウの形で粘る手が生じています。
ダメ詰まりで白Aと繋ぐ事ができず、白Bと取ってコウ争いです。
黒もコウ立てが無いのですぐには仕掛けられませんが、白にとって大きな負担になります。
前図の一間飛びは、この手を狙っているのです。





3図(実戦白42~黒49)
白は一旦は手を抜きましたが、いつまでも放っておく訳にはいきません。
白7と手入れする事になりましたが、先手を取って黒8のボウシに回る事ができました。
「攻めはボウシ、ケイマ」の格言通りですね。





4図(実戦白50~黒57)
白1、3は、黒Aの割り込みからの切断を防いだ手です。
その間に黒4のケイマで右側への出口を塞ぎ、黒はますます好調です。





5図(実戦白58~白64)
白1、3で黒の眼を取り、白7でAからの切断を見せました。
白は黒の弱みを衝きながら凌ごうとしています。





6図(変化図)
ここで脅しに屈して黒1と繋ぐと、白2と好形で進出されてしまいます。
黒A、白B、黒Cの切断が、白△によってピッタリ防がれています。





7図(実戦黒65)
実戦は、ここで黒1と反撃!
自分の傷を守る前に、AやBの断点を狙って行きました。
ただ守るだけの手は打たないという、厳しい発想です。





8図(実戦白66~黒69)
白1、3と突破を目指しましたが、黒2、4と緩まずに対応しています。
Aの傷が気になる所ですが、大丈夫でしょうか?





9図(変化図)
白1と切って来れば、黒4の切りが成立します。
黒△が急所に迫っていて、白は息苦しい姿です。





10図(続・変化図)
その後は黒14までとなり、白が取られてしまいます。





11図(実戦白70)
という訳で、白1と守ったのは止むを得ません。
ここで黒もAと守れば、白Bから脱出する事になるでしょう。





12図(実戦黒71~黒75)
ところが、黒1~5と攻撃続行!
白に息をつく暇を与えません。





13図(実戦白76~黒85)
白3、5で頭を出そうとしますが、黒6、8とじわじわ攻め、黒10でとうとう捕まりました。
この一歩一歩の重厚な攻めは、師匠の依田九段を思わせますね。





14図(実戦白86~黒95)
白3、9と、2手かけて眼を作る羽目になってしまいました。
その間に黒の外勢はさらに強化され、全局を睥睨しています。
藤村三段の快勝譜でした。