3回にわたるイノベーションのジレンマ読書会が終わりました。
今回の読書会で準備・進行役を担当して思ったことはふたつあります。
まず、大事だけど、私の時間の都合で資料に入れなかったキーワード・概念に
対して見逃すことなく質問をしてくれたことです。ちゃんと資料つくらなくて
ゴメンって思いつつ、重要なポイントを逃さないなと心強く思いました。
もうひとつは、議論の流れに関係のない発言がなかったことです。反省点に
「議論を脱線させてしまった」と言っている人もいますが、その「脱線」も
議論の流れに必要な内容しかなかったと思います。このように、議論の
進む方向を考えながら意見を言い、聞くことができると強いと思います。
では、7月14日に行われた読書会の報告をいたします。
================================================
IEEE名大学生支部/BLS中部「イノベーションのジレンマ」読書会 第6回 報告
================================================
<■ 目次 ■>
・概要
・背景
・当日の流れ
・議論内容
・全体の反省
・個人の反省
・これまでの読書会を通しての反省
<■ 概要 ■>
日 時: 2005年7月14日(水) 18:30-21:00
場 所: 名古屋大学IB西館5階ミーティングルーム (IB中央館1階テーブルスペースより変更)
参加者: 多賀谷・内藤・平林・米岡
書 籍: クレイトン・クリステンセン著
「イノベーションのジレンマ (増刷改訂版)」翔泳社 (2001年) の8-10章
<■ 背景 ■>
新規技術・ビジネスのサイクルが1ヶ月の単位になった現在、組織・個人がもつ資金と時間を
適切に配分しなければならなくなった。この時代が要求するのは、技術動向とビジネススキルを
ともに有し、プロジェクトをまとめ上げることが可能な人材である。
<■ 当日の流れ ■>
18:30-18:40 背景・全体の流れ
18:40-19:10 8章 (章の概要・コンセンサス・議論)
19:10-19:40 9章 (章の概要・コンセンサス・議論)
19:40-20:00 休憩・フリートーク
20:00-20:20 10章 (章の概要・コンセンサス・議論)
20:20-20:50 ケーススタディー (人生のジレンマ)
20:50-21:00 まとめ
<■ 議論内容 ■>
第8章 組織のできること、できないことを評価する方法
・組織の能力 (時間の経過により以下の1-4の順に変化)
1. 資源 (人材・設備・技術・資金・関連企業)
- 価値を生み出す本質ではない
2. プロセス (インプットを価値に変換するもの)
- 本質的に変化をこばむ
3. 価値基準 (優先順位を決めるもの)
- 許容できる粗利益率
- 関心を引くに値する市場の規模
4. 文化 (意識的なものでなく思い込み)
・変化に対する能力を生み出す方法
- 組織の価値基準との適合性 破壊的
自律的組織
- 組織の価値基準との適合性 持続的
主流組織
- 組織のプロセスとの適合性 新しいプロセス
重量チーム (メンバー全員がマネージャー級)
- 組織のプロセスとの適合性 従来のプロセス
機能的組織
第9章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
・性能の供給過剰
- 製品競争の順序は機能、信頼性、利便性、価格
- Innovator, early adopter, <CHASM>, early majority, late majority, laggards
・破壊的技術の製品に対する性質
- 主流市場で無価値だが新市場ではセールスポイント
- シンプル、低価格、高信頼性、便利
・製品競争の進化に対するマネジメント
- 持続的技術の軌跡に沿って上位市場へ移行
- ひとつの顧客層でニーズに合わせてゆっくり進化
- 顧客のニーズを技術進化の軌跡に押し上げる
第10章 破壊的イノベーションのマネジメント -事例研究-
・電気自動車の製品開発
- 単純、高信頼性、便利
- 特徴・機能・スタイルを変更可能な設計
- 低価格設定
・電気自動車の販売戦略
- 新しい流通経路を見つける OR 創設する
・電気自動車に適した組織
- 独立組織・重量チーム
・同一市場で闘うか、下位市場で闘うか
- トヨタ・プリウス式 電気自動車開発
+ 利点
最初から大きい利益
強力なバリューネットワーク (ガソリンスタンド含む)
+ 欠点
失敗した時の損害が大きい (最初の開発コスト大)
最初に要求されるレベルが高い
- クリステンセン式 電気自動車開発
+ 利点
失敗のコストが小さい
独占が可能になる
ブランド価値になる
+ 欠点
最初のマーケットが分からない
第11章 まとめ
1. 市場が求める進歩のペースは技術進化のペースより遅い
2. 資源配分プロセスはバリューネットワークに影響される
3. 資源を破壊的技術の開発よりもマーケット開拓に向けるべき
4. 組織の能力は専門化され異なるバリューネットワークでは無能力
5. 破壊的技術に対して投資するために必要な情報は存在しない
6. 持続的技術では追随者でもよいが破壊的技術では先駆者になれ
7. 破壊的技術新規参入の障壁は自社のプロセス・価値基準・文化
事例研究 人生のジレンマ
・破壊的要因が自分に近づいている
- 何か対策をとらねばならない
↑
ジレンマ
↓
・現在の自分、資金、人間関係
- 身動きがとれない
<■ 全体の反省 ■>
GOODな点
・前回までと比べて本の内容をもとにした高いレベルの議論ができた
・8章の表の見方で混乱していた際に、まず皆の中でコンセンサスのとれていな
い「プロセス」という言葉に遡って議論し、そこから徐々に話を進めていった点
が非常によかった。
・本のないようにとどまらず幅広く応用例を考えられた。
・今回で読書会も6回目、みんな慣れて来て、型にはまった議論ではなくて、
自分たちらしい議論ができるようになってきた。
・議論がそれるときも、全員が理解した上でそらしているので、そのまま議論が
発散せず、元の議論に何らかの関連性を持たせることができている。
・質の高い話し合いができる要因は以下のように考えられる。
1)参加者で議論するためのオリジナル課題が事前に用意されているから。
2)疑問点を明確にし、それを筋道を立てて解決していく力、人から意見を引き出す
力があるから。(今回の場合は、主に”プロセス”の定義のところ)
BADな点
・テスト勉強で通常読書会を行なっているスペースが埋まってしまっており、
開始時間が遅れてしまった。
・話がそれてしまう場面があった。(ただ、それはそれで面白いし有益なので、
そこまで問題ではないかもしれない。)
・一つ一つのトピックを話し込みすぎて、時間配分がうまく行かなかった。
・やはり新しい人に参加して欲しい。
そのためには、今後どのようなアクションを取るべきかを話し合う必要があると思う。
<■ 個人の反省 ■>
GOODな点
・本の内容の解釈の際に、例を示すことで皆の理解度を高めることに貢献できた。
・「プロセス」など、本書を読むだけでは理解できなかった点まで理解することができた。
・熟読して、不明な点を事前に集められた。
・自分の視点で、具体的に意見を言うことができた。
・脱線させてしまったが、例をあげて説明した。
BADな点
・説明がわかりにくい部分が多々あった。意見の要点を簡単に整理してから発言
するよう心がけたい。また、その際に分かりやすい例を示せるよう意識したい。
・たまに話を脱線させてしまうところがあった。
・脱線したときに本線に戻すまでのタイミングの見極めを誤った。間延びしすぎた
・あることを説明するときに、どうしても長くなってしまったこと。
これは、自分の課題でもあるが、物事を説明するときは、まずは、要点を押さえて
簡潔に示す必要がある。
・もう少し相手の意見を引き出す発言があると良かった。
<■ これまでの読書会を通しての反省 ■>
[[意見1]]
全体的には、とても楽しく議論することができた。
今までの読書会のアンケートの中で、”脱線させてしまった”という反省があったが、
議論に関連性が少しでもあるならば、全く問題ないと思うし、場の雰囲気もなごむ。
また、視野も広がると思うので、むしろいいのではないか。
議論の中でもうまくON,OFFを切り替えていければいいなと思う。
今回は、”少し脱線しますが”や”議論とは関係ないですが”という前置きがあったので、
容易に脱線話を聞くことができたし、話すことができた。
時間配分、本の内容の質、量にもよると思うが、これからもこのような”議論を深める話”
も意識的にしていけたらなと思う。
[[意見2]]
イノベーションのジレンマは個人的には
ビジョナリーよりもおもしろく、また応用できる点が多いなと思いました。
今日あまり取り上げられませんでしたが
9章10章にある
破壊的か否かを判別する要素(要素というよりも最低限のチェック?)
のようなものはどの場面においても役立つのではないかと思います。
研究でも何でも進めてく上で
今自分が「すぐ芽の出る土壌」なのか
「市場作りの土壌整備」なのかを判別できると
計画の建て方やモチベーションの維持などに大きく役立つのではと思います。
今回の読書会で準備・進行役を担当して思ったことはふたつあります。
まず、大事だけど、私の時間の都合で資料に入れなかったキーワード・概念に
対して見逃すことなく質問をしてくれたことです。ちゃんと資料つくらなくて
ゴメンって思いつつ、重要なポイントを逃さないなと心強く思いました。
もうひとつは、議論の流れに関係のない発言がなかったことです。反省点に
「議論を脱線させてしまった」と言っている人もいますが、その「脱線」も
議論の流れに必要な内容しかなかったと思います。このように、議論の
進む方向を考えながら意見を言い、聞くことができると強いと思います。
では、7月14日に行われた読書会の報告をいたします。
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IEEE名大学生支部/BLS中部「イノベーションのジレンマ」読書会 第6回 報告
================================================
<■ 目次 ■>
・概要
・背景
・当日の流れ
・議論内容
・全体の反省
・個人の反省
・これまでの読書会を通しての反省
<■ 概要 ■>
日 時: 2005年7月14日(水) 18:30-21:00
場 所: 名古屋大学IB西館5階ミーティングルーム (IB中央館1階テーブルスペースより変更)
参加者: 多賀谷・内藤・平林・米岡
書 籍: クレイトン・クリステンセン著
「イノベーションのジレンマ (増刷改訂版)」翔泳社 (2001年) の8-10章
<■ 背景 ■>
新規技術・ビジネスのサイクルが1ヶ月の単位になった現在、組織・個人がもつ資金と時間を
適切に配分しなければならなくなった。この時代が要求するのは、技術動向とビジネススキルを
ともに有し、プロジェクトをまとめ上げることが可能な人材である。
<■ 当日の流れ ■>
18:30-18:40 背景・全体の流れ
18:40-19:10 8章 (章の概要・コンセンサス・議論)
19:10-19:40 9章 (章の概要・コンセンサス・議論)
19:40-20:00 休憩・フリートーク
20:00-20:20 10章 (章の概要・コンセンサス・議論)
20:20-20:50 ケーススタディー (人生のジレンマ)
20:50-21:00 まとめ
<■ 議論内容 ■>
第8章 組織のできること、できないことを評価する方法
・組織の能力 (時間の経過により以下の1-4の順に変化)
1. 資源 (人材・設備・技術・資金・関連企業)
- 価値を生み出す本質ではない
2. プロセス (インプットを価値に変換するもの)
- 本質的に変化をこばむ
3. 価値基準 (優先順位を決めるもの)
- 許容できる粗利益率
- 関心を引くに値する市場の規模
4. 文化 (意識的なものでなく思い込み)
・変化に対する能力を生み出す方法
- 組織の価値基準との適合性 破壊的
自律的組織
- 組織の価値基準との適合性 持続的
主流組織
- 組織のプロセスとの適合性 新しいプロセス
重量チーム (メンバー全員がマネージャー級)
- 組織のプロセスとの適合性 従来のプロセス
機能的組織
第9章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
・性能の供給過剰
- 製品競争の順序は機能、信頼性、利便性、価格
- Innovator, early adopter, <CHASM>, early majority, late majority, laggards
・破壊的技術の製品に対する性質
- 主流市場で無価値だが新市場ではセールスポイント
- シンプル、低価格、高信頼性、便利
・製品競争の進化に対するマネジメント
- 持続的技術の軌跡に沿って上位市場へ移行
- ひとつの顧客層でニーズに合わせてゆっくり進化
- 顧客のニーズを技術進化の軌跡に押し上げる
第10章 破壊的イノベーションのマネジメント -事例研究-
・電気自動車の製品開発
- 単純、高信頼性、便利
- 特徴・機能・スタイルを変更可能な設計
- 低価格設定
・電気自動車の販売戦略
- 新しい流通経路を見つける OR 創設する
・電気自動車に適した組織
- 独立組織・重量チーム
・同一市場で闘うか、下位市場で闘うか
- トヨタ・プリウス式 電気自動車開発
+ 利点
最初から大きい利益
強力なバリューネットワーク (ガソリンスタンド含む)
+ 欠点
失敗した時の損害が大きい (最初の開発コスト大)
最初に要求されるレベルが高い
- クリステンセン式 電気自動車開発
+ 利点
失敗のコストが小さい
独占が可能になる
ブランド価値になる
+ 欠点
最初のマーケットが分からない
第11章 まとめ
1. 市場が求める進歩のペースは技術進化のペースより遅い
2. 資源配分プロセスはバリューネットワークに影響される
3. 資源を破壊的技術の開発よりもマーケット開拓に向けるべき
4. 組織の能力は専門化され異なるバリューネットワークでは無能力
5. 破壊的技術に対して投資するために必要な情報は存在しない
6. 持続的技術では追随者でもよいが破壊的技術では先駆者になれ
7. 破壊的技術新規参入の障壁は自社のプロセス・価値基準・文化
事例研究 人生のジレンマ
・破壊的要因が自分に近づいている
- 何か対策をとらねばならない
↑
ジレンマ
↓
・現在の自分、資金、人間関係
- 身動きがとれない
<■ 全体の反省 ■>
GOODな点
・前回までと比べて本の内容をもとにした高いレベルの議論ができた
・8章の表の見方で混乱していた際に、まず皆の中でコンセンサスのとれていな
い「プロセス」という言葉に遡って議論し、そこから徐々に話を進めていった点
が非常によかった。
・本のないようにとどまらず幅広く応用例を考えられた。
・今回で読書会も6回目、みんな慣れて来て、型にはまった議論ではなくて、
自分たちらしい議論ができるようになってきた。
・議論がそれるときも、全員が理解した上でそらしているので、そのまま議論が
発散せず、元の議論に何らかの関連性を持たせることができている。
・質の高い話し合いができる要因は以下のように考えられる。
1)参加者で議論するためのオリジナル課題が事前に用意されているから。
2)疑問点を明確にし、それを筋道を立てて解決していく力、人から意見を引き出す
力があるから。(今回の場合は、主に”プロセス”の定義のところ)
BADな点
・テスト勉強で通常読書会を行なっているスペースが埋まってしまっており、
開始時間が遅れてしまった。
・話がそれてしまう場面があった。(ただ、それはそれで面白いし有益なので、
そこまで問題ではないかもしれない。)
・一つ一つのトピックを話し込みすぎて、時間配分がうまく行かなかった。
・やはり新しい人に参加して欲しい。
そのためには、今後どのようなアクションを取るべきかを話し合う必要があると思う。
<■ 個人の反省 ■>
GOODな点
・本の内容の解釈の際に、例を示すことで皆の理解度を高めることに貢献できた。
・「プロセス」など、本書を読むだけでは理解できなかった点まで理解することができた。
・熟読して、不明な点を事前に集められた。
・自分の視点で、具体的に意見を言うことができた。
・脱線させてしまったが、例をあげて説明した。
BADな点
・説明がわかりにくい部分が多々あった。意見の要点を簡単に整理してから発言
するよう心がけたい。また、その際に分かりやすい例を示せるよう意識したい。
・たまに話を脱線させてしまうところがあった。
・脱線したときに本線に戻すまでのタイミングの見極めを誤った。間延びしすぎた
・あることを説明するときに、どうしても長くなってしまったこと。
これは、自分の課題でもあるが、物事を説明するときは、まずは、要点を押さえて
簡潔に示す必要がある。
・もう少し相手の意見を引き出す発言があると良かった。
<■ これまでの読書会を通しての反省 ■>
[[意見1]]
全体的には、とても楽しく議論することができた。
今までの読書会のアンケートの中で、”脱線させてしまった”という反省があったが、
議論に関連性が少しでもあるならば、全く問題ないと思うし、場の雰囲気もなごむ。
また、視野も広がると思うので、むしろいいのではないか。
議論の中でもうまくON,OFFを切り替えていければいいなと思う。
今回は、”少し脱線しますが”や”議論とは関係ないですが”という前置きがあったので、
容易に脱線話を聞くことができたし、話すことができた。
時間配分、本の内容の質、量にもよると思うが、これからもこのような”議論を深める話”
も意識的にしていけたらなと思う。
[[意見2]]
イノベーションのジレンマは個人的には
ビジョナリーよりもおもしろく、また応用できる点が多いなと思いました。
今日あまり取り上げられませんでしたが
9章10章にある
破壊的か否かを判別する要素(要素というよりも最低限のチェック?)
のようなものはどの場面においても役立つのではないかと思います。
研究でも何でも進めてく上で
今自分が「すぐ芽の出る土壌」なのか
「市場作りの土壌整備」なのかを判別できると
計画の建て方やモチベーションの維持などに大きく役立つのではと思います。