ユーラシアの風~2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

森をよみがえらせる現場(植林ツアー)

2010年05月25日 | 中国(1)天津→呼市
烏蘭察布市郊外、卓資県旗下菅鎮からさらに外れた村。
今日はここのプロジェクトに同行した。

4万本の森をよみがえらせよう!というのがこの地の課題。

まずは写真をご覧ください。



1950年代、この地は遊牧を生業とするモンゴル族の地で、
人間はほとんどいなかった。

奥のほうに木々が見えるだろうか。以前は森がこの谷を覆っていたそうだ。
ところが、急激に人口が増えた国内の他の地域から内蒙古へ、
政府による強制移住民政策が始まる。
無数の村が形成され、土地を開墾し、燃料として木を切った。

国の発展に伴い、過去を反省し、また予算をつける余裕が生まれ、
2000年代より、政府は開墾しすぎた畑や山を森を元に戻そうという政策
「退耕還林(たいこうかんりん)」を開始した。
そのときの補助金で植えた苗木が、足元に無数に植わっている。
ところが、木を植えるだけ植えて、アフターケアは何もなかった。
当然、家畜に芽が食べられるなどし、うまくいかない。

…というわけで、今度は日本の緑化協力の資金をもって、
仕切りなおそうというのがこのプロジェクト。

4万本の木を根付かせるために、ターゲットの範囲を絞って柵を立て、
(放牧されている家畜から芽を守るため)
簡単な灌漑設備(水をまくためのポンプと貯水池、ホース)を作ります。


しかし、ここでも否応なく見せ付けられる貧困の姿。
村人の家の中に入ると、電化製品は裸電球とテレビだけ。
水道ない。ガスもない。炊事も洗濯もカメの水。
まきを使って調理をする。
ほこりの巻き起こる土の道。時折響くヤギの鳴き声。
2010年にあってまさに、「となりのトトロ」の世界そのものだ。
しかし若い人がいない。皆快適な街へ出て行き、帰ってこない。

石炭を買うお金がないから、木を切って薪にする。
ヤギに食べさせるものがないから、植林地にも放牧する。
容赦なく襲う干ばつ。

村人を一日雇うのに約60元だそうだ。もちろん肉体労働。
以前、このブログに物価が安くてパラダイス!と呑気に書いた自分を恥じる。



○羊は、村人に貴重な現金収入をもたらす。



○村人が、昼ご飯を振舞ってくれた。