ユーラシアの風~2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

2010年・自転車による単独ユーラシア大陸横断記

嵐の夜

2010年06月30日 | 中国(2)呼市→西寧
ふと、テントが揺さぶられている気がして目を覚ます。
強い風が吹いているようだ。
真っ暗闇の中、手探りで時計を探す。夜中の1時を少し過ぎたところだ。

起こされてしまったため、しばらく寝付けない。風は強さを増していく。
波音も、寝た頃よりもはるかに大きい。
ここは浜辺から50mくらい離れた、少し盛り上がった堅い砂地。
さえぎるものが何もないから、テントは湖面を走る突風をまともに受ける。

やや、ヤバい、経験したことのない強風だ。
一応サボらずペグ(固定用釘)打っといたけど大丈夫かな?

肖も起きたみたいで、何か言ってるけど聞こえない。
じきに雨が降り出す。そして閃光。あぁ雷だ。嵐が来る。
夕方あんなに晴れてたのに…。

当然逃げ場はない。国道から1キロも離れた原野の只中。
国道に戻ったところで村までは遠い。建物もない。
だいたい荷物をおいて逃げるわけには行かないし、
逃げたところで原野を進むのが安全なわけもない。

選択肢は一つ。やり過ごすのみ…。

徐々に狭まる閃光と雷鳴の間隔、激しさを増す風雨。
肖は外に出て、しまってなかった荷物を集めている。
「テントが飛ぶから中にいろ!」と叫ぶが通じるわけもなく。

震えが止まらなかった。寒いわけじゃない。恐怖感からくる震えだ。
こんなの初めてだ。

何でテント泊にしたのか、なんでこんな湖畔を選んだのか、
考えてみても後の祭り。これで雷直撃したら万事休すか…
あぁ…。
なんて思ってても仕方ないので、音楽を聴こう。
こんなときは賑やかなのがいいけど…そうだ、出発直前に、何となく
元気出るかなーと思って「ワンピース」の歌集を借りていた。

懐かし、バンプのsailing day。
♪精一杯 運命に抵抗 ~
 ~ 嵐の中嬉しそうに 帆(テント)を張った 愚かなdreamer♪

ハマる。おれ愚か過ぎる。
肖は湖面ぎりぎりに張ろうとしてたけど、制止しておいて良かった。

なんかよく分からんけど、終盤で声優たちがワイワイ言ってる
トラックがあった。
ルフィ「海族王に、おれはなる!」
ゾロ「世界一の剣豪になるぜ!」
ナミ「世界中の海図を描くわ!」
チョッパー「世界を、…この目で見るんだ!」
…おいおい、いい年しておれはまだチョッパーレベルかよ。
ちぃせーなぁ…スケールも心臓も…。


どれだけ時間が経っただろう。心なしか、雷が遠ざかってく気がする。
助かった?とりあえず、もうしんどいから寝よう。
耳栓とアイマスク持ってこればよかった…。


ふと気がつくと明るくなり始めている。
5時半。
波の音と、鳥の鳴き声だけが聞こえる。
ファスナーから顔を出してあたりを確認。浸水はゼロ。
ペグも昨日打ったまま。
表には肖の荷物が散乱している。
彼のテントには、どこから持ってきたのか、でかい石が
いくつものっかっている。

起きた肖と顔を見合わせて、大笑いした。






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青海的藍 Qinghai Blue

2010年06月28日 | 中国(2)呼市→西寧
日月山を越えると、天候は急激に悪化した。
冷たい雨が降る。気温は7℃。風邪を引きそうだ。
おまけに肖は自転車を押して歩いているので、かなり遅れている。
その日は走行を打ち切り、昼食をとった食堂に泊まり天候の回復を待った。


翌日。
雨こそ上がったが今にも降り出しそうな曇り空。
しかし、じっとしていても仕方がないので走行を開始する。



昼前に湖面が見えてきた。
青海湖は標高3,200mに位置する中国最大の湖。
昔は海だったとされ、湖水は塩分が混じり塩辛い。
面積は実に琵琶湖の6倍。一周するのに何日かかるんだろう…。
(琵琶湖はゆったり走って2日くらい)

しかし、肝心の空は雲に覆われ、時折雨がぱらつく。
せっかくの青海湖も、水面の色は「白」。
一日待ったのにな…と気分だけはブルー。




国道は湖畔からかなり離れているので、波打ち際まで行けそうな道には
それらしい看板と見張り。きっと金とられるんだろう。
湖はあんたらのものじゃないだろう。

誰もいないところを見つけて湖に近づく。
すると、タイミングよく雲が切れ始める。
青空の下の湖は、青く染まる。
青海湖の「青」は、空の色だった。





中国は晴れていても白い空が多かった。
工場排煙も多いけど、そもそも乾燥しているから、大気中に塵が多い。
ここは標高が高いから、空も澄んでいる。雲も近い。






○湖岸を進んで有料区まで来てしまった。
 適当に言い逃れる。


○彼はモウニュウ(毛牛=ヤク牛)で、青海湖周辺でよく見かけます。

昼食をとった後は、いよいよ今日のキャンプ地探し。
「青海湖でキャンプ」は肖との約束だった。

最初に見つけた場所は、自然保護区のためアウト。
監視員に見つかった。



二件目は、国道からもかなり離れているし、先客のゴミもあるし、
きっと大丈夫だろう、ということで決定。

ラーメンを作って、波の音を聞きながら就寝。
これぞキャンプツーリングの至福。


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心洗われる風景

2010年06月25日 | 中国(2)呼市→西寧
国道109号を、青海湖に向けてひたすら登る。
山々は果てしなく続き、道端には見たことのない花が咲き誇り、
聞いたことのない虫の音が響く。
斜面では無数の羊たちが草を食み、それを追う民の指笛がこだまする。





風は冷たい。そして、どこまでも澄んでいる。
目の前にそびえる山はひときわ高いが、地図に名はない。
雪をいただいた白い斜面と、吐き出される白い曇が溶け合い、
かえって存在感を増している。



心洗われる風景とは、こういうものを言うのだろうか。

しかし、その風景はあまりにも現実離れしていて、
自分の中に起こる変化は何もなかった。
そして、風は容赦なく体温を奪い、変化が訪れるまで
そこにとどまることを許さなかった。

徐々に移り行く風景とともにある旅。自転車の旅。
バスから降りると、突如広がる大パノラマ…といった類の感動はない。
風景は、窓と言う画面を隔てた「景色」としてではなく、
その要素の全てが「実物」としてそこに存在する。
決してそれ以上でも、それ以下でもない。
より優れた姿を見せようとはしない。
道の隅にはうんざりするほどゴミが捨ててある。
それすら含めた全てがただ、そこにある。
今までも、これからも。

たったそれだけのことを確かめながら、ペダルを踏みしめる自転車の旅。




そもそも、「心洗われる」って、どうして言うのだろう。
心が汚れているから、洗えるのだろうか。
心は洗っても、結局また汚れていくのだろうか。
でも、心を汚すことは、そんなに悪いことなのか。

言いたくないことを言う、面白くもないのに笑う、売りたくもないものを売る。
そういうことを「汚い」と、どうして言えるのか。

大自然の中、羊を追って暮らす彼らは、平気でぼってくるし、
嘘つくし、好き勝手やってるし…そんな彼らをどうして「素朴」と言えるのか。

このどうにもならない大自然の中で、ごちゃごちゃうごめく人間どもの中で
もまれ生きていくのに、きれいも汚いもない。
ただ巡り行く日常を、少しの希望とカネと楽しみを絶やさずに過ごしていく。
今日も目の前では、それだけのことが繰り返されている。



○日月亭は、昔、皇帝の娘がチベットの王に嫁に行くために通った地。
 この峠は、黄土高原と青蔵高原を分かつ場所。




○しかし、片道しかなかった旅に思いを馳せる隙はない。
 周囲は観光地化され、物売りで溢れかえる。
 堂内まで牛乳売りが侵入。キレ気味に「不要」といっても退かない。
 不快極まりない。
 それもよそ者の感覚だから仕方ない。今、ここは「そういう場所」なのだから。


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チーム肖加、中国行(3)

2010年06月24日 | 中国(2)呼市→西寧
今回は気になる肖君の不思議な装備をざっくりとご紹介。
空気入れとか、衣類とか、基本的なものは共通するので省きます。
ちなみに一般論では、自転車の旅を快適にするためには、荷物は軽ければ軽いほど良いです。


○今日も荷物満載で進みます。


・オリジナルフラッグ
 …まだ2回しか見ていないレアアイテム。キャンプのときに設置。
  自転車の旅で「レアアイテム」なんか持ち運ぶなって。


・国旗
 …普段はたたんでいるが、ノってくると車体後部に掲揚。


・筆、墨
 …オリジナルフラッグに地名を書いた紙を貼り付けるために使用。結構達筆。

・オリジナル写真集
 …お世話になった人に、自分の映った写真(メッセージ入り)を贈呈。
  恥ずかしくないのかな?お互いに…

・給水器
 …バックパックの上に背負ってホースを口元にもってくる。走行中でも給水可。
  しかし休憩の多い彼に必要な装備なのか…?

・テーブル、イス
 …オートキャンパー並みの快適性を追求…するなよ自転車乗り。


・ハンモック
 …昼寝用。たったの15元だからお前も買えよって、走行に関係ないだろ。


・鍋
 …コッヘルじゃない。一般的な鍋。ずっしり重いガラス蓋とセット。
  しかも2段で蒸し器にもなる優れ?もの!

○そして大量の食料の数々…

・救急箱
 …薬はともかく、箱さら持ってくるか…。

・マイク+スピーカー
 …デジカメでムービーを撮るとき、内臓マイクまで音を届けるために拡声します。
  なんか妙に回りくどい使い方…。

・スコップ
 …食器を洗って汚れた水を流す穴を掘るために使用。あとは…使ってる場面を見たことない。


・リコーダー
 …あんまり上手くない。いつも2小節くらい吹いて、口笛に変更。

・それでいて自転車保守関係のパーツ類は全然持ってないのが許せん(笑)


当然、半端なく重いため、疲れる。だから肖は遅い。遅すぎる。
平均速度13km/hあたりをウロついてる。(こちらは20km/h)
少しの坂でも降りて押す(こうなると3km/h!)
併走してると、トロ過ぎて蚊が止まる(屈辱)
かといって、ほっといて自分のペースで飛ばすと、30分も40分も待つハメに。
その間、結局蚊に刺される。マジで何とかならねーのか!とイラついてる自分がいる。
一人なら150キロ走れる日もあるけど、二人だと100キロにすら届かない。
あ~ぁ、一人だったもう1週間以上前に青海湖一周なんて終えてただろう。

でも、はたから見ればどうでもいいような荷物ばかりなので、どうしても
持ってやる気になれない。つーか、減らせ!捨てろ!マジで!!

青海湖への峠・3300mの日月山手前では、完全に弱ってしまった肖君。
20km以上続く断続的な登りに、「もう無理」と音を上げる。
このままでは宿にすらたどりつけないので、仕方なくザックを持ってあげたら、
「イヤッホー!」とか言いながらガンガン走ってった。礼はなし。
…二度と持ってやらん!!


○疲れてたのか、バランスを崩して自転車を道路横の穴に落とす。
 (写真は復旧後。奥の穴に落とした。牛糞まみれ…)
 よく自分も落ちなかったな!
 見ていた中学生(彼らは爆笑)と一緒に復旧する。


(補足)
彼以外の中国人長距離サイクリストは、コンパクトな装備が多い。
ほとんどの人が、リアサイドバック+デイパックにまとめている。
フロントサイドバックつけてる人なんて見ないよ、肖。



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おしらせ

2010年06月24日 | このブログについて
いつもご覧いただき、また安否を気にかけてくださり、
本当にありがとうございます。
6月24日、青海湖一周の旅を終え、西寧市域に戻りました。

当ブログでは、せっかく見に来ていただいたのに、
一週間も更新がない!などというこの度のような
ご無礼を防止するため、(ネット屋がなかっただけですが)
今後「予約投稿機能」を用い、記事の投稿間隔の均一化を図ります。

つきましては、今後厳密には「リアルタイム旅日記」
というより、「少し時差あり旅日記」になってしまいますが、
お許しください。

コメントも全て読んでいます。前進する力になります。
時間の都合で全てにお返事できないときもありますが、
大目に見てください。

尚、最新の居所は、親サイト内「現在地表示」でご覧いただけます。
一日平均80kmずつ、西進しております。


ラーメンのふるさと・蘭州

2010年06月16日 | 中国(2)呼市→西寧
蘭州と言えば…
そう、ラーメンのふるさと!

日本ではほとんど知られていないが、
北京や天津などの都会でも、ラーメン屋の看板には
「正宗蘭州拉面」と書いてあることが多い。
正宗とは…正式な、正統な、という意味。

日本でも、ラーメンを「拉麺」と書くが、この「拉」という文字には、
「引く」と言う意味がある。
文字通り、生地を引っ張って作る麺が拉面というわけ。
(ちなみに、中国のドアには、「押す=推」「引く=拉」と書かれている)

では、その麺を作る過程をご覧あれ。


○拉面職人が生地を引っ張って伸ばします。神業!


○見る見るうちに細く、長くなる…


○できたら隣の鍋に放り込む!この間僅か1分未満。一瞬。


○いろいろな太さの拉面

この蘭州の近くで、日本の中華麺に入っている「かんすい」の役割をする
「硼灰」というものがとれるようで、蘭州の商人が国中を売って回っているんだとか。
それのおかげか?これまで食べてきた面はうどんのような、細くてもそうめんのような
ものだったが、ここのお店の面は、かなりコシがあって驚いた。美味。


○涼面という、冷やしラーメンのようなものが良かった。こってりしつつも、
 くどくはない、日本人好みの味。いろんな種類のスープを複雑にかける。
 衛生的に心配だが、これまでの経験上、流行ってる店なら大丈夫。


日本で言うところの「ラーメン」は、「湯面(タンメン)」という種類に分類される。
そう頼まないと、思ってもみないようなものが出てきてびっくりする…。
(大方メニューに分類されているが、メニューがない店もあることだし…)

そう、拉面といっても、面の形や料理法は実にさまざま。
うどんのようなもの、焼きそばのようなもの、
焼きうどんに、細かく切られたペンネのようなもの…。
ここではスタンダードな「牛肉面」も食べた。
元のスープは意外に薄味だが、辛いので舌は麻痺してしまう。


○ちなみに、蘭州拉面はイスラム教徒の料理のため、豚肉を使わない。
 回族がやってる店が多い。緑の看板に「清真」の文字がトレードマーク。

もうお分かりかと思うが、日本のラーメンは独自の進化を遂げ、ふるさと蘭州のものとは、
味も見た目も完全に別物になってしまった。
一方で、沿岸の都市部でそれは「日式拉面」として、中国っ子にも大人気だそうだ。

以上、拉面発祥の地、蘭州でした。



○市街地のど真ん中を黄河が流れる。無個性な中国の都市にあって印象的。
 写真の中山橋は、「昔黄河に橋を作るのは絶対無理!」といわれていた時代に、
 その常識を打ち破った「黄河第一橋」。1907年の建設で、ちょっとした
 観光地になってます。


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小さな商店で、小さな出会い

2010年06月15日 | 中国(2)呼市→西寧
昼前に肖と差が開きすぎたので時間調整。
立ち寄ったのは山間の小さな商店。

店のお母さんは、突然の珍客と休憩の申し出を快諾してくれた。

12時になると昼休み。息子が帰ってきた。
王永智くんは10歳で小学4年生。
2人兄弟の弟だ。

「日本人が来てるのよ」
「えぇっ!?」
彼から興味津々な眼差しが向けられる。
「Nice to meet you!」

開口一番、英語だった。

中国では小学校3年生から英語の授業が始まるらしい。
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
年齢、好きな食べ物、名前、どこに住んでるの?…
まだ文法を習ってるわけじゃないけど、
こういうのを物怖じせずにぶつけられるのって感心する。
彼の性格がなせる業かな?


○店番もこなす
 知らない大人がタバコを買いに来ても一切動じない。

お母さんは「何もないけど…」と言いながら、
売り物のパンやラーメンをあけてくれる。
自分たちのお昼の餃子やスモモ、バナナも分けてくれる。
お茶も入れてくれる。なのにお金は受け取ってくれない。

永智くんも上機嫌。家族の写真を見せてもらったり、
カメラを触らせてあげたり、簡単な英会話をしたりして遊ぶ。
将来の夢は「明星」…文字通り、スター(有名人)になりたいんだって。
やっぱりどこに行っても、、小学生は小学生だ。


○1時間以上経って肖到着。恒例、旅の説明。
 彼なりのテーマが色々あるらしい。

彼は2時になると「See you!」と言いながら、学校へ戻っていった。

ちなみにこの家は仏教徒。
浄土宗らしい。中国にもたくさんの宗派があるようだ。
仏教系の大学にいたので、そのことを告げると喜んだ。
数珠を見せてくれたり、お守りにお寺のお札のようなものをくれた。


○お母さんは自転車乗りの訪問に喜んで、友達まで呼んできた。
 佛的朋友…という紹介文句が、なんだか仰々しくて笑える。


○永智くんの英語教材。
 アルファベットを加えて単語を完成させる問題、
 選択肢をの中から単語を選んで英文を完成させる問題など。

お母さんの朋友は別れ際、なにやら色々話してくれる。
筆談じゃなきゃ分からないって言ってるのに。
でも、ところどころで、「アイ」「アイ」って言うのが聞こえる。
そして、胸元でハートのマークを作っている。

もしや、と思い、今言ってくれたことを書いてほしいと頼むと、
やっぱり。
「愛」は、中国語の発音でも「アイ」なのだ。

曰く、
「大自然は私たちに多くを与えてくれる。
あなたは愛をもってそれを受け止めるのよ。
そうすれば、絶対寂しくなんかならないわ。」

中国語の先生に後でしっかり翻訳してもらわないといけないけど、
そういうことを言われたのだと思う。
ペンは要らないの、とも言われた。ジェスチャーでそう示された。

肖はいつものように、「しーえーらー!」と言い、(謝謝の慣用表現?)
さっさと行ってしまった。
お母さんが微笑みながら合掌する。私もそれに倣う。
3人は、深々と頭を下げて別れた。


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どんな村でも、誰かのふるさと

2010年06月12日 | 中国(2)呼市→西寧
小さい寧夏はあっという間に抜けてしまい、
次は甘粛省に入ります。
この間は山越えです。景色も劇的に変わります。
(写真ばかりでごめんなさい)



○道は良かったり悪かったり


○岩山が迫る。夕方の放牧。


○この日は宿にありつけず、警察の敷地内に一泊
 標高1500m。朝が寒い。


○回族の女の子
 恥ずかしがって「この服が良くないのよ」


○今日も黄河は黄色の大河


○下痢地獄(写真はありません)
 トイレ行き放題でよかった。
 バックパッカーの人は大変だろう。


○宿屋の夫婦は、深夜も交代で加水の番をする。
 時折、夜通し走るトラックが停まる。



○いくつもの山を越える


○どんなに田舎でも、商店の品揃えは充実。
 安いボールペンを買おうとすると、旦那さんが「これを持っていけ!」と
 自分の胸ポケットから上等なペンをくれた。


○店員さんの目の色が緑だった


○最新式太陽光湯沸かし器
 …じゃなくてテレビのアンテナ。
 中国は衛星デジタル放送に完全移行済み。


○商店で一戦交える(トランプ)
 「え?もう行くの?泊まっていかないのか?


関係者の方へ宛てた旅行企画書の中で、中国の大都市から
名もなき寒村まで見て回る…と書きました。
しかし、それは誤った表現だったと思います。
地図を見せながら「ここはどこ?」と聞くと、そこには載っていなくとも
指をさしながら必ず名前を教えてくれます。

どんな村でも人は暮らしを営み、生まれそして死にゆく。
砂煙に包まれた荒れた道を、バスに揺られて戻ってくる。



○回族の赤ちゃん。今はなにも話さないこの子が、
 「水」という字を「ショエ」と読む日は近い。
 そして唯一神アッラーを信じ、生きてゆく。



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寧夏の村で過ごす一日(2)

2010年06月08日 | 中国(2)呼市→西寧
お客さんが落ちついた昼下がりは、休憩。
お母さんは昼寝。お父さんも表のベッドでゴロゴロしながら客待ち。
李犮くんは電話機でメールを打ってる。


固定電話のようで無線。そう、実は「携帯」なのが面白い。
中国、これだけ広いと回線引くのも大変だもんなぁ。

お父さんのお言葉に甘えて、昼寝させてもらうことにした。
でも通されたこの部屋は李犮くんの部屋だと思う。
壁には中国人アイドルやバンドのポスターが張ってある。
その中に酒井法子がいた。中国で大人気と聞いてはいたが、納得の浸透率。


○夕方、隣の家の子供が遊びに来る
 ちなみに、ジュースもアイスも売ってます


○近所のお姉さんが自転車を借りに来た

上の二人の兄弟はここにはいない。結婚して独立したみたい。
それにしても、銀川とは時間の流れ方が違うなぁ。


○肖が追いついた


○下校中の中学生
 昼も中学生がたくさん通った。こっちではご飯食べに一回家に帰るみたい。
 昼休み2時間!うらやましい…。


○語らう父親たち

決して豊かではないと思う。
でも、貧しくもないと思う。
都市化の波がまだ届かない、平穏な田舎の暮らし。

ささやかな菜園と鶏と、飼ってんだか野良なんだかよくわからない犬と、
いつも一緒の家族。お父さんのきれいで真っ白な帽子が、その象徴に見えた。

夕方宿に戻るとき、お金を払おうとしたが受け取らない。
そればかりか、李犮くんは、昼間見せてくれた竜を彫った貝殻をくれた。
誕生日に友達が彫ってくれた宝物なのに。
もらうわけにはいかないけど、気持ちを断るのも悪い。
会社が持たせてくれた絵葉書と交換、ということにした。

宿でノートを読み返す。
「希望你能快楽毎一天! I hope you happy every day !」
筆談の最後に、こう記されていた。


(補足情報)
回族は、寧夏だけでなく全国に住んでいます。
その数、00年現在で約1000万人。
その内、寧夏は全国最多の約190万人。(出典:寧夏博物館)
自治区全人口は500万人なので約3分の1を占めています。
甘粛、新疆、青海そして河南、河北、雲南の各省も比較的多く住んでいます。
都市部では多くの場合、彼らは固まって住み、居住区を形成します。
イスラム教を信仰する彼らは、戒律を重んじ、タバコも吸わず酒も飲みません。

彼らの営業する清真食堂には、豚肉を使った料理はなく、お酒も置いていません。
そして、壁にはサウジアラビアのイスラム寺院(彼ら談)のポスターが張ってあります。
漢族は皆ひげをそりますが、回族は伸ばしている人も多いようです。
アラブ諸国では、ひげは男の象徴です。
女性は頭にスカーフをつけ、髪を隠します。(義務ではないようです)
しかし、帽子とひげのない若い男の子などは、漢族と全く見分けが付きません。


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寧夏の村で過ごす一日(1)

2010年06月08日 | 中国(2)呼市→西寧
食堂にメニューがない。
こんなことは田舎ではよくあることで、
いつも困ってしまうのだが、何とかなる。

この日は何がある?と聞くと、牛肉!とのことだったので、
紙に「牛肉」それから「炒」と書く。
すると…



このようなものが出てくる。15元。
具はトマトとピーマン、ネギとニンニクそれに麺。
これにマントウ(具なし肉まんのようなもの)が付く。
食べ終わる前にどんどん出てくる。
吃包了(満腹)というまで出てくる。

銀川では肖と別のところに泊まっていたのだが、
出発日を一日勘違いしていたらしく、先に来てしまった。
店の三男に電話してもらって発覚した。

「明日はこの店で待ってなよ」というので、そうすることにした。
「餃子は好きかい?」「もちろん」
「じゃ明日の昼は餃子を作るね!」




翌日。

朝ごはんのマントウと卵スープをすすりながら筆談。
三男の李犮くんは18歳の高校生。
学校はなぜか夕方から。昼間は店の手伝いだ。
大型トラックが停まると仕事がはじまる!
水のホースを持って駆け寄っていく。



国道沿いのこの飯店は、トラックが停まるたびに加水(給水)する。
中国のトラックは、埃が多いからか、常にタイヤに水を掛けながら走っている。
国道沿いには加水・洗車と書いた店をよく見るが、ここもそうだ。
ご飯だけじゃない付加価値。ある種のサービス競争なんだろう。



ご飯を作るのはお母さんの仕事。
加水と洗車をしている間に注文をとって(メニューないけど)
終わる頃に飯ができている。ドライバーはそれを食べてまた旅に戻る。
これの繰り返し。河北省からずっと見てきた国道の風景。
しかし、それを演じる民は漢族、モンゴル族から回族となった。

今日は午前中3台、午後も2時までで2台。そんなに忙しそうには見えない。
音楽をかけながらの作業。のんびりしている。




お昼は約束どおり餃子。
お父さんと李犮くんと3人で食べる。
イスラム教徒の回族は豚肉を食べられないので、牛肉で作ってある。
もちろん、中国では餃子は焼かない。全てゆでて食べる。
タレは店によって色々だ。日本のような酢醤油もあれば、
ここでは唐辛子とラー油のたくさん入った、辛いタレ。


○近所のお母さんも応援に来た。
 左のおじさんはお父さんじゃなくて近所の人。

李犮くんに帽子はないの?と聞くと、結婚するまではない、とのこと。

ちなみに、回族自治区とはいえ、回族は少数民族。
この村も漢族がほとんどだそうだ。
回族の娘は漢族の家に嫁に行くことも多い。
しかし、その場合は改宗することになる。

そして、回族の男の子が漢族の嫁を娶ることは、
両親が賛成しないため難しいそうだ。
そのためか?李犮くんに彼女はいない。けっこうカッコいいんだけど。
将来の夢は飛行員。飛行機の絵を描いたらうなずいてた。パイロットかな?


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