節分・立春が過ぎ、今年は晴れが続いているという事情もあり、太陽光に当たると、春めいた暖かさを感じます。
早春の梅や水仙の花が、此処彼処に咲いていますが、日本人にとって、特に雪国や北国に住んでいる人にとって、桜の開花は、春本番の到来を強く実感させます。
太平洋側と異なり東北・日本海側の地方は、桜の花見の時期にようやく雪も消え、戸外で日光浴を楽しむことができることも、そうしたイメージを抱かせる理由となっています。
また、農耕民族であった日本人にとって、桜が咲く頃から本格的な農作業が始まることや、心の琴線に触れるような花の散り際の潔さの美学も含め、桜は日本人にとって特別な存在であるように思います。
全国各地で大切に扱われている桜の古木について、以前の私のブログで取り上げ、データを分析したことがあります。
興味ある方は、マッキーの随想:全国の桜の古木をデータでチェック! をご覧ください。
ところで、『春爛漫に咲く桜』の他に、桜の一般的なイメージからずれば、季節はずれと形容してもよい季節に咲く桜が存在していることは、承知のことと思います。
今回、冬に咲く「季節はずれの桜」と、また春早々に咲く「早咲きの桜」について取り上げ、近隣に咲いていた桜の画像も載せながら、少し知識をまとめてみたいと思います。
コスモスの咲く頃、木々が紅葉し始める頃、秋桜(コスモス)ではなく、本物の秋に咲く桜があります。
その名は、十月桜(ジュウガツザクラ)と呼び、ピンクの綺麗な桜です。
下の桜の写真は、新宿御苑の十月桜です。
【十月桜(ジュウガツザクラ)】
花は中輪、八重咲きで淡紅色。開花期は4月上旬、10~12月。
10月頃から咲き始め、翌春にも咲く、年2回花を咲かせる珍しい桜です。
「こひがんざくら」の園芸品種で、晩秋から咲き始め、冬のあいだも少しづつ咲き、4月上旬には多く咲きます。花は白色か淡いピンクで、小さな八重咲きです。バラ科サクラ属の落葉小高木
秋から冬にかけて咲いている桜には、八重咲きの十月桜の他に、花弁が5枚の一重咲きの桜も見かけます。
この桜は、冬桜(フユザクラ)と呼ばれる品種で、下の写真は旧芝離宮恩賜庭園の冬桜です。
【冬桜(フユザクラ)】
花は中輪、一重咲きで白色。開花期は4月上旬、11~12月。
春と秋、年2回花を咲かせる桜で、群馬県鬼石町の桜山公園にはこの桜が多数植えられており、「三波川の冬桜」として有名。「オオシマザクラ」と「マメザクラ」との種間交雑種と考えられています。江戸時代の後期から栽培され、「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれています。群馬県鬼石町の桜山公園に1905年に植栽されたものは「三波川の冬桜」として、国の天然記念物に指定されています。10月から翌春まで、白色の花が咲き続けます。
バラ科サクラ属の落葉高木
ただ十月桜も含めて、秋から冬にかけて咲く桜を冬桜と総称する場合もあるそうです。 そのソメイヨシノが咲く前に先駆けて、春早々に咲く桜の品種があります。 近隣の公園に咲くそうした桜について、簡単に紹介しましょう。 まず代表的な早咲きの桜は「寒桜」でしょう。 すでに紹介した「冬桜」とは、違った品種ですので、勘違いしないように。 《冬は名詞、寒は「寒い」ですから形容詞。従って相対的に強い名詞の「冬」を冬咲く桜の名称に付け「冬桜」とし、形容詞の寒を早咲きの桜の名称に付け「寒桜」としたのではないかと思います。 しかし牡丹の名称は、二季咲きで冬咲く変種の名称を「寒牡丹」とし、春牡丹と同じ品種を1~2月に開花するよう調整して咲かせる方を「冬牡丹」と命名しています。ちょっと紛らわしい名称のつけ方のように感じます。》 下の桜は、自宅近くの公園に植えられていて、東京でも3月の上旬から咲き始める「寒咲大島」です。 花の色は白く一重の5弁花で、早咲きであることと白い花びらが特徴で、他の桜と区別することができます。
十月桜と冬桜を対比すると、冬桜のほうが遅れて咲き始めますし、十月桜は八重咲きであり冬桜は一重咲きですので、すぐに区別が可能です。
桜と言えば「 ソメイヨシノ」というほど、この品種は全国に圧倒的に多く植えられています。
寒桜の仲間には「大寒桜(おおかんざくら)」や、伊豆半島に咲く「修善寺桜(しゅぜんじざくら)」・「河津桜(かわづざくら)」などがあります。
寒咲大島
【寒桜(カンザクラ)】
花は小輪、一重咲きで淡紅色。開花期は3月上旬。
暖地では1月中旬から花が咲きだす桜で、熱海桜とも呼ばれます。
下の画像は、やはり近隣の公園に数本植えられている河津桜(かわづざくら)ですが、この桜が咲き始めると本格的な桜の季節到来を実感させます。
昨年、公園の河津桜は、2月25日にはすでにこのように満開の花をつけていました。
【河津桜 (かわづざくら)】
南伊豆の河津地方で1955年頃に発見された品種。
「大島桜」と「寒緋桜(かんひざくら)」との自然交配種。
その河津地方では河津川沿いに多く植えられる。
やはり早咲きの桜である「ひかんざくら(緋寒桜)」は、赤みの強いピンクの花が特徴です。
ご覧の通り、房状に下向きに咲く花は、一見すると桜とは異なる花かと勘違いするほど、他の桜とは区別が可能な個性的な桜です。
【ひかんざくら(緋寒桜)】
中国南部から台湾、琉球列島に分布しています。沖縄では1月から2月、本州中部でも3月には咲きます。鮮やかな緋紅色の一重の花を、下向きに咲かせます。「ひがんざくら(彼岸桜)」との混同を避けて、「かんひざくら(寒緋桜)」と呼ばれることもあります。1月ごろ、沖縄で桜が開花したとされるのは本種です。
桜の花は、艶やかで人の心を弾ませる花であるだけではなく、その対極にある死をも想起させる花です。
願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃
この歌は、西行辞世の歌とも言われていますが、西行の享年は73才で、この歌は60才代中ごろの作と言われていますので、桜とは切っても切れない仲の西行の、死に際についての願望の歌と言ってよいでしょう。
驚くべきは、釈迦の入滅の日(2月15日)、如月(2月)の望月(15日)の翌日、西行はこの歌で予見したとおり、2月16日に亡くなってることです。
散る桜残る桜も散る桜
私の郷里新潟の人、良寛の句ですが、一説には辞世の句ともされている歌です。
やがて来る死は、どんな人にも等しく訪れる運命であるという事を、散り往く桜と艶やかに咲き誇る桜を対比しながら、比喩的に読んだ歌なのでしょう。
実は、私にもある人の死と桜の花が、切り離すことができない関係として、脳裏に焼きついている記憶があります。
青空いっぱいに、桜の花吹雪の美しさとはかなさが風に舞うとき、胸にこみ上げてくるものがあります。
How many roads must a man walk down
Before you call him a man?
Yes, 'n' how many seas must a white dove sail
Before she sleeps in the sand?
Yes, 'n' how many times must the cannon balls fly
Before they're forever banned?
The answer is blowin' in the wind.