今日のテーマは、割合に関する特殊算の三番手「混合算」の5回目最終回です。
混合算を家庭でどう指導したらよいのか、そのポイントをタイプ別に4回伝授しました。
今日はしっかりと条件を整理しないと、式を立てることができない問題を取り扱います。
今回の問題程度を家庭で指導することは、少し難しいのですが、ヒントを与えながらチャレンジしてみてください。
前回までの混合算は、以下のようなタイトルで説明しましたので参考にご覧下さい。
『混合算…1回目・まず始めに知っておくべきこと』……混合算導入指導
『混合算…その2・中学入試問題《慶應義塾中等部》』……最も基本的なタイプ
『混合算…その3・中学入試問題《中央大学附属中学校》』……ちょっと工夫するタイプ
『混合算…その4・中学入試問題《東京女学館中学校》』……面積図を使って解く問題
実際に入試に出題された混合算を解く場合、与えられた条件を分かり易く書き抜いて、問題の構造を理解することが大切です。
今日使う入試問題は、今年の春に出題された灘中学校の問題です。
灘中学校の算数1日目は、比較的小問形式の問題13題で構成されていて、60分のテスト時間です。
2日目は、大問5題構成で、同じく60分のテスト時間です。
今回扱う問題は、2日目の【1】の問題で、小問3題に分かれています。
問題自体は、さほど難しい問題ではありません。
しかし、単に混合算の公式を覚えているだけでは、なかなか解けません。
混合算の公式の基本にある割合の考え方をしっかりと理解していることが、問題を解くヒントとなります。
そうした基本を踏まえ、与えられた条件を書き出し、問題条件を整理することが充分にできたなら、比較的解きやすい問題となっています。
中堅校以上の学校では、今回伝授する問題の類似問題程度は充分に出題される可能性があります。
こうしたレベルの問題を解く力を付けるためには、日常学習するときに、与えられた条件をノートに分かり易くまとめる作業をすることが大切です。
上位校の問題は、すぐに式をたてることができるほど、甘くはありません。
条件を整理し、論理的に問題を解く習慣を付けておきましょう。
教室の窓から眺めると…うろこ雲が秋の到来を感じさせる
巻うろこ雲は積雲のことで、他に鰯(いわし)雲、さば雲などとも呼ばれる
上空高くに浮かび、雲を構成する粒は氷の結晶からできている
【問題1】
A,B,Cの3つの容器に、同じ重さの食塩をそれぞれ入れ、さらに水を加えて食塩水を作りました。ただし、加えた水は同じ重さとは限りません。こうしてできた食塩水について、次のことが分かっています。
①AとBの食塩水全部を混ぜると、Cの食塩水と同じ濃さになる。
②BとCの食塩水全部を混ぜると、Aの食塩水の2倍の濃さになる。
(1)Aの食塩水の重さとBの食塩水の重さの和は、Cの食塩水の重さの□倍です。
(2)Aの食塩水の重さは、Cの食塩水の重さの□倍です。
(3)Bの食塩水にさらに600gの水を加えると、AとCの食塩水全部を混ぜてできる食塩水と同じ濃さになりました。Cの食塩水の重さを求めなさい。
【ヒント】
食塩水の問題は、そこに含まれる食塩の重さを考えていくことが重要です。
食塩水の問題は割合の問題として考えますが、食塩の量がくらべる量で、食塩水全体の量がもとにする量として考えます。
①の条件文に出ている要点を、自分なりに分かり易く図示しましょう。
すると、以下のような問題の構造が分かってきます。
上の図解では、各容器に初めに入っていた食塩の重さを①とし、食塩水全体の重さをそれぞれAg、Bg、Cgと置きます。
すると、AとBを混ぜた食塩水の重さは(A+B)gで、入っている食塩の重さは②、Cの容器にはCgの食塩水に食塩が①入っていることが分かります。
AとBを混ぜた食塩水と、Cの食塩水の濃さが等しくなるためには、それぞれに入っている食塩の重さ②:①=2:1の比と、食塩水全体の重さの比が等しいことが必要であることが分かりますか。…ここがポイント!
よって、食塩水全体の重さの比は、(A+B):C=2:1となります。
このことから、食塩水の重さの文字の式 A+B=C×2……(1)が得られます。
次に、同様に②の条件式から、以下のような条件整理の図を書くことができます。
Aの容器には食塩が①、食塩水がAg入っています。
BとCを混ぜた食塩水には、食塩が②、食塩水が(B+C)g入っています。
AおよびBとCを混ぜた食塩水では、食塩の重さの比が1:2になっています。
するとBとCを混ぜた食塩水が、Aの食塩水の濃さの2倍になるためには、食塩水全体の重さが等しければよい…ここがポイント!
このことから、A=B+C……(2)という式が得られます。
条件を整理して得られた(1)と(2)の文字の式から、食塩水の重さAとBとCの比を出すことができます。
問題(3)は、問題(1)と(2)を求めることにより、出すことができます。
秋近しを感じさせる木の実
【問題1・解答】
(1)
ヒントで得られた文字の式、A+B=C×2……(1)から、答えは簡単に出ます。
AとBの食塩水の重さの和は、Cの食塩水の重さの2倍…答え
(2)
ヒントで得られた二つの文字の式から、AとBとCの食塩水の重さの比を求めます。
A+B=C×2……(1)
A=B+C……(2)
小4や小5で習う、消去算の手法でこの2つの文字の式から比を求める必要があります。
(2)の式を(1)に代入します。
すなわち(1)の式のAの代わりに、同じ大きさのB+Cを代入します。
(B+C)+B=C×2
B×2+C=C×2
Cを右辺に移すと、B×2=C
この式より、B:C=1:2という比を出すことができます。
次に、A=B+C……(2)の式にB=1,C=2を代入すると、A=3という値が得られます。
よって、A:B:C=3:1:2となり、Aの食塩水の重さ3は、Cの食塩水の重さ2の1.5倍……答え
(3)
(3)の問題文から、条件を書き出して図示してみましょう。
AとCを混ぜた食塩水と、Bの食塩水に含まれる食塩の重さの比は、2:1
AとCを混ぜた食塩水と、Bに600gの水を加えた食塩水の重さの比は、
(A+C):(B+600)
ところで、条件ではこの2つの食塩水の濃さが等しくなったということですから、食塩水の重さの比が、食塩の重さの比2:1と一致していればよいことになります。…ここがポイント!
前の問題で出した食塩水の重さの比から、A:B:C=3:1:2ですから、上の式にAに③を、Bに①を、Cに②を代入します。
(③+②):(①+600)=⑤:(①+600)=2:1
上の式より①+600=マル2.5(○の中に数値2.5が入る)
600(g)=マル1.5
よって①=400g
(マルイチ算的な手法)
Cの食塩水の重さは②ですから、400×2=800(g)…答え
ベランダ菜園のオクラ
クーラー室外機のファンの熱風にもめげず元気に育ちました
今回の問題は、与えられた条件を、単に頭の中で処理するのではなく、分かり易く図示して考える必要があります。
また、条件を文字の式で整理することも、特に比を利用する場合大切です。
日頃、ノートに問題条件を素早く分かり易くまとめることを心掛けている生徒は、今回の問題を比較的簡単に解くことができるでしょう。
家庭で子どもを指導する場合、答えを出すことよりも、問題条件をどのように整理するかということに留意して指導することが大切です。
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混合算を家庭でどう指導したらよいのか、そのポイントをタイプ別に4回伝授しました。
今日はしっかりと条件を整理しないと、式を立てることができない問題を取り扱います。
今回の問題程度を家庭で指導することは、少し難しいのですが、ヒントを与えながらチャレンジしてみてください。
前回までの混合算は、以下のようなタイトルで説明しましたので参考にご覧下さい。
『混合算…1回目・まず始めに知っておくべきこと』……混合算導入指導
『混合算…その2・中学入試問題《慶應義塾中等部》』……最も基本的なタイプ
『混合算…その3・中学入試問題《中央大学附属中学校》』……ちょっと工夫するタイプ
『混合算…その4・中学入試問題《東京女学館中学校》』……面積図を使って解く問題
実際に入試に出題された混合算を解く場合、与えられた条件を分かり易く書き抜いて、問題の構造を理解することが大切です。
今日使う入試問題は、今年の春に出題された灘中学校の問題です。
灘中学校の算数1日目は、比較的小問形式の問題13題で構成されていて、60分のテスト時間です。
2日目は、大問5題構成で、同じく60分のテスト時間です。
今回扱う問題は、2日目の【1】の問題で、小問3題に分かれています。
問題自体は、さほど難しい問題ではありません。
しかし、単に混合算の公式を覚えているだけでは、なかなか解けません。
混合算の公式の基本にある割合の考え方をしっかりと理解していることが、問題を解くヒントとなります。
そうした基本を踏まえ、与えられた条件を書き出し、問題条件を整理することが充分にできたなら、比較的解きやすい問題となっています。
中堅校以上の学校では、今回伝授する問題の類似問題程度は充分に出題される可能性があります。
こうしたレベルの問題を解く力を付けるためには、日常学習するときに、与えられた条件をノートに分かり易くまとめる作業をすることが大切です。
上位校の問題は、すぐに式をたてることができるほど、甘くはありません。
条件を整理し、論理的に問題を解く習慣を付けておきましょう。
教室の窓から眺めると…うろこ雲が秋の到来を感じさせる
巻うろこ雲は積雲のことで、他に鰯(いわし)雲、さば雲などとも呼ばれる
上空高くに浮かび、雲を構成する粒は氷の結晶からできている
【問題1】
A,B,Cの3つの容器に、同じ重さの食塩をそれぞれ入れ、さらに水を加えて食塩水を作りました。ただし、加えた水は同じ重さとは限りません。こうしてできた食塩水について、次のことが分かっています。
①AとBの食塩水全部を混ぜると、Cの食塩水と同じ濃さになる。
②BとCの食塩水全部を混ぜると、Aの食塩水の2倍の濃さになる。
(1)Aの食塩水の重さとBの食塩水の重さの和は、Cの食塩水の重さの□倍です。
(2)Aの食塩水の重さは、Cの食塩水の重さの□倍です。
(3)Bの食塩水にさらに600gの水を加えると、AとCの食塩水全部を混ぜてできる食塩水と同じ濃さになりました。Cの食塩水の重さを求めなさい。
【ヒント】
食塩水の問題は、そこに含まれる食塩の重さを考えていくことが重要です。
食塩水の問題は割合の問題として考えますが、食塩の量がくらべる量で、食塩水全体の量がもとにする量として考えます。
①の条件文に出ている要点を、自分なりに分かり易く図示しましょう。
すると、以下のような問題の構造が分かってきます。
上の図解では、各容器に初めに入っていた食塩の重さを①とし、食塩水全体の重さをそれぞれAg、Bg、Cgと置きます。
すると、AとBを混ぜた食塩水の重さは(A+B)gで、入っている食塩の重さは②、Cの容器にはCgの食塩水に食塩が①入っていることが分かります。
AとBを混ぜた食塩水と、Cの食塩水の濃さが等しくなるためには、それぞれに入っている食塩の重さ②:①=2:1の比と、食塩水全体の重さの比が等しいことが必要であることが分かりますか。…ここがポイント!
よって、食塩水全体の重さの比は、(A+B):C=2:1となります。
このことから、食塩水の重さの文字の式 A+B=C×2……(1)が得られます。
次に、同様に②の条件式から、以下のような条件整理の図を書くことができます。
Aの容器には食塩が①、食塩水がAg入っています。
BとCを混ぜた食塩水には、食塩が②、食塩水が(B+C)g入っています。
AおよびBとCを混ぜた食塩水では、食塩の重さの比が1:2になっています。
するとBとCを混ぜた食塩水が、Aの食塩水の濃さの2倍になるためには、食塩水全体の重さが等しければよい…ここがポイント!
このことから、A=B+C……(2)という式が得られます。
条件を整理して得られた(1)と(2)の文字の式から、食塩水の重さAとBとCの比を出すことができます。
問題(3)は、問題(1)と(2)を求めることにより、出すことができます。
秋近しを感じさせる木の実
【問題1・解答】
(1)
ヒントで得られた文字の式、A+B=C×2……(1)から、答えは簡単に出ます。
AとBの食塩水の重さの和は、Cの食塩水の重さの2倍…答え
(2)
ヒントで得られた二つの文字の式から、AとBとCの食塩水の重さの比を求めます。
A+B=C×2……(1)
A=B+C……(2)
小4や小5で習う、消去算の手法でこの2つの文字の式から比を求める必要があります。
(2)の式を(1)に代入します。
すなわち(1)の式のAの代わりに、同じ大きさのB+Cを代入します。
(B+C)+B=C×2
B×2+C=C×2
Cを右辺に移すと、B×2=C
この式より、B:C=1:2という比を出すことができます。
次に、A=B+C……(2)の式にB=1,C=2を代入すると、A=3という値が得られます。
よって、A:B:C=3:1:2となり、Aの食塩水の重さ3は、Cの食塩水の重さ2の1.5倍……答え
(3)
(3)の問題文から、条件を書き出して図示してみましょう。
AとCを混ぜた食塩水と、Bの食塩水に含まれる食塩の重さの比は、2:1
AとCを混ぜた食塩水と、Bに600gの水を加えた食塩水の重さの比は、
(A+C):(B+600)
ところで、条件ではこの2つの食塩水の濃さが等しくなったということですから、食塩水の重さの比が、食塩の重さの比2:1と一致していればよいことになります。…ここがポイント!
前の問題で出した食塩水の重さの比から、A:B:C=3:1:2ですから、上の式にAに③を、Bに①を、Cに②を代入します。
(③+②):(①+600)=⑤:(①+600)=2:1
上の式より①+600=マル2.5(○の中に数値2.5が入る)
600(g)=マル1.5
よって①=400g
(マルイチ算的な手法)
Cの食塩水の重さは②ですから、400×2=800(g)…答え
ベランダ菜園のオクラ
クーラー室外機のファンの熱風にもめげず元気に育ちました
今回の問題は、与えられた条件を、単に頭の中で処理するのではなく、分かり易く図示して考える必要があります。
また、条件を文字の式で整理することも、特に比を利用する場合大切です。
日頃、ノートに問題条件を素早く分かり易くまとめることを心掛けている生徒は、今回の問題を比較的簡単に解くことができるでしょう。
家庭で子どもを指導する場合、答えを出すことよりも、問題条件をどのように整理するかということに留意して指導することが大切です。
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