重松清の「流星ワゴン」
ショッピングモールの本屋さんをぶらぶらしていた。
すると、書棚の横で、小学4年生くらいの男の子を睨み付けている男がいる。
よく見ると父親らしいが、ただ睨み付けているだけである。
子供は恐縮しながらも、気を付けの姿勢で立っている。
怒らない父親が多い時代に、
なんとも珍しい光景だなと、思いつつ
素通りをする。
ふと、重松清の「流星ワゴン」を思い出した。
(本屋の平積みの文庫本として出ていたこともあるが・・・。)
父と息子の話。
文庫本裏表紙のコメントも、気に入った。
“時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。
やり直しは、叶えられるのか――?
「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。”
(裏表紙より)
「ビタミンF」で124回直木賞(2000年下半期)にも選ばれている重松清の会心作。
あらすじ
“主人公のサラリーマン・永田一雄(38歳)。
妻・美代子はテレクラで浮気、
息子・広樹(12歳)は家庭内暴力・ ひきこもり。
父親・忠雄は末期がんで入院中。そして自分は突然のリストラ。
死んだはずの橋本さんが運転する不思議なワゴン車に乗って
過去と現在を行き来するタイムスリップファンタジー。”
「流星ワゴン」は、単行本で読んだが、
宮部みゆきの、江戸もの「あかんべぇ」のテイストを強く感じた。
深川で開業したばかりの料亭「ふね屋」には
何人ものお化け(亡者)がついていて、
「ふね屋」の一人娘おりんが
大病をしたことから、亡者が、見えるようになる。
「流星ワゴン」では、主人公の一雄が、
「死んじゃってもいいかなあ、もう……。」
と思って、駅の公園のベンチにへたり込んだ時に、
いきなり、交通事故で死んでしまった父子(幽霊)
の乗る不思議なワゴン車に拾われる。
主人公が、(亡者)幽霊とかかわりを持ち、
そのファンタジーの世界で、本当の幸せに目覚めていく。
石田 衣良(本名 石平!)も書いていたが、
(たしか「池袋ウエストゲートパーク」の中の、ワンエピソード。)
“都市伝説”のワゴン車の話は、
たくさん伝説として、でて来る。
「流星ワゴン」は、
(重松清が生み出した)
新たなる、そして、感動的な“都市伝説”の
ひとつとなった。
ショッピングモールで、息子を睨み付けている親父ではないが、
親父は、居るだけでも、男の子にはプレッシャーになる。
父は、息子に、何を教えようとしていたのだろう。
息子は、人前で自分を睨み付ける父親を、
どう思っているのだろう。
そして、「流星ワゴン」は、
チュウさんのような
理想の父親像を求める旅でもある。
さて、この小説の鍵を握る「チュウさん」とはなにものか?
PS
ジェンダー論でいくと、「原始 女性は太陽であった。」ではないが、
人間社会はそもそもが、女系社会だった。
男は必要に応じて、女社会に居候をし、
必要がなくなると、去っていく。
しかし、男の子を女手だけで育てていくと、不都合が出てきた。
男子の子育ては女だけでは、手に余る。
そこで、男が女社会に定住し、男の子のしつけにあたることとなる。
PS 追加
劇場版「流星ワゴン」
劇団銅鑼公演
脚色:青木豪(グリング) 演出:磯村純(青年座)
来年、映画公開にあわせ、追加公演を予定とのこと。
映画版「流星ワゴン」松竹配給 2007年公開予定。
監督、脚本 朝原雄三
(「釣りバカ日誌16/浜崎は今日もダメだった♪」の監督)
松竹の公式HPには、まだ、予定作のタイトルリストに載っていないが、
製作、公開は大丈夫だろうか・・・。
重松作品は好きで色々読んでいますが、その中でも心に残る作品でした。『疾走』ほどの衝撃はなかったですが、この原作も映画化されどのような色がつくのか、今から楽しみでなりません^^
重松清作品は、自称、蔵書家としては、
ほとんど持っているのですが、
積ん読が、ずいぶんと
あります。
「疾走」は、早めに読んでみます。
「その日のまえに」病院に入院中の友人が読んでいたので、ちょっと、あせりましたね。
できたら、この本は、元気に退院してから、
読んで欲しい。