よしーの世界

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危機の構造   小室直樹

2023-03-16 06:27:57 | 
40年以上前に書かれた本が2022年に復刊し、沢山の人に読まれている。著者は現代日本の危機

的状況を予言し、問題点を明確化している。日本人は論理的な議論が苦手で、親しい関係でも仕事上

でも話し合いが進まず、正論より声の大きい方に引きずられる傾向にある。呑み会のようにリラック

スした場では、なおさら真面目な話など敬遠されがちだ。子供の頃から先生の話を黙って聞き、ノー

トに書き写す、生徒同士で自由に討論する機会など殆どない。


本書で著者は「現在にあっても過去にあっても、日本人は依然として社会状況を科学的に分析し、こ

れを有効に制御する能力に欠けている」と言う。これは第二次世界大戦時の日本軍の非科学的精神論

の塊という実態から、綿々と続く日本の大局を見ることのない官僚的資質に繋がっている。


さらに「官僚的思考の致命的限界は、イマジネーションの不足と視座の限定からくる、新環境の総合

的把握能力の欠如である」とする「彼らもルーティン化した現象に対処する場合なら、結構、総合的

判断もできるし、全体の見通しも悪くない。しかし、全く新しい現象が自己の守備範囲外に生起した

場合には、完全にお手上げとなって、リーダーとしての無責任性を暴露する」という。


「このような、官僚的思考、行動様式が、日本社会のタコツボ的状況で働くとき、無責任体制が支配

し、破局に向かって驀進するメカニズムを生む」という言葉には大きく頷いてしまった。


常に空気を読むことを強要される生活を送っていると、オカシイと思うことも胸の下に隠し、批判な

ど許される雰囲気などない。しかし、これこそが停滞する日本社会を形作ってきた。個人の幸福は二

の次で上級国民と呼ばれる一部の人の為に犠牲になる。私たちは政府が無駄をなくす努力をすれば、

増税なしで、もっと楽な生活が出来るのだ。今、変わらなければ日本はずっと変わらない。正しいと

思うことを主張する、おかしいと思えば批判もする、私たちは情報を精査し、自ら思考して、身近な

人と話し合うことから始めていきたい。


   危機の構造 日本社会崩壊のモデル    小室直樹    ダイヤモンド社
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