音楽と情報から見えてくるもの

ある音楽家がいま考えていること。アナリーゼ(音楽分析)から見えるもの。そして情報科学視点からの考察。

ジャズ・ピアノ 上原ひろみと和のテースト

2017-04-26 21:22:19 | 音楽
 ジャズ・ピアノスト上原ひろみ(以下「ひろみ」と記)は絶好調である。尽きることがない音の流れが次々にわき出すようだ。The Trio Project の最新アルバム "SPARK" ではドラムの Simon Phillips が多数のドラムとシンバルでピアノに応えて盛り上げてゆく。そして Anthony Jackson がエレキベースでこの二人を支え、ダイナミックでスケールの大きな音楽を作り上げている。
 ところで、Simon は通常のドラムセットの倍以上の多種多様なドラムとシンバルを使いこなす。それは音楽的にも見た目にも躍動感を生み出している。一方、静かな部分では多様な音色と音質を見事に使い分け、聴く者の心をとらえる。ひろみのダイナミックなピアノと好対照をなしている。

 言うまでもないことだがジャズの命は即興性にある。そこに演奏者の個性が出る。ひろみの演奏は、時に激しく鍵盤をたたきつけるような激しい奏法と超絶技巧に特徴があるのだが、もう一つ大事な事は「和のテースト」ではないか。あえてテーストと呼ぶのは、和がいつも表に出ているわけではないからである。上記のアルバムに収録されている "All's Well" のメロディーは 【ララララソラ|ドラソミレド|レレレレドレ|ミドララソ】 はいわゆる「ヨナ抜き」の日本音階である。(同曲のソロ版参照)リズムも演歌でよくつかわれる 6/8 ♪♪♪♪♪♪|♪♪♪♪♪♪|(以下省略)であり、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」と同じ音階、リズムである。演歌はテンポがゆっくりだが。
また、2006年のアルバム "Spiral" にある "Love and Laughter" の愛らしいメロディ 【♪♪ソラドレ|ミ♪レドレミ|ド♪…】もヨナ抜きである。(ライブ参照)ただし、このメロディはジャズ・コードの衣装をまといサラッと登場するので、日本人でも日本音階だと気付かないかもしれない。この他にも、ひろみの演奏には時々和太鼓の特徴的なリズムが現れる。
彼女の和のテーストを意識するとしないとにかかわらず日本語を母国語とする人(リスナー)ならそのメロディーとリズムに親近感を持つはずであり、我々は同じ日本人である恩恵に浴している。おそらく外国人はこの部分に対して我々日本人とは異なり、エキゾチズムを感じているだろう。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音楽雑記帳:音律ー➀ 何故人... | トップ | 上原ひろみザ・トリオ・プロ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

音楽」カテゴリの最新記事