音のする景色。
むかし誰かが遊んでいた公園に、夕焼けの待ち遠しい太陽に追いかけられた子供が走ってくる。ギコギコ大きく揺れて、ふわりと手を離した子供は、逃げ切った安心感からか、父との約束を思い出した。
「今日は父さん、早いからな」、ポケットの中の小銭をチャリンと鳴らし、父が好きな場所に足を向かせた。
天上を付くことの出来ない空、空に纏わろうとする糸のような雲、その下の緑に父は寝そべっている。
「おーい」
「こっちだー」
そばに、へたる様に滑り込んで、父の右手のビニールを覗き込む。
「これ、そっち」
「サンキュ」
ちょっと考えて、父はビールで喉の奥に流した。「お前ももうちょっと、女の子らしくなぁ」
父の頬が若い夕日色になった頃、「父さん、私の好きな場所に行こう」と娘は手を差し出した。
二人は、歩き出した。
いつ歩いても、懐かしい。路地の裏、生活と空気の音。
手をつないで、空き缶とガチャガチャの景品を交換しに。
むかし誰かが遊んでいた公園に、夕焼けの待ち遠しい太陽に追いかけられた子供が走ってくる。ギコギコ大きく揺れて、ふわりと手を離した子供は、逃げ切った安心感からか、父との約束を思い出した。
「今日は父さん、早いからな」、ポケットの中の小銭をチャリンと鳴らし、父が好きな場所に足を向かせた。
天上を付くことの出来ない空、空に纏わろうとする糸のような雲、その下の緑に父は寝そべっている。
「おーい」
「こっちだー」
そばに、へたる様に滑り込んで、父の右手のビニールを覗き込む。
「これ、そっち」
「サンキュ」
ちょっと考えて、父はビールで喉の奥に流した。「お前ももうちょっと、女の子らしくなぁ」
父の頬が若い夕日色になった頃、「父さん、私の好きな場所に行こう」と娘は手を差し出した。
二人は、歩き出した。
いつ歩いても、懐かしい。路地の裏、生活と空気の音。
手をつないで、空き缶とガチャガチャの景品を交換しに。