ひからびろ 3.0

密かに輝くラクダとビロード、ロバ。お願いだから、ひからびてほしい。

トランストロンメルのこと。

2011-10-07 | 常々

2011年のノーベル文学賞は
スウェーデンの詩人
トランストロンメルが受賞されましたね。

ただ、あまりにも情報が少なくて、
ぼくの周りでも、

ポカーン

って感じの人が多かったんで、
ちょっと調べてみたことを書いときたいと思います。

まず出生についてですが、
1931年4月にストックホルムに生まれた。
ちなみに日本だと、
団鬼六とすぎやまこういちが、
同じ1931年4月の生まれですねw
大江健三郎は1935年生まれなので、
4歳ばかり年下ですね。
だいたい同世代といったところでしょうか。

父親はジャーナリスト、母親は学校の先生でしたが、
幼い頃に両親は離婚して、
いわゆる母子家庭の中で育ったようです。
ストックホルムですくすくと育ち、
1954年、つまり23歳の時に、
『17の詩 17 dikter』という詩集を出版してます。

さらにストックホルム大学に進学し、
1956年、25歳で心理学の学位を取得します。
ちなみにこの時ついでに、
歴史と宗教、文学を勉強してたんだとか。
やっぱり、ここら辺の教養が、
後の創作に生きてくるんですかね。
この2年後1958年に、
『道中の秘密 Hemligheter på vägen
という本を出版してるようです。

ただ、1960年から1966年、
つまり29歳から35歳までのあいだは、
少年鑑別所で心理学者として仕事しながら、
詩も書くという生活をしていたようです。
この仕事の最後の年、1966年に、
『響きと歌 Klangar och spår』を出版してます。

その後、職場を、
スウェーデン国立労働裁判所に移して、
同じく心理学者として、
1980年に退職するまで働いてたようです。
え、けど、
49歳で退職ってちょっと若くない・・・?
まあ、スウェーデンならあり得るのかな。。。

しかし1990年、59歳の時に不幸が訪れます。
発作に見まわれ、左半身に麻痺が残った上に、
しゃべるのも困難になってしまった。
ところが彼は2000年に入っても詩作と出版をやめず、
精力的に活動を続けているということです。

さて彼の作品について。
なにせ日本語に翻訳されたものが少ないので、
ぼくもほとんど読んだことがないんですが、
基本的には20世紀モダニズムとか、
表現主義/シュルレアリスムの言語を、
さらに発展させたものらしいです。
英語のウィキによると、

「彼のはっきりとした、一見シンプルな日常生活や自然風景に見える絵画は
人間精神の普遍的な側面に対して働く神秘的な力を明らかにしている」

とのことでした。
どうやら「神秘的 mystic」というのがキーワードみたいですね。
確か、同じスウェーデンのノーベル文学者、
ラーゲルクヴィストも神秘的な作風だった気がします。
一体に北欧という国は、
そういう精神的なものが感じやすいのかしら?

あ、ちなみにトランストロンメルの詩は、
いろんな国の言葉に翻訳されて出版されてるんですが、
アラブ世界に彼の名を広めたのは、
なんとシリアの詩人アドニスだそうです。
彼もまた今回のノーベル文学賞の有力候補でしたから、
個人的にこれはちょっとときめく事実でした。

ちなみにちなみに、
トランストロンメルは詩人でありながら、
ピアノも達者だそうで、
クラシックもジャズもイケるクチだそうです。
発作の後も、片手で弾いてるとのこと。

では、最後に
トランストロンメルの詩の断片を訳して、
終わりとしましょうか。
ノーベル文学賞、受賞おめでとうございました!



*****

これら目の前以外のどこにもいない連中。

これら気の晴れることのない連中。

これら間違った扉など開けて確かめてもないのにちらりと見やる連中。

やり過ごしてしまえ!

トーマスはうなづく。

今日、詩的な抵抗は可能だろうか?


Swedish Poet Wins Nobel Prize for Literature



写真は、NYタイムズの記事からの転載です。

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