西暦2183年。
今まで人間が懸命に努力し守り抜いてきた海岸も、
とうとうここが残り最後の砂浜となってしまった。
もう今さらそれを、誰も非難すらしない。
わずかに残された人間は、
全てが成り行きだと信じるしかできなかった。
そして僕は、この砂浜と同様、
世界に残された最後のウミガメらしい。
ちょうど今ふ化したのだが、
周りには兄弟も両親も親戚も友人も誰もいない。
もうここにしか砂浜がないのなら、
やはり僕は、世界でたったひとりのウミガメなんだろう。
しょうがないことだ。
誰もいない世界で、
これから僕はどこに向えばいいのか。
他に仲間がいないなら、情報を集めることはおろか、
受精し、種を繁殖、生存させることもできない。
こんなことになるなら、
母親は、僕を産むときに涙を流しただろうか。
人間は、減少する浜辺で涙を流しただろうか。
絶滅していく僕を、誰が覚えていてくれるだろうか。
僕は少しでも、僕を地球に刻み込むため、
これからひとりで最後の砂浜から海へと潜っていく。
不思議だが、何故だかそうせずにはいられないんだ。
世のなかには、2種類の机がある。
それは、
マイクがのっている机と、マイクがのっていない机だ。
マイクがのっている机には、大抵その近くに
文字と数字がこと細やかに記されている書物や、
映像装置を自由に操れる機械などが置いてある。
マイクがのっていない机には、そのようなものは無い。
机とは、だいたいそういうものだ。
なにしろ此処はカラオケなのであるから…。