viento y sol

過ぎ去りし日々の物語を、そして尾張の国から吹く”風”を・・

Feliz Navidad

2007年12月24日 | mono'logo



尾張の里にもクリスマスイブはやって来る。
 オイラ老不良の身のまわりにも赤と緑のリボンだの
 サンタクロースの人形が突然現れたるする。

 オイラ老不良とクリスマスの飾りほど似合わないものはない。
 だからと言って知らんふりをしたり、いやな顔をしたりすると
 年末から正月にかけての待遇が悪くなりそうな気がするので
 作り笑いなどして時の過ぎるのを待つしかない。

こうなったら、クリスマスとやらに便乗してチョット値の張る赤ワインと
思ったが厳しい予算統制にあって断念せざるを得なかった。

オイラ老不良には、年末ジャンボ宝くじが当たりますようにと
八百万の神々に、御神酒片手にお祈りするのがお似合いのようだ。






北陸本線・・エピローグ

2007年12月21日 | corazo'n
    

  夜明けの金沢は曇り空の寒い朝だった。
  駅まで送ると言う二人に、かぶら寿しを買いに立ち寄る店があることを
  口実に別れることにした。

  別れ際に二人が、年が明けるとすぐに九州に転任すると告げた。
  
      泣いてくれるな別れの時に
        沖でろかい(艪櫂)の手が渋る

  音戸の舟唄の一節が浮かんで消えた。
  幼な子を遺して世を去った男は、山陰の小さな町で眠っている。

北陸本線・・加賀料理

2007年12月20日 | corazo'n
    
    

  待ち合わせの加賀料理の店に、三十路半ばの女性は夫と二人でやって来た。
  目元が世を去った男に、どこか似ている人だった。
  古いアルバムから抜き取って持って来たヨチヨチ歩きの女の子の写真を数枚、
  その人に手渡した。

  その人は、写真を大切にしていてくれたと礼を言って涙声になってしまった。
  
  夫の職業は気象予報官だと紹介してくれた。
  知人に一人の老気象予報官がいると話してその人の名前を告げた。
  夫は驚いた顔をして、一時期その老気象予報官の部下であったと言った。
  三十路半ばの女性が、やはり知らぬところで繋がっていたのだと言って
  また半泣きの顔になってしまった。

  世間は狭いと感じた。偶然とは言え予測し難いことが起こり得るものだと
  思った。

  共通項に老気象予報官が存在していたとは、すれっからしの現実主義者と
  自認していても、この時ばかりは何故か神妙な気分になって、
  黙して地酒を飲み干した。

  この夜の治部煮の味は辛口だったような気がする。
  

  
  
  

  

北陸本線・・分岐点

2007年12月18日 | corazo'n
  
     

   東海道本線下り特急列車は分岐点の米原から北陸本線に入り、
   敦賀から金沢へと北上を始めた。
   米原を過ぎると急に寒々とした風景が広がって、遠くの山は
   雪で白く輝いて見えた。

   敦賀を過ぎてしばらくすると雪が降り出して車窓のガラスが
   冷たくなってきたように思えた。
   金沢はみぞれ混じりの雨の予報。

   列車が金沢に着く夕刻には日も暮れて風も冷たそうだし
   マフラーを持ってくれば良かったと悔やんでもみた。

   今夜の待ち合わせ場所は、何度か行ったことのある、
   兼六園近くの加賀懐石の店にしておいた。
   久々の加賀料理と北陸の地酒で雪見酒になるなぁと思ったりしたが、
   切ない旅の途中でこんなことを思うのは少々不謹慎な気がして止めた。
   はたして、どんな加賀懐石の夜になることやら・・・

北陸本線・・プロローグ

2007年12月17日 | corazo'n
    

  三十数年前にヨチヨチ歩きの女の子を遺して世を去った男がいた。
  年の瀬も近いというのに、その女の子に会うために金沢に向かうことにした。
  
  男が世を去ってからしばらくして、母親が女の子を連れて再婚したと、
  風の便りで聞いた。
  爾来、三十年余の間、女の子の消息を聞かなかったし会ったこともなかった。
  ヨチヨチ歩きだった女の子も今では三十路半ば、どんな人になっているのか、
  切なくも、ミステリアスな旅の始まりだ。