200年後の世界を救えるか?石田 衣良初の長編SFファンタジー。
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<あらすじ>
瀬野周司は末期の脳腫瘍に侵され、
自宅である新宿の超高層マンションで自宅療養している。
ある日、脳腫瘍から来る強烈な頭痛で気を失った周司は
別の世界で覚醒したことに気がつく。
そこは、200年後の東京。
「黄魔(こうま)」と呼ばれる
インフルエンザウイルスを遺伝子操作した生物兵器の拡大により
地上での暮らしが困難になり、
人々は高さ2kmの塔の中で生活をしている。
その塔では、厳然たる格差社会が築かれていた。
未来の彼は階級の頂点に近い三十人委員会の委員の一人。
そんな中、格差社会を打破するため、最下層の人々によるテロが勃発する。
果たして周司は暴力と病理に蝕まれた世界を救うことができるのか?
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石田衣良作品にしては珍しい、400ページ強もある長編小説です。
「時間を駆ける」という
SFではよくあるテーマを軸に物語が更正されています。
ただし、行き来できるのは主人公の精神のみです。
ほぼ治療は無理と診断された病と
妻との冷え切った関係という
何とも救われない状況の中、
主人公が200年後の世界を救うことに
自らの存在価値を見出していきます。
ただ、その試みはほとんど上手く行きません。
塔上層部による独裁的な政治によって
主人公とその仲間はどんどん追い詰められていきます。
しかし、現代と未来を何度も行き来するうちに、
様々な人たちからヒントをもらい、
ある解決策にたどり着く主人公。
最後の時間の跳躍の展開は見ものです。
とことん残酷な描写もありますが、
ラストはしっかりハッピーエンドです。
途中で救いがない展開にちょっとくじけそうになりますが
テンポのよい文章なので長い割にはスラスラ読めると思います。
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インフルエンザより怖いのはやっぱり人間だろう度:★★★