・・・略・・・
PCBに対する考え方は ある偶然の発見をきっかけに劇的に変化した。
1960年代 レイチェル・カーソンの警告に動かされて
環境中のDDT値を測定していた科学者たちは 通常の殺虫剤とは違う
正体不明の化学物質が蓄積していることに気づいた。
謎の物質はなかなか特定できなかったが
1966年 ストックホルム大学の分析化学者ソーレン・ヤンセンが
魚の体内からPCBを検出した。
ヤンセンはスウェーデン各地で採取した 200匹以上のカワカマスを調べた。
そのすべてからかなりの量のPCBが検出された。
この結果に不安を感じたヤンセンはさらに研究を続けたが
分析した生物のほとんどすべてからPCBが検出された。
それは魚の卵にも含まれていた。
ストックホルムの小島で保護されたワシの体からも見つかった。
スウェーデン国立自然史博物館に保存されている鷲の羽のうち
1944年以降のものすべてに含まれていた。針葉樹の葉にもあった。
さらにヤンセンは自分の髪にまでPCBが含まれているのを発見した。
妻の髪にも そして なんと生後5ヶ月になったばかりの娘の髪からも検出された!
赤ん坊の娘は 母親の母乳から汚染されたのだろうと思われた。
1966年 彼はこれらの発見について『ニューサイエンティスト』に
「新たな化学物質の危険性に関する報告」と題した論文を発表した。
彼はこの物質がロンドンやハンブルグの空気中や
スコットランド沖のアザラシの体内からも検出されたことを述べた。
「したがってPCBは世界中に広がっているものと考えられる」とヤンセンは結論付けた。
そして 「皮膚から直接吸収され 呼吸を通して また食物
とくに魚から体内に吸収される」とした。
ヤンセンの研究は間もなく 他の科学者たちによって確認された。
1967年 サンディエゴ自然史博物館のモンテ・カーベンは
ハヤブサの生息数減少の原因を調べていた。
放置された卵から高濃度のDDEとともに 謎の化学物質が検出された。
ヤンセンの論文を読んだカーベンは 謎の化学物質を再分析した。
その結果 それは ポリ塩化ビフェニルと判明した。
まもなくPCBの汚染はDDTと同じく先進工業諸国ばかりでなく
北極や南極の僻地にまで及んでいることが明らかになった。
場合によっては非常に高濃度で 北アメリカのハヤブサの体脂肪では1980ppm
スウェーデンのオジロワシでは なんと 17,000ppmにも上った。
だがDDTのように意図的に大量散布されたのでもないのに
PCBが環境中に これ程広範囲に存在するのはなぜだろう。
PCBは密閉されたドラム缶で工場から出荷され
ほとんどは閉鎖されたシステムの中で使用された。
ところがPCBを封入した製品が劣化するにつれ
PCBがゆっくりと気化して環境中に排出されることが次第に明らかになった。
用済みになって捨てられたPCB入りの製品が焼却されることによっても
大気中に放出されると考えられる。
さらにはPCBは 工業廃棄物の中にも含まれているので
それが環境中に放出されているののかもしれない。
意図的にばらまいたわけではないにせよ
私たちは PCBを世界中に拡散させてしまったのだ。
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