相撲協会の次期理事長は誰か
北の湖前理事長の懐刀Kが理事長の選出暗躍のうわさ
日本相撲協会の次期理事長は、3月場所千秋楽翌日の3月28日に新理事会で互選されるが、故北の湖前理事長の任期を引き継いだ現職の八角理事長(元横綱北勝海)と、若手の貴乃花親方(元横綱)の一騎打ちと、スポーツ新聞や週刊誌などが賑やかに報じている。これらの報道で私が最も注目したのは1月26日~30日の日刊ゲンダイの記事である。
相撲協会が仕事初めを迎えた1月5日、八角理事長は全職員を前に強い口調で次のように言った。(以下太字は八角理事長の発言)
「2014年度の(相撲協会)の収支決算は赤字に転落にした。協会を破産させるような勢力とは断固、戦うつもりだ。」
新理事に当選した春日野親方(元関脇栃乃和歌)も「赤字からの脱却」を課題としている。
たしかに八角理事長、春日野理事の言う通り相撲協会の2013年の経常利益は1億5300万円の黒字であったが、2014年は全6場所の満員御礼が58日で入場券売り上げは前年度より7億円増加したのに7400万円の赤字になった。相撲協会の公式HPによると2015年は11月場所の4日間を除き86日が満員御礼であったにもかかわらず、13億3750万円の赤字である。
八角理事長は「この赤字の原因を単なるカネの無駄遣いにかぎらず、不透明なカネ遣いにあるのではないか」と言っている。
八角理事長が言う「協会を破産させる勢力」とは北の湖前理事長の右腕として権力を振ったK顧問を指していることは間違いない。K顧問とは何者か?彼が初めてジャーナリズムに登場したのは2007年9月15日の週刊現代であろう。
この週刊誌に彼は北の湖理事長の「右腕」として登場する。巡業を仮病で休み、サッカーに興じ相撲協会により2場所出場停止の処分を受けた横綱朝青龍が北の湖理事長の「思いやり」により治療を理由にモンゴルに帰国するとき、墨田区のマンションから空港に行く車に同乗した人物がいた。彼の名は小林慶彦(52歳)。「AT&C JAPAN」社長の彼は北の湖と極めて近しい間柄で、頻繁に理事長室に出入りをしている。(小林慶彦が本名であるのは事実であるが、マスメデイアではK顧問と通称しているのでこれを使うことにする。)
次にK顧問が登場するのは「相撲協会に跳梁跋扈『北の湖の懐刀』の正体」と題する2013年7月28日のサンデー毎日である。この記事を要約して引用する。
「相撲協会の危機管理委員会には『北の湖の懐刀』と呼ばれる人物がいる。2012年8月に顧問に就いた経営コンサルテイング会社社長(58)である。立命館大卒業後、実父が経営する台湾にある生地会社の代表に就任、その関係で台湾巡業(06年)を手がけ、モンゴル巡業(08年)では巡業を仕切った。顧問就任後は国技館内の応接室を専用居室としている。今や顧問として協会に浸透して『北の湖の金庫番』と称されるほどの存在になった。」
21歳2ヶ月の史上最年少の横綱昇進記録を持つ北の湖理事長は、2期10年にわたって(9代2002年2月~08年9月、12代12年2月~15年11月)理事長の地位にあったが「名力士、必ずしも名伯楽ならず」とのいわれのあるように、理事長としての北の湖の評価は高いとはいえなかった。きわめて保守的な北の湖理事長は、機略にすぐれたK顧問の「元NHKアナウンサー杉山邦博氏の取材評を没収すべし」との意見を実施するなど、K顧問のアドバスを重用した。
K氏が「協会の50代の男性顧問」または「協会員であるX」と匿名で登場したのは,相撲協会とパチンコ業者による力士の肖像権に関わる契約をめぐってのK氏の汚職問題である。2014年7月21日の朝日新聞は「相撲協会、顧問の動画流出巡り『現金は返却と結論』」という見出しで次の通り述べている。
「顧問が仲介者から現金(裏金)を受け取る動画がインターネット上に流出した。動画では顧問が『絶対にこれ、(北の湖理事長に)バレんようにしてくれよ』と相手に言っている。裏金問題を調査に当たっていた協会の宗像紀夫外部理事(危機管理対策担当)の『顧問が現金1700万円は返却したので問題なし』との見解で、K顧問は無罪放免になった。パチンコ業者との契約は肖像権などに関するもので、総額1億円。理事会の承認は経ず、理事長の決済で2014年夏に結ばれたという。」
この記事で、私が納得できなかったのは宗像外部理事の「顧問無罪」の判断である。すぐその場で返却すれば問題がないが、後に返したからといつて横領の行為自体は消えないからである。
相撲協会に外部役員が招かれるようになったのは、2007年に起きた時津風部屋の新弟子暴行死事件以来、不祥事続きの相撲協会に批判が高まったためであった。最初に外部役員に就任したのは、理事・伊藤滋(早稲田大特命教授)、理事・村山弘義(元東京高裁検事長)監事・吉野準氏(元警視総監)の3名で、2008年の大麻事件、2010年1月の朝青龍泥酔暴行事件、11年2月発覚した八百長問題続発する諸問題に対処したが、吉野監事が特に厳しかったようだ。
2012年に相撲協会の外部理事に就任した宗像紀夫氏(元名古屋高検検事長、第2次安倍内閣参与)はロッキード事件では公判担当検事、リクルート事件の主任検事などを務める有能な検察官僚であったが、「八百長問題など最初の外部役員は厳し過ぎた」、「協会員は出来るだけ守る」と、第1次外部役員とは異なる方針であるようだ。
最初の外部役員3人のきびしい判断に大いに不満であった北の湖理事長の宗像新外部役員の洗脳が功を奏したためか、上司には逆らわないと言うのが宗像氏の信条なのか、分からない。
肖像権裏金問題が協会内で無罪になったことによって、北の湖理事長はますますK氏との関係が親密になったようだ。私たち部外者にも、K氏が外部職員の最高のポストである主事に昇格したという噂が聞こえてきた。
2016年1月21日の日刊ゲンダイのインタビューで八角理事長は次のように述べている。
「北の湖理事長が亡くなる直前の11月の理事会で『Kにすこし重石を付けたい』、と発言し、外部(理事)から事務局長という案が出た」。
「事務局長」という案を出した外部理事とは宗像氏であろうが、この案は外部職員の最高のポストの「主事」(現在は空席)にK顧問が就任すると批判されるのを危惧したためか。
2014年9月、「65歳で定年退職する親方を70歳まで再雇用する」ことが決まったが、K顧問の提案であったようだ。この定年延長により年寄株が空かず、引退力士が親方になれないことになる。また協会の財政を圧迫する一方、定年退職予定の親方たちにとっては嬉しい話。
彼らの何人かが理事長選挙でK顧問の支援を受けている貴乃花に投票することもありうることである。八角親方が理事長に就任以来、国技館には出勤していないK顧問が最近、豊富な資金を投入して八角と理事長席を争う貴乃花理事の理事長当選を目指しているらしい。
以上、庄内日報3月8日の記事を引用。
北の湖前理事長の懐刀Kが理事長の選出暗躍のうわさ
日本相撲協会の次期理事長は、3月場所千秋楽翌日の3月28日に新理事会で互選されるが、故北の湖前理事長の任期を引き継いだ現職の八角理事長(元横綱北勝海)と、若手の貴乃花親方(元横綱)の一騎打ちと、スポーツ新聞や週刊誌などが賑やかに報じている。これらの報道で私が最も注目したのは1月26日~30日の日刊ゲンダイの記事である。
相撲協会が仕事初めを迎えた1月5日、八角理事長は全職員を前に強い口調で次のように言った。(以下太字は八角理事長の発言)
「2014年度の(相撲協会)の収支決算は赤字に転落にした。協会を破産させるような勢力とは断固、戦うつもりだ。」
新理事に当選した春日野親方(元関脇栃乃和歌)も「赤字からの脱却」を課題としている。
たしかに八角理事長、春日野理事の言う通り相撲協会の2013年の経常利益は1億5300万円の黒字であったが、2014年は全6場所の満員御礼が58日で入場券売り上げは前年度より7億円増加したのに7400万円の赤字になった。相撲協会の公式HPによると2015年は11月場所の4日間を除き86日が満員御礼であったにもかかわらず、13億3750万円の赤字である。
八角理事長は「この赤字の原因を単なるカネの無駄遣いにかぎらず、不透明なカネ遣いにあるのではないか」と言っている。
八角理事長が言う「協会を破産させる勢力」とは北の湖前理事長の右腕として権力を振ったK顧問を指していることは間違いない。K顧問とは何者か?彼が初めてジャーナリズムに登場したのは2007年9月15日の週刊現代であろう。
この週刊誌に彼は北の湖理事長の「右腕」として登場する。巡業を仮病で休み、サッカーに興じ相撲協会により2場所出場停止の処分を受けた横綱朝青龍が北の湖理事長の「思いやり」により治療を理由にモンゴルに帰国するとき、墨田区のマンションから空港に行く車に同乗した人物がいた。彼の名は小林慶彦(52歳)。「AT&C JAPAN」社長の彼は北の湖と極めて近しい間柄で、頻繁に理事長室に出入りをしている。(小林慶彦が本名であるのは事実であるが、マスメデイアではK顧問と通称しているのでこれを使うことにする。)
次にK顧問が登場するのは「相撲協会に跳梁跋扈『北の湖の懐刀』の正体」と題する2013年7月28日のサンデー毎日である。この記事を要約して引用する。
「相撲協会の危機管理委員会には『北の湖の懐刀』と呼ばれる人物がいる。2012年8月に顧問に就いた経営コンサルテイング会社社長(58)である。立命館大卒業後、実父が経営する台湾にある生地会社の代表に就任、その関係で台湾巡業(06年)を手がけ、モンゴル巡業(08年)では巡業を仕切った。顧問就任後は国技館内の応接室を専用居室としている。今や顧問として協会に浸透して『北の湖の金庫番』と称されるほどの存在になった。」
21歳2ヶ月の史上最年少の横綱昇進記録を持つ北の湖理事長は、2期10年にわたって(9代2002年2月~08年9月、12代12年2月~15年11月)理事長の地位にあったが「名力士、必ずしも名伯楽ならず」とのいわれのあるように、理事長としての北の湖の評価は高いとはいえなかった。きわめて保守的な北の湖理事長は、機略にすぐれたK顧問の「元NHKアナウンサー杉山邦博氏の取材評を没収すべし」との意見を実施するなど、K顧問のアドバスを重用した。
K氏が「協会の50代の男性顧問」または「協会員であるX」と匿名で登場したのは,相撲協会とパチンコ業者による力士の肖像権に関わる契約をめぐってのK氏の汚職問題である。2014年7月21日の朝日新聞は「相撲協会、顧問の動画流出巡り『現金は返却と結論』」という見出しで次の通り述べている。
「顧問が仲介者から現金(裏金)を受け取る動画がインターネット上に流出した。動画では顧問が『絶対にこれ、(北の湖理事長に)バレんようにしてくれよ』と相手に言っている。裏金問題を調査に当たっていた協会の宗像紀夫外部理事(危機管理対策担当)の『顧問が現金1700万円は返却したので問題なし』との見解で、K顧問は無罪放免になった。パチンコ業者との契約は肖像権などに関するもので、総額1億円。理事会の承認は経ず、理事長の決済で2014年夏に結ばれたという。」
この記事で、私が納得できなかったのは宗像外部理事の「顧問無罪」の判断である。すぐその場で返却すれば問題がないが、後に返したからといつて横領の行為自体は消えないからである。
相撲協会に外部役員が招かれるようになったのは、2007年に起きた時津風部屋の新弟子暴行死事件以来、不祥事続きの相撲協会に批判が高まったためであった。最初に外部役員に就任したのは、理事・伊藤滋(早稲田大特命教授)、理事・村山弘義(元東京高裁検事長)監事・吉野準氏(元警視総監)の3名で、2008年の大麻事件、2010年1月の朝青龍泥酔暴行事件、11年2月発覚した八百長問題続発する諸問題に対処したが、吉野監事が特に厳しかったようだ。
2012年に相撲協会の外部理事に就任した宗像紀夫氏(元名古屋高検検事長、第2次安倍内閣参与)はロッキード事件では公判担当検事、リクルート事件の主任検事などを務める有能な検察官僚であったが、「八百長問題など最初の外部役員は厳し過ぎた」、「協会員は出来るだけ守る」と、第1次外部役員とは異なる方針であるようだ。
最初の外部役員3人のきびしい判断に大いに不満であった北の湖理事長の宗像新外部役員の洗脳が功を奏したためか、上司には逆らわないと言うのが宗像氏の信条なのか、分からない。
肖像権裏金問題が協会内で無罪になったことによって、北の湖理事長はますますK氏との関係が親密になったようだ。私たち部外者にも、K氏が外部職員の最高のポストである主事に昇格したという噂が聞こえてきた。
2016年1月21日の日刊ゲンダイのインタビューで八角理事長は次のように述べている。
「北の湖理事長が亡くなる直前の11月の理事会で『Kにすこし重石を付けたい』、と発言し、外部(理事)から事務局長という案が出た」。
「事務局長」という案を出した外部理事とは宗像氏であろうが、この案は外部職員の最高のポストの「主事」(現在は空席)にK顧問が就任すると批判されるのを危惧したためか。
2014年9月、「65歳で定年退職する親方を70歳まで再雇用する」ことが決まったが、K顧問の提案であったようだ。この定年延長により年寄株が空かず、引退力士が親方になれないことになる。また協会の財政を圧迫する一方、定年退職予定の親方たちにとっては嬉しい話。
彼らの何人かが理事長選挙でK顧問の支援を受けている貴乃花に投票することもありうることである。八角親方が理事長に就任以来、国技館には出勤していないK顧問が最近、豊富な資金を投入して八角と理事長席を争う貴乃花理事の理事長当選を目指しているらしい。
以上、庄内日報3月8日の記事を引用。