週末、東京・上野の森美術館で開かれている「ネオテニー・ジャパン」展に行ってきた。展示されているのは、精神科医の高橋龍太郎さん(62)が収集した、日本の現代美術の作品だ。
平成8年に描かれた会田誠さんの「紐育(にゅうようく)空爆之図」には驚いた。5年後の9・11テロを予言したかのようだ。「これが美術品?」と首をひねることもある。小欄に見る目がないだけだろう。
高橋さんが、展覧会のテーマとした「ネオテニー」(幼形成熟)とは、動物学で使われる用語だ。人類と類人猿を比べると、平面的な顔、少ない体毛、大きな脳容量など、胎児のときはよく似ているのに、人類だけが、胎児のときの特徴を失わないまま大人になる、というのだ。
幼さ、かわいさといえば、日本の漫画やアニメだけでなく、現代美術にとってもキーワードだ。高橋さんによれば、日本の美術界は明治の文明開化以来、西欧文化に習って大人になろうと急ぎすぎた。日本独自のものを生み出し、世界に認められるまでには、百有余年の時間が必要だった。幼い形のままゆっくり成熟するイメージを、日本の現代美術に重ね合わせている。
ところで、日本の悪口が大好きなニューヨーク・タイムズがまた22日付の電子版で、マスク姿が目立つ地下鉄車内の写真を付けて、新型インフルエンザで混乱する日本をからかっている。日本人は外国発の感染症に対して、「パラノイア(偏執狂)」だそうだ。
政府やメディアは騒ぎすぎだ。それに踊らされる国民も幼すぎる。そんな声は国内からも、聞こえてくる。日本人の振るまいをそれほど、卑下することもあるまい。現代美術のように、マスク姿が「クール」(かっこいい)と、称賛される日も来るかもしれない。
産経抄 産経新聞 5/25
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