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スクラッチ木造帆船製作日記と映画、スタトレなどあれこれです。

ハンニバル・ライジング

2007年08月25日 | 映画
 脚本も原作のトム・ハリスが書いてました。原作者の脚本なので、基本的な骨格は、原作と同じですが、レクター博士の内面の変化と成長を扱った部分は、映画ではあまり掘り下げず、殺人が始まってからの方に比重が置かれています。
 レクター博士が8歳からハイティーンまでの時期を扱った映画なので、第二次大戦から戦後すぐが舞台です。

 一番驚いたのが、映画の本筋とは全く関係ない部分なのですが、時代考証に驚きました。戦争で城を追われた8歳のレクターを説明する部分で、何カットか戦争を描写する部分があるのですが、これに登場するドイツ軍とロシア軍のトラックだの軍用車だの戦車だの、火器類だのが、第二次大戦映画でも撮るくらいの勢いで、凝ってました。引っくりかえって燃えている戦車がスコダの足周りだったり、ロシア軍が反攻してくる際に登場する救急車が、レンドリースのダッジだったり、こんなとこ凝ってどうする?といいたくなるようなところにこだわっています。
 その割には、T34に墜落してきて衝突したスツーカが、どう見ても墜落したように見えなかったりするのですが、その大道具以外は、すべて正確でした。
 原作を読んだ際に、何と無くイメージしていた山荘とその周辺の景色も、イメージ通りで、原作の雰囲気には忠実だったような気がします。
 パリに移ってからも、登場する車だの医療器具だの、運河船だのの道具立ても、実に凝っています。
 セットもかなりのクオリティーで撮影もいいですし、高級感の漂う画面です。

 しかし、羊たちの沈黙やハンニバル、レッドドラゴンなどの、連続殺人鬼の映画とは、かなりテイストが違います。原作でもそういう傾向はあったのですが、リベンジもののアクション映画って感じになっています。原作では、深いトラウマを受けたレクター博士が言葉を取り戻し、教養を身につけ、殺人に開花してゆくプロセスに比重が置かれているので、ごまかされるのですが、映画ではこのあたりの比重が薄いので、レクターの異常性がそれほど感じられません。従って、レクターがあまり不気味ではありません。
 あれだけやられたら、この程度の仕返しは十分バランスがとれている感じになってしまいます。
 ハンニバルを演じている役者さんが、ホプキンスのレクター博士のような賢そうな雰囲気に欠けていて、むしろ肉体派的な印象があるのも、アクション映画っぽい雰囲気になっている一因でしょう。もっとも、レクターといえども、まだ学生ですから、教養にかけていても当たり前なわけですが^^;

 意外だったのが、悪党の親玉の役者さん。このひと、ノッティングヒルの恋人で、パンツ一丁でウロウロしている主人公のルームメイトやってた人でした。あの阿呆な役と、この外道な役を難なくこなしているところに驚いてしまいました。
 そういえば、羊たちの沈黙でバッファロー・ビルやってた
テッド・レビンもコメディー多いですから、コメディに強い人は異常な悪役に収まりがいい人が多いのかもしれませんね。

 もう少し不気味さが加味されていれば良かったのにと惜しまれます。どちらかといえば、レクター博士のアメリカでの連続殺人の最盛期を扱ったような映画が見たかった気がします。やはり連続殺人犯は、何考えているかわからないところと理不尽な暴力がないと、不気味じゃありません。この映画では、レクター博士は、ちょっと行き過ぎはるものの、このくらいの仕返しして当たり前だって感じで、どう見てもヒーローです。

 ハンイバル・レクターを扱った映画なので、見る人のそれぞれの予見が評価に大きく影響してしまうわけですが、仮に、全くの先入観なしで見た場合、かなり面白い映画に仕上がっていると思います。

 
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2 コメント

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戦車(笑) (REALLIFE)
2007-08-27 10:04:17
こんにちは。
私はこの一連のシリーズ作品は観た事がありません。なんとなく怖いんですよね(稲川さんの怪談は平気なくせに)。羊たちの沈黙~レッドドラゴンまで一応は見られるように持っているくせに、なんとなく怖くて見ていない。おかしいヤツです私。
ところでskodaの足回りとか、細かいところを見ておられます!そういうところだけでも見てみたいかもしれません(笑)よく分かってないのですが、その戦車って38tなのでしょうか?
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見てみてくださいな (ろっく)
2007-08-27 11:36:37
 稲川さんほど怖くありませんので安心して見てください^^;
 映画の主題とはかなり異なりますが、ひっくり返って炎上していて、地面から上に見えているのは、ドライブスプロケットと転輪の一部くらいだったかな。いずれにせよ、38系っぽいんですが、38tなのかヘッツアーなのかグリレなのかはわかりません^^;
 シーン的には僅かなのですが、東部戦線系が好きな人には意外な楽しみのある映画でしたよ。
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