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スクラッチ木造帆船製作日記と映画、スタトレなどあれこれです。

アサルト13 要塞警察

2006年08月05日 | 映画
 ジョン・カーペンターの極初期の作品のリメークです。オリジナル作品のファンなら、色々言いたくなる映画ですね。
 オリジナルは、彼の極初期の作品にして、彼のアクション系の作品のあ、ある意味集大成ともいえる作品です。普通、集大成てのは、色々作った後に作られるのが理屈ですが、エスケープ・シリーズや、ゴースト・オブ・マーズと比較すると、私はこちらのほうがよくできているしすべてのエッセンスが詰まってる感じがするからです。
 オリジナルをご覧になったことのない方で、近くのレンタルショップでも見かけないという方は、主人公が女になって、舞台がアメリカの大都会の郊外にある警察署になったゴースト・オブ・マーズと思っていただければ、感じはつかめると思います。ただ、ゴースト・オブ・マーズよりは、前半から中盤の展開は、比較にならないほど面白かった記憶がありますが。
 オリジナルは、友人から借りたTVを録画したもので見たので、黒バックに赤文字のタイトル文字さえ満足に読めないようなひどい画質でしたし、見たのも大昔なので、細かい点はほとんど記憶していません。
 その状態で見ても、今回のリメークは、肝心のエッセンスの部分が大きく欠けていた気がします。
 もっとも、その分、結構なじみのある役者が多く出ているし、皆さん芝居もいいし、存在感も大きいので、それはそれで楽しめるわけですが・・・。
 無名に近い貧乏キャストで、しかも音楽は例のカーペンター節のデンデケデデンみたいなお世辞にも豪華とはいえないオリジナルのほうが、音楽の合い方も、役者もいい感じだったわけで、必ずしも金かけたほうがいいわけじゃないという見本みたいな感じでした。
 テーマは同じで設定が似ているとはいえ、襲撃してくる連中もその目的もまったくオリジナルとは違うので、どうなってゆくのかはわからないようになっています。
 ストーリーなどは、アマゾンのリンクを参照していただくとして、まずは、リメークのキャストからいいますと、ヒーローと一緒に戦うことになる悪党を、ローレンス・フィッシュバーン。地獄の黙示録のころは、痩せた若造だったのに、今やヘビー級の存在感と、深みのあるおっちゃんですな(^。^;;
 今回は、まあ、悪の世界のモーフィアスって感じでしょうか。非常にいい感じでした。
 同じ護送車で到着する、唯一の黒人でない犯罪者にジョン・レグイザモ。マイアミ・バイスの昔から、大抵、ラテン系のチンピラやってるわけですが、最近ではアイスエイジで、シドの声当てたりしていますね。まあ、こういった役は、十八番ですから、余裕の演技ですし、死ぬときの小物感は、絶品です。私としては、この人はランド・オブ・デッドのチョロくらい骨のある悪党やってるのが好きなんですが
、今回のような、風合いは、この人でないと出せない味でしょう。
 主人公を担当する警察のカウンセラーやってるマリア・ベローは、以前ERで、ドクター・デル・アミコをやってた人なので、ご存知の方も多いでしょう。なんだか、今回の映画では、顔つきがナオミ・ワッツみたいな感じになってました。ERでレギュラーやったおかげなのか、その後は、毎年2~3本映画に出ていて2005年は5本も出演しています。まあ、演技力はERでも証明済みですが、今回も、序盤のゆとりのあるカウンセラーから、包囲されてパニックを起こす腰抜け状態、その後の覚悟を決めた潔い行動と、一番、心理状態の変化する役に説得力のある演技をしていますし、緊張感のある展開の中、テンションを崩さずコメディ・リリーフをこなすあたり、実力を見せてます。
 警察事務員をやってるドレイ・デマッテオは、ソプラノズのアドリアーナや、ジョーイで姉のジーナやってる人なので、WOWOW見てる人にはお馴染みの女優さんですね。まあ、もともと1話だけの予定だったアドリアーナの役をレギュラーにまで持っていった実力はすばらしいですし、ああいった役から、ジョーイでのコメディエンヌとしてのパフォーマンスを見ても、相当なレベルの人ではあります。もともと、そういった傾向の顔ではあるのですが、今回は特にアダムス・ファミリーっぽい顔になってました。マリア・ベローが普段よりずっと美人に写ってるのに比べて、彼女は、普段より、綺麗には写っていません。なんだか、妙にギトついて老けて見えました。年齢から言うとマリアの方が一回りは上なんですけど・・・・。
 それはそれとして、脚本的に、彼女の役は、検討の余地ありでした。縁起は悪くはないので、彼女の責任ではありませんが、脚本的には、よくありませんでした。
 冒頭のトラウマを受けるシーンにチラッと出てくる女性を除けば、最後の女性キャストのアイーシャ・ハインズは、話し始めるまで男だと思って見てました(^^;)
 よく見たらザ・シールドに出てる人です。レジュメを見るとCSI:NYだのインベージョンだのミディアムだのと、最近のTVシリーズによく出ている人なので、アメリカではお馴染みの顔なんでしょうね。インベージョンはこの秋からAXNでやるので、これからお馴染みなる予定です・・・。
 存在感もあるし、少ない出演シーンでは、常に画面を支配していますので、もっとちゃんとした脚本だったら、面白い役どころになったはずです。この作品の脚本の粗悪さが最も出ていたキャラのひとつでしょうね。勿体無い感じです。
  
 オリジナルからの変更方向は、レオンを意識したのかパクったのか、ああいう方向の悪党なわけですが、脚本家の実力の違いでしょう、レオンでは表現できた説得力も、この作品の脚本家では、説得力を持たせることに失敗しています。そのあたりが一番出ているのが、悪党の親分のキャラクターです。演じているのは、ガブリエル・バーン、渋い役者さんです。この人もうまい人なので、キャラに説得力を持たせていますが、うまい脚本家が書いていたら、もっと印象的でいいキャラになったことでしょう。裏を返せば、この人レベルの役者さんでなかったら、もっと酷いことになったでしょうね。もともと同じ穴の狢のローレンス・フィッシュバーンとの対比が脚本でサポートされていないので、単に、悪党の親分がいます、で終わっちゃって、楽しさ激減なわけです。
 そのほか、細かい役でも、結構お馴染みの顔を揃えているので、無名な脇役とか安い役者で揃えたオリジナルとは真逆な布陣ですね。
 さてその脚本家ですが、ジャックとかニゴシエーターとかを書いた人なので、これらの作品でゴーストライターでも使っていない限り、決して無能な人ではないですから、原因として考えられるのは、オリジナル・ファンに先を読まれないようにって事に拘泥しすぎたか、監督が、統一性のないリクエストを出したか、スタジオ側のいろんな注文が多かったか、この作品に乗れなかったかのいずれかでしょうね。もっとも、いわゆる破綻していたりするわけではなく、あくまで、もっとまじめに考えたら、ずっと面白くなっただろうポイントをスルーしてる程度の酷さではあります。まあ、一口で言って、志の低い作品だったってことでしょうか。野心的に挑んで酷評される危険を冒すより、無難にしのいで、怒られないようにしておこう見たいな感じです。
 主人公のイーサン・ホークは、冒頭の潜入捜査のブチキレ・ドラッグディラーっぷりから、トラウマですっかり腰の引けた駄目警官、腹をくくって正義のヒーローに戻ってゆく変化を自然に演じています。
 まあ、彼と、ローレンスがしっかり立っているので、アクション映画として面白く見られることは間違いありません。あくまで、ここで書いてる苦情は、すばらしい作品じゃなかったことへの不満というところです。




 ここからは、ネタバレも入りますので気をつけてくださいね。
 襲撃してくる連中が、ストーリー的には、捜査課ぐるみで汚職をしている33名の刑事ってことなんですが、SI552とか、高すぎてほとんどの警察のSWATで高嶺の花といわれているMP5、レースシステムに、すごい高いポインティン・デバイスを一杯装着したM4だの、ナイトビジョンだの、お前は米軍の特殊部隊かといいたくなるような贅沢装備の上、1年365日訓練に明け暮れてないと無理だろうといいたくなるようなすばらしい動きの襲撃者ってのが、どうも説得力がありません・・・。
 警察署に閉じ込められて、外部と連絡できない、どうやって助けを呼ぶのか、どうやって生き残るのか、という緊張感が、途中で警察署を出ちゃうことで、かなり途切れてしまいます。
 途中、ミスリードのために出てくるキャラが、ストーリーに絡められていない、最後に生き残るヒロインとヒーローは、事件の最中あまりかかわりが深くない、むしろ、ヒロインとかかわりの深かった、悪党のほうとエンディングで絡まないと、収まりが悪い。
 前半、面白かった悪党キャラの死に方が、お座なり。
 裏切りキャラが、バレバレな上に、唐突に脱出路が出てきて、あっさりそのわなに乗るあたり、緊張感をすごく欠いた展開になっている。
 なぜか死ぬやつはほとんどおでこを撃たれてる(たぶん、おでこでも撃ちぬいておかないと、客が死んだと思わないおそれがあるからでしょうね。防弾チョッキ着てるやつらが多いですから。でも主人公側は、そんなの着てないですから、たまには違う死に方しろよといいたくなります(^^;)
 まあ、そんなわけで、結構お座なりな展開のストーリーなわけです。

 でも、やってる役者が、いいので、結構引っ張って行ってくれるので、楽しめはします。
 悪党ヒーローは、ゴースト・オブ・マースのアイスTなんかと比べると、ローレンス・フィッシュバーンのほうが、遥かに深いし存在感もあるわけで、見ていて引き込まれるわけですからね。
 イーサン・ホーク(奇しくもオリジナルの主人公の名前がイーサンで同じなんですが(^。^;;)も、トラウマを抱える主人公にリアリティを与えるいい芝居をしていますので、同じく、ゴースト・オブ・マースのナターシャ・ヘンストリッジの主人公などとは比較にならないわけです。
 それでも、ゴースト・オブ・マーズのほうが、この手のバディ・ムービーのおいしいところがきっちりあって、その部分では、本作より面白いわけです。当然ながら、オリジナルは、もっとそのあたりも面白かったわけです。
 現在発売されているオリジナルのDVDは、ファンの折り紙つきの酷いクオリティで、決してお勧めできる画質ではないようです(暗いシーンは真っ暗でほとんど何も見えないそうです( ┰_┰)
 まともな画質で発売してほしいわけです。
 結論から言うと、オリジナルのファンでなければ、楽しめる作品ではあります。でも、脚本を変えずに、このレベルのキャストと、このレベルの予算でリメークしたほうが、ずっとずっと面白かったでしょうね。

 ぜんぜん期待しないで、テレビで見たら、かなり面白い映画に感じられるかもしれません。でも、オリジナルを見る機会があったら、どうしようもない貧乏臭さと共に、それを乗り越えても余りある面白さを味わってもらいたいものだと思います。

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2 コメント

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毎度詳しいですね (REALLIFE)
2006-08-05 22:45:05
こんばんは。

お話に出てくるものたち、全然分かりません(笑)なので、そんな私が見たら普通に新鮮に見られるかもしれないなと、希望を持っております。

勿論レンタルで見ようと思っていますけど、最近は心が躍る映画がちょっと無いので、楽しめたらいいなと思います。
返信する
ぜひとも感想を! (ろっく)
2006-08-07 00:34:01
 ご覧になったら、オリジナルの先入観なしだと、どんな風に目えるか、ぜひとも感想をお願いします~!
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