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欠陥原子炉

2011-03-16 00:11:34 | 日記

福島第一原発 の事故に関して、背筋の寒くなる話が飛び込んできた。
ここで使用されている Mark 1 原子炉の設計は General Electrics (GE) が行ったが、1970年代から既にその安全性に疑問が呈されていたというのだ。
コストを下げるために安全性が犠牲になっているとして、米国原子力安全委員会(AEC)から製造中止を求められている。
(リンクはAECの Stephen Hanauer 委員からの文書)

自分の無知を恥じる共に、日本政府がそのような原子炉を長期にわたって安全だと宣伝してきたことに驚愕を覚える。
日本国内のシステムとして、製造責任ではなく運用責任を問うのが一般的のため、東電が批判を一身に浴びている。
GEの設計責任を問う新聞の論調も見られない。
この問題をニューヨークタイムスの記事から掘り起こしてみたい。

問題の本質は、このタイプの原子炉は事故により冷却不能になった場合、放射性物質を閉じ込めておくことが困難になる、というところにある。
さらに、福島で現実に起こったように、冷却不能な原子炉では圧力抑制装置 (pressure-suppresion system) が損傷することが予想されていた。
そのため、関電で使用されている加圧水型の原子炉の方が有事の際に安全だとして Mark 1 (沸騰水型)原子炉の製造販売を禁止することが真剣に検討されたが、既に多くの Mark 1 原子炉が出回っているため「ここで政策転換をすることは原子力発電業界の死を意味する」(Joseph Hendrie)、として見送られた。

80年代に入り原子力規制委員会(NRC)の Harold Denton が福島第一原発で使用されている Mark 1 原子炉は「燃料が露出すると90%の確立で爆発する」と断言している。
その後の研究会報告では「沸騰水型原子炉では炉心溶融が起きれば数時間以内に格納容器から放射性物質が漏れる確率が高い」 ( "Mark 1 failure within the first few hours following core melt would appear rather likely.") とされている。
これに対してGEの対応は、これまで一度も格納容器が損傷した例はない、と実績を前面に出して反論している。
今回の事故を見ると、冷却機能が失われた Mark 1 (沸騰水型)原子炉は炉心溶融に向かって一直線だというのが分かる。

80年代後半になるとGEの内部文書にすら Mark 1 格納容器の安全性が十分検証されていないとか、安全性にかかわる欠陥があると記されるようになった。
そのため、圧抜き用の弁等を取り付けるようになったのだが、福島原発の場合、この弁がうまく機能していないと報告されている。

既に福島第一原発事故の重大さはスリーマイル島事故のレベル5を超えレベル6とされている。
現場で必死の作業を続ける東電や関連会社の努力で格納容器の破損もしくは爆発と言う最悪の事態だけは避けて欲しい。
ただ祈るのみだ。



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