ホンダが8月に発売した新型軽自動車「N(エヌ)―WGN(ワゴン)」で不具合が発生し、生産や出荷を一時停止している問題で、納車遅れによる顧客の負担増分を、ホンダが支払うことがわかった。対象は数千台規模にのぼるとみられる。10月上旬とされていた生産再開も遅れる見通しだ。軽はホンダの国内販売の柱で、業績への影響が懸念される。

 N―WGNは、全面改良された新型が8月9日発売。ところが電子制御のパーキングブレーキで、不具合の可能性を示す警告灯が異常点灯する問題が9月2日の検査で発覚した。対策のため、その後の生産や出荷を約1カ月停止している。

 軽自動車は原則、車にナンバープレートをつけるための届け出が完了した時点の税率が適用される。消費増税前の9月中に納車予定だったのに納車できないケースが相次ぎ、販売店は顧客に対し、2%の増税分を負担するなどの対応を取ることにしている。

 販売店関係者らによると、ホンダはこうした負担分について販売店に販売奨励金を支給し、実質的にメーカーが負担する形にするという。

 納車遅れの間に顧客の保有車の下取り価格が下がったり、保有車の車検切れで車に乗れなくなったりする可能性もある。ホンダは販売店に対し、下取り価格の減価分や、車検切れの顧客のレンタカー代を負担することも伝えているという。

 ログイン前の続きN―WGNは8月に6958台が売れたが、生産停止で9月の販売は2121台に急減。顧客への費用負担についてホンダは「ノーコメント」としている。

 ホンダは2014年4月の前回の消費増税時、13年9月発売のフィットがリコール(改修・無償修理)で納車が遅れ、増税後の納車になった際にも費用を負担した。

 N―WGNの生産再開は当初「10月上旬」とされていたが、延期されたことも新たにわかった。再開のめどは明らかにされていない。不具合があった電子制御のパーキングブレーキは、ホンダが10月下旬開幕の東京モーターショーで世界初公開する新型「フィット」にも使われる。ホンダはすでに販売店に対し、フィットの発売を1カ月近く遅らせると通知している。フィットの発売時期へのさらなる影響も懸念される。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは7日のリポートで、基幹車種のフィットの発売が3カ月ほど延期されると、N―WGNの減産分も含め「ホンダの国内販売台数を約10万台、20年3月期の営業利益を500億円近く押し下げる可能性が高い」と指摘。7日の同社株は前日より0・91%下落した。

 都内の販売店の関係者は「N―WGNは発売が遅れたうえに、生産停止となり、キャンセルした客もいる。フィットは大変売れる車なだけに、影響が心配だ」と話す。別の関係者は「増税後に納車が遅れた客の契約書の切り替えなど事務負担が生じている。すでに契約済みの分も、販売店の売り上げが立たずつらいところ」と話す。