フィギュアスケート界のニューヒロイン、紀平梨花(関大KFSC)が21日、17歳の誕生日を迎えた。シニアデビューの昨季は日本選手13年ぶりのグランプリ(GP)ファイナル初出場Vを達成し、冬季スポーツの話題を独占。シニア2年目の飛躍へ向け、多忙なオフを過ごすニューヒロインが本紙独占インタビューに応じて「17歳の誓い」を激白した。出場できなかった平昌五輪への思いから世界一を目指す胸の内まで、笑顔の奥にある“本当の紀平”をお届けしよう。

 ――17歳になった自分をどう思うか

 紀平:結構、お姉さんになったなぁって感じ(笑い)。でも、自分の中でスケート人生が終わったらいったん、人生の区切り。だから「残りわずかしかない」って感覚もありますね。

 ――もし誕生日が21日早ければ、平昌五輪に出られていた(昨年2月の平昌五輪は「五輪前年の6月30日の時点で15歳以上」という年齢制限のため不出場。2017―18年シーズンの国際大会も「大会直前の7月1日で15歳」の条件を満たせず、紀平のシニアデビューは18―19年シーズンとなった)

 紀平:そうですね。年齢が間に合っていたら、今の自分はなかったんじゃないかなと思います。

 ――それはなぜ

 紀平:上の世代が本当に素晴らしい選手ばかりで、みんな上を目指す空気がすごすぎて(シニア転向が)1年早かったら、私は諦めていたかもしれません。そこまで背負ってできるほどの自信はまだまだでした。

 ――色紙には「挑戦」と「進化」の文字が

 紀平:4回転ジャンプとか、今までにない曲を選んで挑戦したり、最近は新しい靴の調整をしたりしています。

 ――オフとは思えないほど多忙だが、遊びたくならないのか

 紀平:うーん、遊びたいとはあまり思いません。もし旅行に行ったとしても、不安になったり逆にストレスになる(笑い)。フィギュアはホントに繊細なので、運動したり、体を動かせない丸一日があると、次の日は別人のように調子が悪くなる時もある。水曜日まであれだけ跳べていたのに何で?ってくらい。トレーニングやダンスなどで体を調整すれば調子が悪くはなりませんが、飛行機などで全く動かない1日があると3日戻すのに時間がかかる。飛行機の遅延で3日間、滑れなかった時は戻すのに1週間くらいかかりました。

 ――練習を努力と感じていないようだ

 紀平:努力っていうか「前提」って感じかな。頑張って、ただ(ペースを)崩さないようにしているだけ。あと、同じ失敗は絶対にしたくないんです。

 ――どうしてここまで人生を懸けられるのか

 紀平:まあ、懸けざるを得ないというか、これだけ母や周りにサポートしていただいて、お金もたくさん使ってスケートに懸けてくれて、小6くらいで「今までのことが無駄にならないような人生を送りたい」って思うようになった。私は自分一人だったら辞めてしまうかもしれないけど、こんな私でも信じて応援してくれていて、みんなに喜んでもらうために、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳んだり、絶対いい成績を取ろうって強く思います。

 ――騒がれることは負担に感じないのか

 紀平:騒がれても騒がれなくても、やることは変わらないのであまり負担にはならないかな? 何て言うか、私なんかまだまだって思っているから今はあまりプレッシャーは感じないです。それに昔から目標は高く設定するようにしていたので、少しずつ目標をクリアできて良かったなって思える感じです。

 ――一時はテレビにも出ずっぱりだった

 紀平:テレビは全く見なくなりました。だから注目されていることに気づかなかった(笑い)。それに自分のインタビュー映像って見たくないです。こんなこと言ったっけ…とか悲しくなるのも嫌だし、無駄にショック受けていると、その時間がもったいないです。

 ――自分が負けず嫌いだと思うか

 紀平:いや、負けず嫌いではないかなあ。ホントは「誰にも負けない!」くらいのほうがいいと思うんですけど…。あ、でも変なプライドがあるかも。うん、それはある! 昔、朝練で疲れて授業中にカクンって落ちそうになったけど、絶対に意地でも寝なかった。ちょっと人とポイントがズレていて、笑いのツボとかも違う。人の前では絶対に泣かないし(笑い)。幼稚園のときから絶対に泣かなかった!

 ――じゃあ、2022年北京五輪で金メダルを取ったら

 紀平:たぶん泣かないかな。涙が浮かんでも、“泣いてませんアピール”をしてるかも。そういう変なプライドが私にはあるんです(笑い)。

【4回転ジャンプ挑戦】シニアデビューの昨シーズン、浅田真央以来となる日本選手13年ぶりのGPファイナル初出場優勝を達成したものの、大目標だった今年3月の世界選手権は4位。巻き返しを図るべく、今オフは4回転ジャンプへの挑戦を本格的に始めている。

 米コロラドで合宿を行い、アイスショーやイベントに出演する合間に新しいスケート靴の調整、新衣装の打ち合わせなどを行う多忙の日々だ。

 来季のフリーの曲名は振付師のトム・ディクソン氏が命名した「インターナショナル・エンジェル・オブ・ピース」。4回転サルコーを冒頭に入れ、トリプルアクセルも2回取り入れた演技構成で、紀平の「進化」はすでに始まっている。

★きひら・りか=2002年7月21日生まれ。兵庫・西宮市出身。5歳からスケートを始める。小中学時代は朝練後に登校し、放課後も猛練習の日々。16年9月のジュニアGPで女子史上7人目となるトリプルアクセル成功で優勝。“ポスト浅田真央”として注目を集める。シニアデビューの18―19年シーズンはGPファイナル初出場制覇を含む国際大会6連勝。全日本選手権で2位、世界選手権では4位。現在は通信制・N高校に在籍。