アサリやカキなどの二枚貝を食べると中毒症状を起こす「貝毒」が猛威をふるっている。毒が規制値を超えて検出され出荷を自主規制するケースは、瀬戸内海東部を中心に全国で昨年の2.5倍で、国によると2005年以降で最悪の状況だ。食中毒被害も出ており、各地の自治体が注意を呼びかけている。
食中毒で入院例も
貝毒は、二枚貝が有毒なプランクトンを食べて毒を体内にため込むことで発生する。加熱しても消えず、食べると手足や顔面がしびれ、呼吸困難などで死に至ることもある。
農林水産省などによると、今年の出荷自主規制は4月26日までに56件。兵庫県の播磨灘では同月、記録が残る1980年以降初めて、アサリとマガキから規制値を超える貝毒を検出した。
© 毎日新聞 貝毒が発生したことを知らせる看板=大阪府貝塚市の二色の浜海水浴場で2018年5月…
大阪府のまとめでは3月、泉南市や和歌山市で取れた貝で食中毒が2件発生した。アサリやムラサキイガイを食べた30~60代の男女計4人が口や手足のしびれを訴え、3人が入院した。兵庫県明石市でも同月、地元で取れたムラサキイガイを食べた70代男性が、歩行が困難になるなどして入院した。
養殖への影響も深刻だ。東日本大震災後に漁業の復興に力を入れる宮城県中北部沿岸では、ホタテガイから高い数値の貝毒を検出し、出荷の自主規制が続く。県の担当者は「これまでほとんど検出されなかった地域。出荷ピークを迎える時期が迫っているのだが……」と焦りを隠さない。
プランクトンの生態に詳しい大阪府立環境農林水産総合研究所水産技術センターの山本圭吾研究員は「例年より早い2月上旬から原因プランクトンが現れ、1個体あたりの毒量が多くなったことが貝毒の高濃度化につながったとみられる」と分析し、「大阪湾では4月中旬から原因プランクトンの活動が収まっており、流行は収束に向かう」と予想する。
大型連休中は大潮の影響で干満の差が大きく、潮干狩りに適しているとされるが、吉野川河口まで貝毒が広がる徳島県は、シジミの採取を控えるよう求めている。大阪府貝塚市の二色の浜公園では、貝毒対策で約10年前から入園者が採取したアサリを回収し、土産用に九州など安全な産地の貝と交換している。二色の浜観光協会の桝谷忠明取締役は「早く自分で取った貝を味わえるようになってほしい」と祈るように話した。