さいごのかぎ / Quest for grandmaster key

「TYPE-MOON」「うみねこのなく頃に」その他フィクションの読解です。
まずは記事冒頭の目次などからどうぞ。

【過去投稿サルベージ】ミステリはベルンを殺せない/明日夢自殺の可能性

2010年12月07日 11時47分50秒 | その他の推理
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●再掲にあたっての筆者注

 このブログは、「うみねこ公式掲示板」に投稿した記事の再掲をメインコンテンツにしていますが、掲示板に投稿したものの、ブログには採録しなかった文章がいくつかあります。
 それらの多くは、ブログに保存するまでもないなと(当時)思えたものや、あるいは特定の人に向けたリプライ記事で、文脈がないと理解しにくいものです。

 そういうものの中から、いくつか閲覧の意義がありそうなものを拾ってきて掲示することにします。

 世間話のパートなど、ノイズになりそうな部分をカットし、文脈が必要なものは注釈を書き加えます。今回は2記事拾ってきました。



  ×  ×  ×



■ミステリはベルンを殺せない/明日夢自殺の可能性
 筆者-初出●Townmemory -(2010/10/29(Fri) 20:45:37)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=55301&no=0 (ミラー
 Ep7当時に執筆されました]

●再掲にあたっての筆者注
 Ep7発表後の記事です。
Ep7をほどく(6)・ベルンの動機、読者の動機」「Ep7をほどく(11)・そしてアンチミステリーへ」の関連記事です。内容について質問があったため、これに補足したものです。

 以下が本文です。

     ☆

 こんにちは。さしあたり、ふたつ話題にリプライしますね。

 ウィルがベルンカステルのミステリーをファンタジーに変えられなかった理由は、ウィル本人がミステリーの中にいる人だからです。とわたしは見ています。

 彼の必殺技(と推定される)ヴァン・ダイン20則って、「ミステリーを成立させるための」「ミステリー内部の」取り決めごとですものね。

 ベルンはミステリーの人(と、おぼしいの)ですから、ベルンの真相はミステリーとしてちゃんと成立しているのだろうと推測されるのですね。

「ヴァン・ダイン20則を武器にして戦う」ということは、
「おまえの推理は(規則に違反しているから)ミステリーとして成立していないぞ!」
(つまり個人的なファンタジーにすぎないぞ!)
 という戦い方なのだろうと推測されます。

 この戦い方は、ベルンが、
「それについては、これこれこうだから、20則に違反していないわ」
(つまり、ファンタジーなどではなく、整合したミステリーなのよ)
 というふうに、全部説明することができれば、完全に迎撃することができます。
 おそらく、ベルンは全部のくさびを迎撃することができたんでしょう。だから、ウィルの駒をベルンがころんと倒して、ゲームエンドになった。
 という解釈です。

 たぶん、ベルンの真相は、ミステリーとして高いレベルで成立しているので、ミステリー内のモノサシを使ってハタンさせるのは難しいのでしょうね。

 Ep5で、ヱリカのミステリーを戦人がハタンさせることに成功していますが、このときの戦人は、
「魔術師になって、自分で赤字を使えるようになり、その赤字を使って推理をハタンさせる」
(根拠や証拠を提示する必要がない、という特権を手に入れる)
 という方法を使いました。

 根拠や証拠を出す必要もなく、何が真実かを口で言うことができるなんて、そんなのミステリーじゃありません。魔法です。魔術師になるだなんてファンタジーです。
 ヱリカのミステリーを打ち破ったとき、戦人はファンタジーの人だった。つまりファンタジーはミステリーを打ち破れるらしい……という実績があります。

 どうもですね、ミステリーでミステリーを殺すのは難しいっぽいです。

 ミステリーの外にあるもの、「ミステリーじゃないもの」を武器にしたとき、ミステリーを殺せるのかもしれない、です。

 では、ベルンのミステリーを倒せる武器とは何なのか……。
 というのが、当シリーズのラストに出てきます。めげなかったら最後まで読んでみて下さい。


 もうひとつ。どうして留弗夫は霧江と即座に入籍したのか。戦人が激怒するのはあたりまえじゃないかというお話について。
 じつは、これに関連する話題を「Ep7をほどく」シリーズのラストのエントリにいったん書いたんです。
 が、文字数の都合でカットしちゃいました。
(ブログの文字数制限が一万字なので、それに納めるのが目標なんですね。このブロックを切ったらちょうど一万字くらいでした)

 たいした話でもないんで、そのままお蔵入りにしようと思っていたのですが、良い機会なので掘り起こしてきました。以下に掲示するのがそれです。
 こんな感じでよろしいでしょうか。


●明日夢は自殺かもしれない?

「九羽鳥庵ベアトから生まれた戦人」を想定する場合に限る話なんですが、ひょっとして明日夢は自殺した可能性があるんじゃないかな。

「明日夢は俺が殺したのか、いつから殺していたんだろう」
 みたいな留弗夫のセリフ(Ep7)をきいたときに、あ、と思ったんですが。

 留弗夫は明日夢の喪があけるのを待たずに、霧江と籍を入れます。喪があけるのを待ってから籍を入れれば、対外的にもまずくないし、戦人と関係がこじれきることもなかったのにね。どうしてそれができなかったんだろう。
 縁寿のことを思ったからかな……。

 想像上の話ですが、
 留弗夫にはひょっとして、「たとえ一時のことであっても、子供を非嫡出子の状態にしたくない」という信念みたいなものがあったのかもしれない。

 もしくは、縁寿が非嫡出子になった場合、母の籍に入って「須磨寺縁寿」になりますね。
 須磨寺家に何か大問題があって、「どうしても縁寿を須磨寺籍に入れたくなかった」みたいな事情があるのかもしれません。

 そのどちらでも、それ以外でもいいのですが、とにかく、そういうやむにやまれぬ事情があったと仮定します。

 軽くおさらいですが、この話の前提は、
「金蔵の隠し子が崖から落ちて一命をとりとめ、留弗夫に預けられる。留弗夫はこの子を金蔵への人質にしようと思って、赤ちゃんを育てる。それがのちの戦人。明日夢は赤ちゃんの母親役をつとめる条件ではじめて留弗夫と結婚できた」
 みたいな話です。

 明日夢の心のなかに不安はありながら、それなりに楽しい家庭を、留弗夫・明日夢・戦人で築いていた。
 戦人は留弗夫に似てやんちゃだ。
 そして留弗夫の望み通り、優しい母親になつききっている。この状態を作らねばならないので、留弗夫は冷たい霧江を母役に選べなかったのです。

 そんなある日、明日夢は知ってしまう。留弗夫が霧江と浮気していて、子供まで出来てしまったことを。
 明日夢は、留弗夫を恨む。そして、復讐したいと思う。
 だから、自ら死ぬ。

「夫が浮気したから、それで世をはかなんで、妻が自殺した」
 ……というようなストーリーラインにしか見えないカタチを、明日夢は意図的につくるわけです。

 留弗夫は先に仮定したような「何かの事情」で、即座に霧江と籍を入れる。その「何かの事情」を明日夢はあらかじめ知っていた。
 そうなったら、母親っ子で一本気な戦人は、「母さんのこと全然愛してなかったんだな! ずっと裏切ってたんだな!」と激怒して、留弗夫との関係を著しく悪化させるはず。明日夢はそれを読んでいた、と考えるのです。

 何しろ、それが原因で母が自殺しているのに、留弗夫はそれを悔やむそぶりをまったく見せず、むしろこれは好機とばかりに愛人と籍を入れ直すわけですからね。
 これは息子が激怒しなかったらそっちのほうがおかしい。

「お父さんと何かあったら、母方の実家に逃げ込みなさい」

 とでも、あらかじめそそのかしておけば完璧かもしれません。

 そんな状態になったら、留弗夫は、「戦人をたてに、金蔵を操る」なんてどころの話じゃなくなります。つまり明日夢を巻き込むことで成り立っていた留弗夫のもくろみは、明日夢を裏切ったせいでご破算になるのです。
「これも私を裏切ったからよ」
 という命がけの復讐だったのかも……。というようなことを考えると、これはもう「留弗夫が明日夢を殺した」が文句なく成立です。

 ということを考えていたんですが、前提が成り立たなかったら成り立たない話です。ご参考までに。



  ×  ×  ×



■後期クイーンは全知の神を殺す
 筆者-初出●Townmemory -(2009/07/04(Sat) 17:39:06)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=28146&no=0 (ミラー
 Ep4当時に執筆されました]

●再掲にあたっての筆者注
 Ep4当時のかなり古い記事です。赤字関連ですので覚悟して下さい。
 赤字が真実であるのなら、赤字を言おうとした戦人を言葉に詰まらせた「全知者」がいることになり、そのような存在はすでにしてファンタジーではないか、それとも竜騎士さんを全知の神として割り切って考えるべきなのか。という議論へのリプライです。基本的に賛成しつつ自分の考えをのべたものです。

 末尾の「独り言」は、「ベアトリーチェが宣言する赤字は、客観的なものである」という主張とそれに対する疑問が周囲で議論されていたので、それについての小さな言及です。

 以下が本文です。

     ☆

 作者は全知の神である、という考え方は、素朴かつ伝統的なものですから、ファンタジー設定をつきつめなくても、素のままで主張できるようにも思えます。

 でもですねぇ……。わたし視点からですとねぇ……。

 作者が「これが真実です」と提示する。
 それが真実として通用するかどうかは、わたし(ユーザー)が合意するかどうかによる。

 結局、
 ベアトリーチェの主張を、戦人が認めるかどうか、という話が、
 作者の主張を、わたしが認めるかどうか、というふうに、
 レイヤーが移動するだけで、中身おんなじなんですよね……。

 この作品、何を考えてもここに行き着くんですが、
 やっぱ「後期クイーン問題」だと思うんです。
(ここでの後期クイーン問題は、竜騎士07さんが使っている定義に準じます)

 エラリィ・クイーンは、読者への挑戦状と称して、「推理に必要な手がかりはすべて提示された」と宣言します。
 作者が全知の神ならば、この宣言に疑う余地はありません。
 ということは、未知の証拠Xを、想定する必要はない。
 ということは、「後期クイーン問題」は、問題として検討されることができません。
「推理に必要な手がかりはすべて提示された」という神の赤字に「合意しない」人がいるところから、「後期クイーン問題」は発生しているのです。
 探偵エラリィは作者エラリィから後期クイーンされるかもしれない。作者エラリィは未来の作者エラリィから後期クイーンを食らうかもしれない。
 この条件は竜騎士07さんもまったく同じです。というか、自分もこの条件下にあると、ご本人が宣言してらっしゃいます。
 ちょっとこの条件で、作者を「全知の神」「疑う余地のない存在」と見なすのは難しいですね。

 結局、わたしたちがやっているのは、「赤字が真実でないことを証明する未知の証拠X」が存在するかどうかの検討で、その証拠Xが存在しないという保証は、作者にすら不可能なのです。
 しかしもちろんその逆も言えてしまうわけで、なんというか、ときどきむなしいです。


 ところで、以下、何の文脈とも一切関係ない独り言を言います。
 マスターキーが5本しかないという現実は、ベアトリーチェが目で見て、脳で理解して、口で言及した段階で、彼女の主観的知覚、主観的認識、主観的言及となる。魔女も、神すらも含めた、われわれ意識を有するすべての存在は、主観を通さずに実現象をとらえることは決して出来ない。



  ×  ×  ×



■目次1(犯人・ルール・世界設定)■
■目次2(碑文・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■
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4 コメント

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Unknown (ポチ)
2010-12-10 15:06:51
>>Ep5で、ヱリカのミステリーを戦人がハタンさせることに成功していますが、このときの戦人は、
「魔術師になって、自分で赤字を使えるようになり、その赤字を使って推理をハタンさせる」
(根拠や証拠を提示する必要がない、という特権を手に入れる)
という方法を使いました。
根拠や証拠を出す必要もなく、何が真実かを口で言うことができるなんて、そんなのミステリーじゃありません。魔法です。魔術師になるだなんてファンタジーです。
 ヱリカのミステリーを打ち破ったとき、戦人はファンタジーの人だった。つまりファンタジーはミステリーを打ち破れるらしい……という実績があります。

戦人は「この物語は解けるもの(ミステリー)だ」と信じて、「ベアトは解いて欲しいと願って、解けるようにこのゲームを生み出した」という赤字と、ノックスの十戒というミステリーとしての手掛かりを元に、あくまでミステリーの立場から、謎の深奥に至りました。
魔術師や領主の地位獲得、金字の使用などはその結果ですし、そこらへんは幻想描写による上書きと同じです。本当はきちんと根拠や証拠を提示したのかもしれません。ラムダに「それ以上語るのは野暮」と止められていますしね。
戦人はミステリーとして答えに辿り着き、ミステリーでヱリカを退けたわけです。ファンタジーでミステリーを打ち破ったわけではありません。
(もっと厳密に言うと、べつに打ち破ったわけでもありませんが。不必要な遊びから産まれた隙を突いて推理の修正をさせた、ぐらい)

この後の自説EP7をほどくに繋げるためなのか。それでもちょっと無理な誘導の仕方かなぁと。、
いつもTownmemoryさんのご高察は面白く拝見させて頂いていますが、たまにこのような我田引水っぷりが気になってしまいます。
返信する
ポチさんへ (とっくり)
2010-12-11 09:14:31
赤字やノックスを使わないのも、赤字やノックスを知って真実に辿り着いたと言える。だから、ミステリーで真実に辿り着いたとは限りないのでは?
返信する
Unknown (Unknown)
2010-12-22 15:30:19
こっちではポチ君の間違いを誰も指摘してないようだから.

幻想法廷は人間の赤を採用しないというルールがあったろ.
エリカ説を否定するために"金蔵はゲーム前に死亡している""死体はすべて移動されてない"という赤字を戦人側が使ったろ.
その赤字は根拠提示なしで有効になったろ.
エリカは「戦人が人間だったら赤字無効だからラムダが黙っててくれればすんだが.戦人が魔術師になって赤を使えるようになったせいで負けた」
みたいな発言したろ.
あとはわかるな.

ポチ君は明らかに原作を読んでないし.ここの推理もまともに読んでなく.脳内幻想で批判を繰り返し.あだからみんなまともに関わらないわけか.
返信する
Unknown (Unknown)
2010-12-22 16:25:20
ああ・・・刺激しないように皆で無視していたのに・・・。

「本当はきちんと根拠や証拠を提示したのかも」という仮定をもとにして、他人の推理を我田引水と言う相手に何を言っても無駄ですよ。
返信する

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