さいごのかぎ / Quest for grandmaster key

「TYPE-MOON」「うみねこのなく頃に」その他フィクションの読解です。
まずは記事冒頭の目次などからどうぞ。

『Land of the golden witch』の大ネタって何?

2009年12月30日 05時49分19秒 | ep5
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


『Land of the golden witch』の大ネタって何?
 筆者-初出●Townmemory -(2009/12/30(Wed) 05:32:47)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=38082&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注

 公式掲示板で開催されている推理集計企画への回答です。表題のとおりの設問です。

 このエントリは、当初ブログに再掲するつもりはありませんでした。あまりに我田引水、自分の推理に都合良くものごとを解釈しているからです。
 でも、書いてみたら、少し気に入ったのと、この日(12月30日)に発売されるep6で否定されて、壮大に自爆してみるのもおもしろいかもしれないと思いました。

 以下が本文です。


     ☆


 ep6、今日発売ですね。このどさくさまぎれに我田引水な回答をしてしまいたいと思います。

> 議題:『EP5に入っているネタで、戦人にもヱリカにもベルンにも議題に挙げられていなく、ユーザからも話題にあがっていないような、謎がありましたら回答お願いします。(複数回答3つまでO.K.)』
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=37877&no=0

『Land of the golden witch』で企画されて、いちどお蔵入りになって、ep5で部分的に実装された「極悪な大ネタ」とはなにか、という設問ですね。

 わたしは現状、いわゆる「ep5狂言説」に「不」賛同の立場です。賛成しないってことです。そういう立場の人が、自分に都合のいい意見をこれから述べるものだと思って下さい。


『Land of the golden witch』に関しては、作者からこんな言及があります。


KEIYA:今発表したとしても、これまでのシナリオのなかで最高の難易度になるのでしょうか?
竜騎士07:うーん。今の段階だと、ヘタすると思考停止どころか、真相だと思われかねません。『ひぐらし』で例えれば、『目明し編』のない『綿流し編』みたいな。「魅音が犯人なんだ」で終わってしまうくらい致命的です。
――それを危惧して一度『Land of the golden witch』を止めたのでしょうか?
竜騎士07:恐らく第3話で発表していたら、その段階にも至らない方が続出したと思います。

『【うみねこEP4対談】謎解き部と物語部を両立させられたらいいなと思っています(電撃オンライン)』
 http://gameinfo.yahoo.co.jp/news/dol/147660.html


 ここでの「今」とは、ep4発表直後のこと。
 ここで言及されていることをまとめると、

・ep4直後の段階で『Land of the golden witch』を公開した場合、真相でないものを真相だと思われてしまうだろう。
・ep3で『Land of the golden witch』を発表していたら、「真相でないものを真相だと思う」段階にすら至らないだろう。

 以上のような要約ができるように思うのです。


 つまり、こういうことではないでしょうか。

「『Land of the golden witch』とは、真相ではないものを真相だと思わせる仕掛けである」

 もう少し踏み込むと、こうではないか? と推理しました。

「もっともらしいウソの真相を用意し、ユーザーがそこに行き着くように誘導する。ユーザーはその真相に満足するので、本当の真相は覆い隠される」


 作劇上の展開方法からいっても、

 ep1:事件を起こす。
 ep2:事件の真相にたどり着けないように隠蔽工作をする(幻想描写)。
 ep3:ニセの真相を提示し、ほとんどの人がそこに行き着くように誘導する。

 というのは、展開としてきれいです。
 当初の構想では、このような流れが想定されていた。

 しかしep2でほとんどのユーザーが屈服してしまう状況を見て、
「このままep3をやっても、『ニセの真相』にすら気づいてくれないかもしれない」
 という危惧が生じた。
 そこで、
「ニセの真相を提示し、ほとんどの人がそこに行き着くように誘導する」
 というプランは、お蔵入りになった。

 そんな形を想像してみると、わりあい、整合感があるんですが、どうでしょう。

     *

 さて……。
 ep5には、『Land of the golden witch』のネタが実装されたそうです。

 ep5では、ほとんどの人が、「狂言説」を想定している、という実態があります。


 ここからが、わたしに都合のいい自分勝手な言い分なのですが、
「ほとんどの人が狂言説に行き着くように誘導がなされている」
 としたら、どうでしょう。
 ドキッとしませんか。

 ep5は、序盤で、
「死んでいるはずの金蔵が夏妃とお茶を飲んでいるのはなぜか?」
 という疑問に対し、
「夏妃と使用人たちが『金蔵は生きている』ふりをしているのだ」
 という解をあたえます。つまり、わざわざ練習問題を解いてみせるのです。

 この流れのまま、延長上で推理すれば、
「絵羽や留弗夫たち親族が、『殺人事件が起こった』ふりをしているのだ」
 という発想には、容易にたどり着きます。


 このこと自体が、意図されたデコイ、トラップだとしたら、「極悪」で「凶悪」で「有毒」じゃないでしょうか。


 ベルンカステルは幻想法廷で、
「アクロイドが誰もいなくなったと思ったら……」
 と、つぶやきます。

「アクロイドが誰もいなくなったと思ったら、○○○だった」
 ちょっと古典的ミステリーに詳しければ、○○○の中身は、とあるミステリーを容易に想定できるのです。
 そして、その「とあるミステリー」のオチは、「狂言説」を裏打ちするような内容なのです。

 けれど、そのことがトラップかもしれない。
 この「とあるミステリー」の解答編は、
「名探偵が、2種類の異なる推理を提示する。名探偵はどちらが真相なのか決めかねるので、第三者に判断をゆだねて決めて貰おうとする」
 という趣向で行われるのです。
 つまり、夏妃犯人説と、戦人犯人説が並列に存在する、あの幻想法廷と相似形をなす。
 幻想法廷の状況をかんがみて、より一致感のある解釈は、後者だと思うのです。

 もしベルンカステルが、後者の意図で「アクロイド発言」をつぶやいたのだとしたら。前者の解釈、「狂言説を裏打ち」はどうなるでしょう。

 これが意図的なひっかけだったら、おそろしい。



■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
■目次2(カケラ世界・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■


■関連記事
●EP5推理

 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩
 ep5初期推理その6・戦人の謎
 ep5初期推理その7・ノック問題
 ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜
 【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?
 『Land of the golden witch』の大ネタって何?
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【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?

2009年12月26日 16時05分32秒 | ep5
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?
 筆者-初出●Townmemory -(2009/12/26(Sat) 15:57:19)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=37873&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注

 ep6発表前に、言及できることはできるだけ言及しておこうキャンペーンです。
「ep5ヱリカ犯人説」の延長戦です。
 ひぐらしネタバレありです。

 以下が本文です。


     ☆


 竜騎士07さんはインタビューで、ep5の第二の晩以降は正しく解けてれば推測可能だ、とおっしゃっています。

ただ「答え」を知っている人にとっては、第二の晩以降の展開は推測可能なはずです。

『うみねこのなく頃に散 Episode5 真相解明読本』双葉社 p108

 わたしが彼の意図する「答え」に到達してるかどうかはともかく置いといて、自分だったら第二の晩以降をどのように推測するかということを考えてみました。


 前提として、あまり賛同者のいない「古戸ヱリカ犯人説」にたちます。(この段階で読むのをやめる人が多いだろう、と推測)(←と書くことにより、このまま読み進める人が多少増えるだろうと目算)(←これが「観測が現実に影響を与える」の実例)

 古戸ヱリカ犯人説の詳細は、以下の目次の「ep5推理」の項目をごらんください。
 リンク→ ■目次(全記事)■




 さて、わたしは以前、こんな書き込みをしたことがあります。読んでて覚えてる人がいるかな?

「事件の日の六軒島に、“住み込み家庭教師・鷹野三四”という登場人物がいたとしたら?」

 わたしの想像では、「この屋敷のどこかにいる誰かは殺人犯だ。自分も狙われてる」と判断した瞬間、彼女は屋敷にいる全員を皆殺しにかかるのではないかな?
 全員殺せば、その中には犯人・犯人グループがいる道理です。自分の安全が確保できれば良いわけで、べつに犯人特定の必要なんてない。
 あとは、一晩かけてゆっくりと、自分が罪に問われないようにする言い訳と、その証拠を捏造すれば良い。
 犯人の望んだ真相ではなく、彼女が捏造した真相が「真相」となるのです。ベアトリーチェはこれに異議をとなえられない……。

→ 「ラムダデルタはなぜベアトリーチェに強いのか」

 これとほとんど同じ発想を、古戸ヱリカは持ってるのじゃないか、というのが本稿の趣旨です。
 つまり、「古戸ヱリカ犯人説」を採る場合、ヱリカは第三の晩以降も殺人を続け、自分以外を皆殺しにして、そのあと、自分につごうのいい証拠をゆっくりと作り上げて、警察に保護を求めるのだろう、という考えです。


 ep5のなかに、すごく気になる地の文があるのです。夏妃がクローゼットの中にもぐり込みに行く直前の客間のシーンです。

 ………今さらではあるが、いや、いつものことか。
 例によって、警察への電話は通じない。
 夏妃は警察が来ると言っているが、それは正しくないわけだ。
 正確には、明日、迎えの船が来てくれて、その船の無線で警察へ通報できる、が正しい。
 まぁ、どうせ、……そこまで全員が生き残ることを許しはしないのだが。
 …くすくす。

 この文、問題にした人いるかな?
 これ地の文なのです。つまり、だれかの思考を、地の文がトレースしているのです。
 これ、だれの思考だろう?
 あえて、だれの思考なのか、わからないようにするために、地の文にしてあるのです。


 3つほど、ポイントがあります。

 ひとつは、警察への電話が通じないことを「いつものこと」「例によって」と認識している。
 ふたつめには、「全員の生存を許さない」と認識している。
 みっつめは、この客間の場面に同席しているか、もしくはこの場面を見聞きできる立場にある。

 3つの可能性が考えられます。

1.これはラムダデルタかベルンカステルの内面のことばである。
 彼女たちは上位世界からこの場面を見ることができる。これまでのエピソードを知っているので、電話が通じないことを知っているし、たいてい皆殺しで終わることを知っている。(この場合、全員の生存を「状況が」許さない)

2.これは、ループ記憶を所持した「真犯人」の内面のことばである。
 ここでの「真犯人」は、ep1~4から連続して殺人を犯してきた、一連の計画殺人の犯人のこと。電話の不通を「いつものこと」と認識するためには、古手梨花と同様のループ記憶を所持している必要がある。この人物は、客間に同席している誰かであるか、もしくは盗聴器などで状況を盗み聞きしている。
 この人物は当然、全員殺害の意図を持っているし、屋敷消滅に至るメカニズムを知っている蓋然性が高い。

 以上の2つが、ふつうに考えられる可能性なのですが、ここであえて、恣意的に、3つめの可能性を提示してみたいのです。

3.これは古戸ヱリカの内面のことばである。
 古戸ヱリカはこの場面に同席している。
 古戸ヱリカはいくつもの事件に遭遇してきた「探偵」であり、また熱心なミステリー読者である。よって、クローズドサークルで電話が不通になるという「パターン」を「例によって」と認識できる。
「くすくす」という笑い声は、精神的に幼い女の子の印象が強い。
 そして彼女は、このあとも殺人を続け、自分ひとりになるまで殺し続けるつもりである……。


 古戸ヱリカはep5になって初めて登場してきたのですから、ep1~4の犯人ではない、と推測できます(ヱリカ=人間ベアト説もあるけどね)。
 ep1~4までの本来の犯人が用意した「深夜24時の爆弾」(推定・もしくはそれに類する天災)の存在までは、いかにヱリカでもさすがに察知しようがないはずです。
 よって、ヱリカ説の場合、爆弾が爆発するから誰も生存できないよ、という発言では、ありえない。

 ならば、「全員が生き残ることを許しはしない」という発言は、そのままの意味。「私が殺すから」という意味に、しぜんになってきます。


 では、なぜ古戸ヱリカは、島の人間を皆殺しにしたいのか。どうしてそうしなければならないのかという疑問が生じます。
 それはこうじゃないかな。
「警察の専門的な調査が行われれば、夏妃が犯人でないことがあっさりわかってしまうから」

 夏妃が逮捕されて、警察の尋問を受け、現場検証がおこなわれる。
 夏妃はもちろん犯行を否認します。
 警察は、
「こんな針を通すような犯行、できっこない」
 という結論にたどりつきそうに思うのです。
 たまたまがいくつも積み重ならないかぎり、あんな殺人は成り立たないのです。ゲストハウスを通行できた、偶然の1時間とか。あらかじめクローゼットに隠れていたその部屋が、たまたま秀吉の休息部屋としてあてがわれるとかね。

「熊沢の部屋の封印は、ヱリカが確認するより前に、熊沢自身がドアを開けることによって破られていた」ことも、明らかになるでしょう。(→ 「ep5初期推理その4・第一の晩」
 これが明らかになるだけで、「夏妃は犯行可能な唯一の人間だ」という前提が、破れます。

 ついでに、わたしは、「ゲストハウスのすべての窓に封印をした」というのを、疑っています。
 誰にも見つからずに、そんなこと、可能?
 ヱリカがそう主張してるだけじゃないかな。
 だとしたら、警察が来たら、そのウソはあっさりわかってしまいます。いや、警察が来るまでもなく、ちょっとばかし時間が経てば、誰かが「封印ってのは、どんなものだろう」と確かめる可能性があります。

 そういった事態になったら、格好よく犯人を告発した名探偵の威光が、だいなしです。
 推理が外れてたってことですものね。むしろ冤罪をつくっている。
 名探偵転じて、へぼ探偵。
 それは、ヱリカが断じて避けねばならないことです。

 そのための唯一の方法は、よけいな証言をしそうな人間を、ひとり残らず殺すこと。
 そして自分が、「唯一の生存者」となること。
 そして自分好みの「物語」を編んで、捏造した証拠といっしょに警察に提示すること。

 そこまでキチッとやっていたら、ヱリカは仮の魔女認定じゃなくて、正式の魔女認定がなされてたんじゃないかなー、という感じも、少しします。


 具体的に、どういう犯行になっていくかというのは、わりに簡単なんです。
 というか、誰を犯人に想定するとしても、かなり似た感じになるんじゃないかな。

 まず、場の状況が、「夏妃が犯人だ」という流れになっていますから、どこかに夏妃を閉じこめておこう、という話になりそうです。
 たとえばボイラー室に夏妃をほうりこんで、ふたつの扉のノブを外側から紐でグルグルにくくってしまえば、即席の牢屋のできあがりです。園芸倉庫でも良いですね。
 戦人が「自分犯人説」をとなえて、ふたつの犯人説が両立するのならば、戦人も閉じこめ対象です。

 犯人候補を閉じこめてしまえば、みんな安心して、油断します。各自の部屋にひきとって休息を取ろう、とかいった行動も、平気でおこなうようになります。
 そんなふうに各個が孤立したところを、ひとりひとり殺していくだけです。

 念のため、「あなたが犯人でないことは実はわかってました、助けに来ました」なんて調子のいいことを言って、夏妃を別室にかくまっておく、といった布石を打ってもいい。つまり、「夏妃が逃走して、殺人の続きを始めた」という状況をつくっておくわけですね。
 夏妃には、自殺に見えるようなかたちで死んでいただきます。脅して自白書を書かせても良い。日本の警察は自白に弱いですからね。


 以上が、「古戸ヱリカ犯人説」にもとづいた場合の、第二の晩以降の展開再現図でした。
 良かったら、みなさんも、それぞれの推理に基づいて、「第二の晩以降の再現」をしてみたらどうでしょう。けっこうやってみたらおもしろいです。ep6で結果が出ちゃう可能性があるから、今のうちかもですよ。





●以下、我田引水なフカシ
 ep5に実装された「Land of…」の大ネタって、「ほとんどの人が狂言説にたどり着くように誘導する」なんじゃないかな……と勝手なことを言ってみる。ぼそり。



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ep5狂言説あれこれ3・南條は誰の味方?

2009年09月19日 10時11分51秒 | ep5
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ep5狂言説あれこれ3・南條は誰の味方?
 筆者-初出●Townmemory -(2009/09/19(Sat) 10:04:12)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=32771&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
「ep5は夏妃を陥れるための狂言」、というメジャーな推理について、考えるシリーズです。
 六軒島で何を計画するにしても、死体が出る限り、南條に焦点が当たることは避けられない、という感じです。

 ep5狂言説あれこれ1・ノック狂言説
 ep5狂言説あれこれ2・夏妃を陥れるつもりはなかった?

 以下が本文です。


     ☆


 ep5狂言説を検討中です。絵羽夫妻、留弗夫夫妻が、夏妃に金蔵死亡を認めさせるため、ウソの殺人事件を演出している、という推理について、ここでは扱います。
 ちなみに、はっきりした結論は出ずに終わりますので、期待しないで下さい。



 南條医師は、ゲストハウスいとこ部屋で殺された4人の検死をしています。

 ということは、狂言側は、南條を抱き込んで味方につけない限り、狂言を成立させることができません。
 ところが、南條という人は、夏妃に味方して、金蔵の死亡を隠蔽しようとしてくれている人です。
 実際、書斎の攻防では、夏妃有利の証言を必死になって発言していました。

 つまり、この推理では南條は、
「夏妃の味方をして、金蔵の死を必死で隠そうとしているが、同時に金蔵の死を暴く企みにも荷担している人」
 ということになってしまいます。ちょっとヘンです。うーん。

 たとえば、南條が、狂言側からカネを積まれて寝返ったとします。
 その場合、わざわざ検死をいつわらなくても、「私は知っています。金蔵さんは死んでおりますぞ」で良いのです。
 カドを立てたくないのなら、書斎での攻防のときに、「夏妃さん、もう無理だ、あきらめましょう」くらいで丸くおさまります。
 でも、彼はそうしなかった。あくまで夏妃に協力したい心情があったように見える。
 だけど、もしそういう心情があるのなら、夏妃に対して、
「これこれこのような要請が、霧江さんたちからありましてな」
 くらいの報告はしてあげても良いはず。なのにそれもした形跡がない。

 いちばんひっかかるのは、夏妃がヱリカに告発され、日記をあばかれているあたりで南條の言う、
「私には夏妃さんの気持ちもわかるのです」
 みたいなセリフです。
 もし彼が、狂言殺人だと認識している、これが死んだフリごっこだとわかっているのだとしたら、これは言うはずないと思うのです。
 逆に「これはやりすぎです、いたずらの範囲を超えている!」くらい言いそうだ。
「気持ちがわかる」発言が出てくるためには、南條が、本当に殺人があったと認識しているか、もしくは本気で夏妃を陥れようとしているか、どっちかの場合しかありません。

 後者の場合は、これまで彼には、金蔵の死亡を発表するチャンスがいくらでもあったのに、そうしなかったのだから、彼は「夏妃を犯人にしてしまいたい」という願望を持っているとしか思えなくなるのです(「金蔵の死亡を認めさせたい」という願望ではなくて)。


 この矛盾は、なんとか解消しなければならないです。そこで、便利な「幻想描写」を想定するなどして、かわしていくほかなさそうです。

 たとえば。

1.南條が夏妃に協力している、というのは幻想描写。

 これは、「実は南條は金蔵が死んでることなんて知らなかった」というかわし方です。この場合、南條はつらっと、狂言に参加することができそうです。
「気持ちが分かる発言」の違和感はかわせませんが、そのくらいはまあ、いいことにします。その発言を幻想として消去してしまっても良いですね。


2.南條は実は死体を見ていない。見たというのは幻想描写。

 これは、「南條はまったく狂言には荷担していない」という組み方。そのために、「南條は死体を見ていないのに、殺人があったことを鵜呑みにした」というかわし方をしています。
 これで、彼は心情的には夏妃側に協力したまま、夏妃犯人説をうのみにすることができます。


3.南條はホンモノの死体を確認し、4人の死亡を確信した。

 これは幻想描写とは関係ない組み方です。狂言計画はあったけれども、それと同時に誰かの殺人計画も発動していて、4人は実際に殺された。
 朝方、南條は本物の死体を検死したのだから、殺人があったと確信しており、矛盾は生じない。そういうかわし方です。
 ただ、これだと、あえて狂言があったことにする必然性も失われてしまいますね。


4.南條は検死でウソを言った(死んでない人を死んだことにした)が、それは狂言チームに頼まれたからではない。

 狂言のあるなしに関わらず、これまでのエピソードで殺人を犯してきた「真犯人」はいるわけです。
 南條が「真犯人」の協力者であり、もし「死んだフリの人間に対し、死亡認定をせよ」という命令を受けていた場合、狂言側の思惑と、たまたま行動が一致します。
 南條は、霧江あたりから「子供たちが死んだふりをするので、死んだことにしてくれ」と頼まれる。
 南條的には協力したくはなかったが、たまたま行動予定が「真犯人」側の命令と一致していたので、結果的に、狂言に与するようなかたちになってしまった。


 それ以外には、南條には何かややこしい事情があって、
「彼は夏妃に同情し、金蔵の死亡を隠したいと思っているが、同時に狂言にも荷担している」
 という、「んもう、なんか知らないけどそういう理由でもあったんでしょお!」みたいな強行突破の手もあります。

 とにかく、「南條」をどう扱うかが、狂言説成立のひとつのキーポイントであるのは確かだと思います。



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ep5狂言説あれこれ2・夏妃を陥れるつもりはなかった?

2009年09月18日 10時03分13秒 | ep5
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ep5狂言説あれこれ2・夏妃を陥れるつもりはなかった?
 筆者-初出●Townmemory -(2009/09/18(Fri) 09:48:31)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=32722&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
「ep5は夏妃を陥れるための狂言」、というメジャーな推理について、考えるシリーズです。この路線、思った以上に細部の整合がむずかしいです。

 ep5狂言説あれこれ1・ノック狂言説

 以下が本文です。


     ☆


 これは、個人的にまだ採用できていない「ep5狂言説」を、自分が納得できるくらいに成立させてみよう、というこころみです。

 ここでは、
「留弗夫夫妻、絵羽夫妻、楼座が、子供たちを使って、『殺人事件があったフリ』という狂言を企てた。それは金蔵がすでに死んでいることを夏妃に認めさせることを目的としていた」
 という説について検討していきます。
 また、ここでは基本的に、赤字はまるごと鵜呑みにします。


●夏妃の濡れ衣はイレギュラーな事態か?

 さて、根本的なところから疑問に思うのですが、「金蔵の死亡を夏妃に認めさせる」ことを勝利条件だとした場合、
「夏妃を殺人犯に仕立て上げる」
 という詰め手は、有効といえるでしょうか。

 実際にヱリカが誘い水を向けていましたが、夏妃は、
「私はやっていません。きっとお父様が殺したのでしょう」
 と主張すれば、状況を切り抜けることができます。金蔵が殺したということは、金蔵は生きているということですから、夏妃は金蔵の死亡を絶対に認めないということです。
「夏妃を殺人犯に仕立て上げる」という詰め手は、「夏妃が絶対に金蔵の死亡を認めなくなる」という結果を容易に導きます。

 劇中では、金蔵に罪をなすりつけたくなくて、夏妃は追い詰められていましたが、それは夏妃という人が、たまたま非常識なまでに高潔だったからです。ふつう、陰謀というのは、こういう心理的不合理を前提としたりはしません。

 さて、そこで、
「夏妃を犯人にするつもりはなかった(シナリオにない事態だった)」
 というのはどうかしら、と考えてみました。

 絵羽、留弗夫たちの当面の問題は、金蔵の書斎を確かめさせてもらえない、ということでした。まず、書斎に押し入り、金蔵の不在を確認したうえで、夏妃を問い詰めれば、とりあえず事態は進展するのです。

 こんなシナリオだったら、整合しないでしょうか。
 まず、殺人事件が起こったことにする。
 金蔵に報告する・金蔵の安否を確認するという口実で、書斎の窓を破ることができる。
 蔵臼を拉致してあるので、最高序列者が絵羽になり、ガラス破りを阻止できる者がいない。
 金蔵の不在を確認できる。
 金蔵がすでに死んでいることを、夏妃に自白させる。

 夏妃が犯人として告発される、というところまでは、この狂言では、想定されていなかった。あくまで、書斎に押し入るところまでが目的だった。

 だって、よく考えたら、この推理ではいとこチームと楼座を、朝からひたすら別室にじっと待機させているわけで、これって、長時間もつような工作じゃないです。もって、午前中いっぱいってところでしょう。
 絶対、真里亞がぐずりだしますし、隠れているあいだはごはんだって食べられません。厨房を仕切っているのは郷田ですし、郷田は夏妃に忠誠を誓っている人ですから、抱き込めません。

 さて、そうだとして、この狂言は戦人の介入によって失敗に終わります。
 戦人が、「金蔵は窓から出て行った」ことにしてしまいましたからね。
 戦人がその行動を取るということは、彼は狂言にはまったく参加していない、知らされていない、と考えるのが妥当です。


 この推理には、ひとつ大きな問題点があります。
 この場合、狂言チームは、
「蔵臼を拉致監禁する」
 という条件が必要になってきます。
 そしてこれって、それ自体が犯罪を構成する行動です。

 つまり蔵臼はあとで、絵羽夫妻、留弗夫夫妻、楼座を、監禁罪で告発することができます。
 この行動は、誇張でもなんでもなく、
「蔵臼を拉致監禁して、財産の強奪を図った」
 以外のなにものでもありません。

 蔵臼が金蔵の財産を横領していた証拠がうまく出てくれば、もしかして交渉により、相殺してイーブンに持ち込めるのかもしれませんが、出てこなかったら狂言側は一方的に犯罪者です。
 しかも、金蔵の死体がちゃんと出てくれば良いですが、出てこなかった場合、夏妃は、
「あれは脅されて、お父様は死んでいると言わされました」
 と、あとで前言を撤回してしまえば良くなります。

 とりあえず狂言説は、この部分を何らかのかたちで回避する必要がありそうです。


 続き→ ep5狂言説あれこれ3・南條は誰の味方?



■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
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ep5狂言説あれこれ1・ノック狂言説

2009年09月10日 07時14分32秒 | ep5
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ep5狂言説あれこれ1・ノック狂言説
 筆者-初出●Townmemory -(2009/09/10(Thu) 06:58:15)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=32289&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 周囲を見渡して、ep5は夏妃を陥れるための狂言、という推理が主流っぽく感じられたので、少し自分なりに整えてみました。でも、メインで押していきたいのは、やっぱりヱリカ犯人説です(これを本気で押してる人は、ネット上にはいないっぽい……?)。

 以下が本文です。


     ☆


●アクロイドが誰もいなくなったと思ったら

「アクロイドが誰もいなくなったと思ったら」に続くことば。これは「オリエント急行だった」で良いと思います。
(たぶん既出のアイデアですよね)
「アクロイド殺し」も「そして誰もいなくなった」もアガサ・クリスティーですから、そのあとに続くのもクリスティー作品だ、というのは順当なアイデアです。

 オリエント急行殺人事件は、ポアロが謎解きをする際、2種類の推理を披露します。ふたつの推理は結論がまったく異なっており、自分ではどちらが正しいか決めかねるので、ここにいる第三者に決めてもらうことにしましょう……そんなポアロの提案から、謎解きシーンが始まります。
 つまりオリエント急行は、1個の事件に対して、2通りの真実が提示される物語なんです。その点において、幻想法廷の展開と相似形です。ベルンカステルがこのセリフを発言した状況と一致します。

 いくつかのブログで、やはりオリエントからの連想で、「オリエント急行」の大オチとep5の真相はほぼ同一なんじゃないかという説を見ました。自分にはその発想はなくて、おお、凄い、ナイス発想! と思ったけれど、じっくり考えて、わたしはその説は採らないことにしました。理由は、その説にもとづく物語を、わたしは「うみねこ」には望まないからです。要は趣味です。


●狂言説あれこれ

「うみねこ EP5 推理」くらいのキーワードで、わりとよくブログ検索をするんですが、ep5は、夏妃に金蔵死亡を認めさせるために親族会議が狂言をしている、という推理がわりと支持されているような印象です。

 夏妃を殺人犯に仕立て上げ、精神的に追い詰めた。その過程で、「金蔵はもう死んでいる」と認めさせようとした。金蔵が死んでいれば、親族たちは、遺産の分配にあずかれる。
 そういう流れですね。

 全員が口裏を合わせることで、「金蔵が生きている」という真実を作り出そうとした夏妃が、まったく同じ手法で「夏妃が犯人だ」という真実を作り出されることで逆襲を受ける。この流れは物語の構図として美しいです。これに異を唱える人はよっぽどへそまがりでしょう(わたしのことですが)。

 へそまがりで結構! と居直るのも良いけれど、一応いろいろ考えてみました。


(それにしても、ヱリカ犯人説で推理を構築している人が、検索してもいっこう見あたらなくて、自分ってまるで幻のポケモンみたいだなとか思いました。レアリティですねー、ということで自分を納得させました)


●ノック狂言説

 狂言説は、おおまかに2種類に分類できると見ました。

1.ノックは実際にあったが、殺人は狂言。
2.ノックも狂言で、殺人も狂言。

 ノックが実際にあって、魔女の手紙と指輪が外部からもたらされたのか、ノックすらも狂言なのかという違いかと思います。
「ノックは狂言」という説は、そもそも、赤字すり抜けの一方法として出てきたアイデアです。赤字を見ていくと、誰にもノックは不可能だったとしか思えない。ならば「そもそもノックはなかった」のではないか、というアイデアですね。

 それで何が変わってくるのかというと、「指輪の出どころ」が変わってきそうです。

「ノックなんてそもそもなかったが、親族会議が口裏を合わせてあったことにした」場合、なぜそんなことが必要だったのか。

 それは、
「外部の、誰か知らない人物が、戦人に指輪をプレゼントしてくれた」
 というストーリーが欲しかったからです。

 本当に「ベアトリーチェを名乗る誰かがくれた」のなら、「ノックがあって手紙があった」なんていう口裏合わせは必要ないのです。
 指輪が手に入った状況を、そのまま正直に言えば良い。

 だから、ノックが狂言である場合、
「狂言参加者の誰かが、元から指輪を持っていた」
 という可能性が、きわめて高くなります。

「私、実は、こんなもの持ってるんだけど……」みたいなことを、誰かが言い出し、指輪を見せる。何故持ってるのかという何らかのやりとりがあったあと、
「これを親父様が戦人に渡しに来たことにしよう」
 というシナリオが思いつかれる。

 ベアトリーチェの手紙ではなく「金蔵の手紙」でいいじゃないかっていう感じがしますが、たぶん、筆跡ですぐ見破られるから、駄目なのでしょうね。
 筆跡をまねることはできますが、サンプルとして金蔵の肉筆原稿が必要ですし、まねて書くにはだいぶん時間がかかります。
 そこで「謎の人物ベアトリーチェの手紙」という、苦肉の策のようなアイデアが思いつかれ、実行される。謎の人物なので、見たことない筆跡でありさえすれば良い。

 以上のアイデアを採用するなら、狂言参加メンバーの誰かが、あらかじめ当主の指輪を持っていた。
 つまり、これまでのエピソードで「ベアトリーチェ役をやっていた人」が、狂言メンバーの中にいる。
 その可能性がだんぜん、高いです。この説を採用する場合、ゲストハウス組は、「ベアトリーチェの正体」疑惑から、ほぼ外しても良いんじゃないかな。

 というか、ベアトリーチェの手紙の文面を考案した人は、これまでの「魔女の手紙」を書いた人と同一人物であるとしか思えません。「顧問錬金術師」なんていう、なんともクリエイティブな肩書きは、普通の人には思いつきません。

 ノック狂言に参加したのは、
 絵羽、秀吉、留弗夫、霧江、楼座、紗音、嘉音、戦人。
 ここに、源次を加えるか加えないか、というところでしょうか。

     *

 ただ、わたしの印象では、「ノックはなかった」「ノックがあったのというのは戦人の当主継承を認めさせるための嘘」という説は、ちょっと採りにくいな、と思います。

 ノックが狂言だったとして、この狂言は、事態をほとんど進展させていません。つまり、詰め手としてほとんど無意味でした。けっきょくは、金蔵に会わせろ会わせないの水掛け論に戻っていました。
 狂言だったことがばれれば、それ自体が失点になってしまいます。

 それより何より、この場合、手紙やノックなんていうまわりくどいことをしなくとも、

「金蔵がこの客間に現れ、戦人をほめたたえ、おまえが当主だ黄金はおまえのものだと言って、指輪を渡して去っていった」

 このストーリーを全員で口裏合わせすれば良さそうなものなんです。

「金蔵本人が、戦人が新当主であることを認めた」という直接的な嘘を、つき通せば良い。
 蔵臼夫妻は、金蔵が存命であり、書斎にいると主張しているわけですから、この嘘は状況に整合します。これに反駁するには、蔵臼夫妻は、前言を翻して「書斎に金蔵はいない」という主張をしなければなりません。
 その主張を蔵臼がしないのなら、金蔵のお許しが出たことにして、平然と、黄金を分配すれば良いのです。

「お父様は『蔵臼がごちゃごちゃ言い出したら、いつでも書斎に連れてこい』とおっしゃっていたわ」

 なんていう、指し手も考えられます。この手を使うと、あとで狂言だったと告白しなければならないリスクがありますが(最終的には金蔵死亡の結論を導かねばならないため)、少なくとも「書斎に押しかけて中身を調べられる」という点で事態が進展します。


 つまり、ノック狂言は、狂言側にとって、最善手ではなさそうに見えるのです。霧江や絵羽といった頭脳選手がいるにしては、詰め手として甘い。
 それよりは、
「本当に謎の人物がノックをして、謎の手紙を置いていった」
 というほうが、より自然に感じられます。


(気が向いたら続きます。続かない可能性もあります)


 続き→ ep5狂言説あれこれ2・夏妃を陥れるつもりはなかった?



■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
■目次2(カケラ世界・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■


■関連記事
●EP5推理

 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩
 ep5初期推理その6・戦人の謎
 ep5初期推理その7・ノック問題
 ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜
 【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?
 『Land of the golden witch』の大ネタって何?
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ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜

2009年08月28日 00時19分35秒 | ep5
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ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/27(Thu) 17:43:21)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31712&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 本文中の『「ルール」とは、何なのか』『「黄金の真実」という提案』の稿は、(このブログの)コメント欄に書いた内容を加筆修正のうえ再録したものです。

 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩
 ep5初期推理その6・戦人の謎
 ep5初期推理その7・ノック問題

 以下が本文です。


     ☆


●赤で語るプレイヤー・ベルンカステル

 ep5を読んで、いちばんギョッとなったのは、古戸ヱリカの登場などではなく、
「ベルンカステルが勝手に条件設定を赤字で言う」
 ことでした。
 そんなことしていいんですか?

 ep4までのゲームは、
「ゲームマスターが現場の条件を赤字で設定し、プレイヤーが条件に抵触しない解答を見つける」
 というゲームでした。少なくとも、そういう建前でした。

 でも、ep5のゲームは、
「ゲームマスターとプレイヤーが現場の条件を赤字で設定しあい、プレイヤーが条件に抵触しない解答を見つける」
 というゲームになってます(ように見えます)。
 ものっすごいプレイヤー側に有利では? だって自分に都合の良い条件を赤で言ってしまえば良いのですから。

 大まかに分類して、
「ベルンカステルは実はプレイヤーではない」
 か、
「本当に、プレイヤーも条件設定を決めることができる」
 か、どちらかだと思います。

 前者の場合は、ベルンカステルはプレイヤーだと自分で言っているけれど、実は「副ゲームマスター」であって、ラムダデルタと一緒になってスジガキのあるお芝居をしていた。
 でもわたしは、後者を取ろうかなと思います。

 戦人が気付かなかっただけで、実は、そういうゲームなんじゃないのか、と。


●「ルール」とは、何なのか

 上記のことに関連して、
ep5初期推理その2」で、ノックス十戒がとても疑わしいという話をしたのですが、その補足。
 ルールって、いったい、何なのだろう、というお話です。

 そもそも、ルールというのは、所与のものなのでしょうか。たとえば「ベアトリーチェのルールブック」といったもの(確定されたルール)があらかじめ存在し、ベアトもラムダも、それに従ってゲームを構成しているのでしょうか。

 わたしは、その考え方を採りません。
 ルールというのはすべて、提案され、合意されることで初めて有効になるものだと、わたしは理解しています。

 野球にはルールブックがあって、書店に売られていますが、あれはプレイヤー全員が、「ルールブックに従う」という暗黙の合意をしているから、初めてそこに権威があるのだと思うのです。ブックに権威があるのではなく、合意に権威があるのです。
 法律もそうで、新しい法律は、「この新法に従う」という社会的合意があって、初めて有効になります。

 麻雀や大富豪にはいくつか特殊ルールがありますが、それはゲーム前に「これとこれがアリ、これはナシ」と、あらかじめ合意を取るのが普通です。
 不合意のままゲームを進めて、「実はこのルールありだもんねー」と誰かが言ったら、ふつう抗議される(つまり対抗主張が生じる)はずです。

 戦人は、「固定されたルールが、ルールブックみたいにあらかじめ存在する」というふうに、どうも思いこんでいます。そのように思いこませたことが、トリックだと思うのです。
 そうではなく、このゲームのルールは、対話の中で、随時作り出されていく(成立していく)ものだと、わたしは仮説しています。
 というか、このゲームに限らず、すべての「ルール」は、本来的にそういうものじゃないでしょうか。

 戦人には、ルールが開示されていないのだから、戦人は(ゲーム開始時には)まだ、どのルールにも合意していなかったのです。
 いくつかの局面で、「こういうルールがあるんだもんねー」という意味のことを誰かが言い出したとしても、戦人が合意しない限り、無効です。
 あくまでも、相手が「そういうルール」を提案しただけのこと。
 ミモフタもない言い方をすれば、「そう言い張っただけ」です。

 でも、戦人はわりと素直で、「畜生、そうなのか……」みたいにするっと受け入れます。ep5では、戦人がプレイヤーでない・不在であることによって、いくつかのルール提案が素通しになりました。

 そこでベルンカステルなのですが、彼女は、
「このゲームはミステリーである」
「六軒島における現実は、ノックス十戒に従う」

 というルールを「提案」したのだと思うのです。

 ベアトリーチェのルールブックに、「このゲームはノックス十戒に従う」という条項があったかどうかはわかりません。でも、あってもなくても、どっちでも良かったのだと思うのです。
 ベルンカステル(あるいはドラノール)は、自分のターンの自分の行動を通じて、そういうルールを提案し、ラムダデルタに認めさせた。
 ラムダデルタはたぶん、なんか面白そうだからって理由でたわむれに合意してみちゃった。
 だからそれ以降、このゲームは、ノックス十戒に従うものとして進むようになった。金蔵の書斎に隠し扉があろうとなかろうと、「ない」ものとみなして話が進むことになった。

 そういうことだと思うのです。
 もし、ゲームマスターがベアトリーチェだったら、そんな提案はしりぞけたかもしれないし、マスターがラムダであっても、プレイヤーが戦人なら、それに疑問を抱けたかもしれない。


●「赤=幻想描写」

 さらにいうと、ベルンカステルは、
「古戸ヱリカは犯人ではない」「熊沢にはアリバイがある」といった「条件」を「提案」したのだと思うのです。ほんとの事実がどうかということとは無関係に。
 ラムダデルタは、その提案に「合意」した。
 だから、ほんとの事実かどうかには関わりなく、その「条件」のもとでゲームが進むことになった。

 だから、このゲームの実体は、ゲームマスターの出題をプレイヤーが解くというものではなく、
「一個の現象に対して、ゲームマスターとプレイヤーが、交互に干渉を与えあう」
 というもの、であるように思えるのです。

 極論すれば、この説ではベルンカステルは、「この部屋には隠し通路がある」という「条件」を赤字で言うことができます。そしてラムダデルタは、それを言わせてしまった場合、「隠し通路は(あったかもしれないが)使用できなかった」という条件を「再提案」しないかぎり、密室が暴かれたことになり、この局面はリザインになります。

(注:ただし「合意しない」とラムダが決めれば、ベルンは赤では言いきれない・途中でうぐっとなる、という考えです。戦人が明日夢から生まれたと言えなかったくだりは、ベアトリーチェが戦人の提案に「合意しなかった」からという考えです)


 それじゃベルンは何でもアリじゃないか、という感じがしそうですが、そうではないのです。
 ゲーム盤は、そうした「局面」が、3個、4個と連なっています。
 ベルンカステルは「局面」どうしを、矛盾させてはならない。それだと、一貫した推理として成立しないからです。逆にラムダデルタは、矛盾するように追い込んでやればいい。
 だからクイズではなく、まさに、チェス。

 そしてこれって、
「実際には犯人が刺したのだが、煉獄七姉妹がえぐったことにする」
 というのと、とても似ていないでしょうか。

「この部屋には隠し通路がある」と提案し認めさせるというのは、事実に対して幻想を上書きしているのと、相似ではないか。
「その隠し通路は使用不能だった」と再提案し認めさせるというのは、その幻想に対して幻想で反撃するようなものじゃないだろうか。
 ベアトリーチェとワルギリアの魔法大戦みたいに。

 つまり、赤字で何かを言う、というのは、現象に対する「幻想描写」ではないのか。
 そしてこのゲームって、「幻想と真実、どっちが勝つのか」ではなく、
「どっちの作り出した幻想のほうが強いのか決めようや」
 というバトルものなのではないでしょうか。

 そしてたとえば、いっぽうのプレイヤーが提案する幻想の内容が「きっと人間が殺したんだ」というものであっても、かまわないのです。戦人というのは、まさにそういう幻想を信じたいプレイヤーでした。


 そうだとすると、ep6以降で、
「赤を使えるベルンカステルと、赤を使える右代宮戦人の戦い」
 が発生してもかまわなくなります。発生しそうですよね。
 副ゲームマスター説だと、そのへんの整合が、ちょっと取りにくくなるんです。


●「黄金の真実」という提案

 ついでに思いついたので書きますと、「黄金の真実」も、そうだと思うんです。

 あれは、このゲームを「そういうゲームだ」と理解した戦人が、
「黄金の文字は真実を語るッ!」
 というルールを「提案」したのだと思うのです。

「カケラの領主のみが使用を許される黄金の真実というものがある」
 という条項が、ルールブックに記載されていたわけじゃないと思うのです。

 戦人は、金文字について、何も語っていません。ただ彼は黄色い字で言いたいことを言っただけです。
 金文字を最初に有効だと認めたのはドラノールで、次にラムダデルタでした。
 この2人は、「金文字の権威(真実性)」をまず認めた。つまり、「金文字は真実を語る」というルールに合意しました(ルールとしての成立)。

 そのあと、この2人はよってたかって、「これは領主の特権である」とか「時として赤字にまさる力を出す」とかいう解説を加えました。
 つまり、「黄色い字」という単なる現象に対して、設定という名の幻想描写を書き足してくれたのです。

 そもそも、ドラノールの言う、「この質問に限り、赤字による保証を禁ずる」が、不自然です。そんなことをして良いのか? そんな権限が存在するなら、事実上すべての裁判で、何が真実かをドラノールが決定できます。
 だから、まずこの禁止は、ドラノールが吹いてるだけで権威のあるものではない。

 その上で、何でそんなフカシをしたか。
 これは、「本当に戦人が、このゲームの真実に到達しているのだとしたら、必ず別の色の字を使って反論してくるはずだ」というテストだったんだ、とわたしは考えてます。

 ルールというのは、提案と合意によって、随時追加が可能である。
 真実は、提案と合意によって、随時上書きが可能である。


 この島の真実に到達したのなら、そのことを認識しているはずだ。認識しているなら、それを使用して(新ルールを導入するという方法によって)危機を脱することができるはずだ。
 そのテストへの合格を、ドラノールとラムダデルタは認めた。のだと思うのです。

 ラムダは戦人に、「これ以上の論述はヤボだから不要、戦人犯人説は詳しく聞くまでもなく成立していると認める」みたいなことを言いますが、これは、戦人の説をラムダが読み切ったという意味ではなく、
「真実を自らの手で作り出す、という境地に到達しているのなら、戦人犯人説は聞くまでもなく成立しているだろう。なぜなら真実を作り出せるのだから」
 という意味に理解しました。


●竜騎士07さんは何に合意したのか

 連想ついでに、邪推まがいのことを書きます。

 竜騎士07さんは、「既存のミステリのルールに従う」といった合意を宣言したことは一度もないのに、どうして雛見沢症候群や組織「東京」を出したことを非難されているのでしょう。謎です。


●シエスタ姉妹と赤い竜

 戦人は子供のころ、天のお月様にはうさぎの文明があると信じていたそうです。それを周囲にバカにされて、その彼の真実を捨てなければならなかった。

 ところで、シエスタの姉妹兵は、竜王ペンドラゴンが赤い竜の飛来を記念して結成した部隊だそうです。
 つまりこういう言い方ができそうなんです。「彼女たちは天界のうさぎである」。

 ベアトリーチェは(あるいはベアトリーチェの中の人は)、幼い戦人が抱くその幻想と、それを捨てなければならなかった悔しさの話を、本人から聞いたんじゃないかな。
 そして、彼が信じたかったけれど断念しなければならなかったことを、魔法でそっと、「真実」に変えてくれている……。

 そうなると、赤い竜というのは戦人のこと、という連想がはたらきます。彼のイメージカラーは赤です。赤い竜の飛来とは、6年ぶりに戦人が島にやって来たことを指す、と考えると、それっぽい。

 推理としては、ベアトの正体は幼い戦人からうさぎの話を聞けるような立場の人なんだなー、ということなんですが、それよりもわたしが「おぉ」と思ったのは、以下のようなことなんです。
 では、シエスタ姉妹は、ベアトと真里亞の間にさくたろうが共有されているように、ベアトリーチェと戦人が優しさによって共有した、共同幻想ということになる……。

 あえて表現を暴走させるなら、シエスタって、ベアトと戦人の間に生まれた娘たちみたいなものなんじゃないの……?

 そんなふうに考えると、ちょっとどきどきしますよね、ということをお話したところで、このシリーズはとりあえずこれで終わりです。



■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
■目次2(カケラ世界・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■


■関連記事
●EP5推理

 【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?
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●赤文字論・密室を解く

 なぜ戦人は赤字で「明日夢から生まれた」と言えないのか
 グランドマスターキーの発見・もう謎なんてない
 ラムダデルタはなぜベアトリーチェに強いのか
 赤字の真偽と、「真実」の定義について
 赤字問題は「神」や「メディアリテラシー」に似ている
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ep5初期推理その7・ノック問題

2009年08月27日 01時17分19秒 | ep5
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


ep5初期推理その7・ノック問題
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/26(Wed) 17:26:35)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31643&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩
 ep5初期推理その6・戦人の謎

 以下が本文です。


     ☆


●明日夢登場

 前回の書き込みの直接的な続き。前回の推理ですと、明日夢がどこから出てきた人なのかが説明できません。かなりムリヤリですが、想定ストーリーのスキマから明日夢登場の余地を作り出してみました。

 例えば。
 熊沢が、留弗夫に直接会って赤ん坊を手渡したのではない場合。
 たとえば明日夢が、当時右代宮家に勤める若い使用人であった、というような想定をしてみます。
 熊沢は、同僚の明日夢に事情を話し、留弗夫にこの赤ん坊を手渡してくれまいか、という依頼をした。
 あるいは熊沢がした本来の依頼は、「どこかしかるべき施設にこの赤ん坊を預けてきてくれ」、だったのかもしれません。
 単なる同僚である明日夢に、右代宮家の大秘密を、さらっと打ち明けるのはおかしいという考え方もあります。
 その場合、熊沢は留弗夫宛に、事情を打ち明ける手紙を書き、それを赤ちゃんと一緒に明日夢に託した。明日夢がその手紙を勝手に開封した。

 補助線として、明日夢は右代宮家を退職間近だった、といった設定があれば、この「託し」はより自然になります。
 もしくは、夏妃に崖から突き落とされそうになったのは明日夢のほうだった、と考えても良いかもしれません。
 その場合、崖には、夏妃、熊沢、明日夢の3人がいたのだ、という組み方です。


 さて、赤ちゃんを託された明日夢さんですが、彼女はしたたかな人で、留弗夫に対して、「この赤ん坊をあなたに差し上げるかわりに、私と結婚して下さい」というような取引をもちかけた。……とかいうのはどうでしょう。
 ジョーカーをたまたま預かったことを利用して、右代宮一族の妻の座をゲット。もちろん、それにプラスして、本当の恋愛感情が彼に対してあったことにしてもかまいません。

 留弗夫には、霧江という人がいたけれど、この最強カードを自分のものにできる誘惑には勝てなかった。あるいは、このカードが他人の手に渡るのはなんとしても避けたかった。
 だいたいそんな流れを勝手に想定すると、留弗夫まわりの状況ともわりあい合います。


●ノック問題

 ノックの謎は、ep3の「南條殺し」と同種のミステリーだといえます。

 すなわち、現象そのものには、何ら不思議はない。しかし、大量の赤字が、解釈に大幅な制限を加えるので、不可能性の現象であるように思えてしまう。
 鍵とかドアが現象を不可能にしているのではなく、赤字による禁止が現象を不可能にしている。
 わたしは、こういうのを何となく心の中で「赤字囲い」と呼んでいます。

 南條殺しは「○○は死亡している」の死亡時刻を疑うことですり抜けられる。ならば時刻に対して争いのない状況で同じ謎を与えてあげましょう。そういう趣向であると理解できます。


 ところでep3南條殺しについて、わたしが採用している解は、時刻トリックではありません。
「右代宮朱志香が拳銃で殺した」
 です。
 現場にいたのは南條と朱志香だけである。南條は死亡し、朱志香は生き残っている。よって朱志香が南條を殺した。
 という……「見たまんまを真に受ける」ことを選んでいます。

「右代宮朱志香は殺人を犯していない!」
「南條殺しにかかわっていない!!」
「朱志香の体が起こした如何なる動作も、南條の殺人には関係・影響しない!」


 このあたりの赤字を、さらっと、「採用しない」ことで、この結論を可能にしてしまいました。(ていうか、「死亡している」の時刻を疑うことができるなら、「(去年まで)右代宮朱志香は殺人を犯していない!」とかいくらでもできそうですね)

 状況だけ見たら、何の疑問もないものを、赤字によって疑問を作ってしまう。
 状況から見たら、朱志香が犯人だとふつう素直に考えるところを、赤字があるためにそうは考えられなくなってしまう。

 そういうトリックだと見なしてみたのです。赤字の乱打戦になるのは、「どこが謎の争点なのか」をわからなくするためです。
 たとえば、「朱志香はいっさい、南條の死とは無関係」という赤字が、これひとつだけあったら、プレイヤーは、「じゃあ、この赤字をすりぬけてやればいいんだろう」という意識になります。


 そういうアプローチですので、今回も、「見たまんまを真に受ける」ことにしてみます。

 状況。大時計が24時のチャイムを鳴らしたとき、蔵臼、夏妃、源次は2階廊下にいた。
 それ以外の親族会議メンバーと、戦人、紗音、嘉音は客間にいた。
 客間ノックの音がした直後、24時のチャイムが鳴った。
 ドアを開けてみると、封筒が存在し、その中には当主の指輪があった。

 素直に考えるとこうです。ゲストハウスにいた誰かが、鍵を持っているか、源次に開けさせるかして、玄関から屋敷に入る。
 あらかじめ用意しておいた封筒を客間前に置き、ノックする。
 このとき時計が鳴った。この人物はそっと屋敷を立ち去りゲストハウスへ戻る。
 これで良いですし、なんと、この通りのことが起こったのだと考えることにしました。

 この案を採用するために、無視しなければならない赤字は以下の1つだけです。
「食堂の全員の誰も、いいえ、もっとシンプルな言い方をするわ。24時の時点で屋敷内にいた誰一人! あの手紙を廊下に置いた者はいないわ。」

 これを、例によって、さらっと無視することにしましたが、抵抗を感じる方は大時計が狂っていたかオーディオセットでチャイム音が鳴らされたことにして下さい。
 ゼンマイ式のアンティーク柱時計が1日5分くらい遅れるのはふつうのことですし、黄金発見の手順の中に、柱時計の操作があったことにしても良いです。
 時計のネジを巻くのはふつう執事の役目だと思うのですが、たとえば、時計が1日5分遅れるとわかっているのなら、「就寝前にネジを巻き、時計を5分進めておく」という習慣があってもそれは自然です。


●朱志香が手紙を置いた手順

 指輪入りの手紙を置くには、指輪を持ってないといけません。
 わたしは朱志香=ベアトリーチェ説なので、当主の指輪を持っているのは朱志香です。彼女はすでに碑文の謎を解いており、金蔵から指輪を譲られているという考えです。

 動きとしてはこうです。
 いとこ同士の遊びが一段落して、そろそろ寝ようかというころ。手洗いで中座するようなふりでゲストハウスを出て、マスターキーで鍵を開けて屋敷に入る。
「謎の男から電話がかかってきた」ことを夏妃に伝えろ、と、源次に命令する。
 客間前に封筒を置き、ノックする。
 その場を立ち去り、適当な部屋に入る。
 夏妃の部屋に内線電話をかけ、春夏秋冬クイズと「部屋を出るな」の命令をする。

 通話を、使用人室経由にする必要はないのです。また、使用する電話は、屋敷内のどこか適当な空き部屋のもので良いですが、急いでゲストハウスに戻って、ゲストハウスから電話をかけたことにしたいところです。
 というのは、この推理では、通話をヱリカが盗み聞きしていたという条件が必要だからです。
 屋敷からの通話だとしたら、ヱリカは、通話交換器をハックして盗聴していたという設定が必要です(それでも問題はないですね)。


 さて、一方で戦人に当主の指輪を譲り、一方で夏妃を遠ざけようとしていた(親族会議を6人にしたかった)となると、朱志香は、黄金が暴かれたことを知っていながら碑文殺人を続けるつもりだったということになります。
 わたしの説では、黄金を発見しただけでは駄目で、その奥にあるものを発見しないといけないのです。「愛がなければ、黄金しか見えない」です。
 → チェックメイト――黄金郷再び・金蔵翁の黄金郷


●ヱリカはなぜ朱志香の通話を聞いていたのか

 この推理では、2日目朝の「電話の男」はヱリカで、彼女は昨晩の朱志香の電話を盗み聞きしており、電話の男という立場を乗っ取ったということにしています。

 なんでわざわざ、電話を盗み聞きする行動に出たのかという疑問が生じます。
 それは、ヱリカは朱志香の行動をずっとマークしていたのだ、と考えることにします。

 どうしてマークしていたのか。
 ヱリカは、朱志香のことが気に入らなくて、ムカつくので、殺してやろうと思っていたからです。


●「見たまんまを真に受け」よう

「見たまんまを真に受ける推理」という話について、もう少し。
 前に論じた、秋カードのトリックと紗音に関する推理も、「見たまま真に受けよう推理」の一環なんです。
 カードは4枚あったかもしれないけれども、それはそれとして、見たとおり犯人は「秋が好き」を知っていて、それは紗音から聞いたんだと、そのまま受け取ることにしよう。今回そういう推理を展開しております。

 今回のep5。序盤で、夏妃はひとりでお茶しているのかベアトとお茶しているのか、という謎がありました。そして、ベアトは夏妃の心の中の存在にすぎない、あるいはこの場面はゲームマスターの解釈にすぎない、そういう解が与えられました。

 ということは、この段階で、
「描かれたからといって、それが本当とは限らない」
 というアプローチを全員のプレイヤーが持っていることになります。

 そして、このアプローチを読者全員が持っていることを前提としたうえで、そんな読者たちを騙せるような問題を、作者は出題しているわけです。

 見たものをそのままには信じない、というアプローチを持ったプレイヤーを騙す方法は簡単で、「見たものがそのまま本当」という謎を出すこと。

 今回の推理はそのへんをモノサシにしております。
 首を切られた死体なんかも、「首を切られて発見されたんだから死んでるんでしょお?」と素直に受け取ってみました。


 もうちょっと続きます。


 続き→ ep5初期推理その8・赤で語るプレイヤーと赤い竜



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■関連記事
●EP5推理

 【ヱリカ犯人説】Ep5第二の晩以降の展開は?
 『Land of the golden witch』の大ネタって何?
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ep5初期推理その6・戦人の謎

2009年08月26日 00時08分55秒 | ep5
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


ep5初期推理その6・戦人の謎
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/25(Tue) 12:12:26)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31574&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩
 ep5初期推理その5・第二の晩

 以下が本文です。


     ☆


●戦人の出生の秘密

「戦人=19年前の赤ん坊」、という構図。これは魅力的なので、事実にしてしまいたいです。

 19年前の赤ん坊は、いったいどこから連れてこられたのか。
 これは、19年前まで九羽鳥庵にいた、人間としてのベアトリーチェが産んだ子、ということで良いのではないかなと思います。
 順当に考えて、父親は、金蔵です。
 生まれたばかりの赤ん坊は、九羽鳥庵ベアトリーチェが崖から落ちて死んだため、育てるべき母親がいなくなってしまった。
 金蔵は、愛するベアトリーチェが産んだ子を自分の後継者にしたい。そこで長男夫妻に養子に取らせて、育てさせようという、ムシのいいことを考えた。

 ついでに、さらに想像をめぐらせて、九羽鳥庵ベアトリーチェがどこから来たのか。
 これは、戦中だか戦後だかに、金蔵に黄金を与えたという、最初のベアトリーチェ……「オリジナル・ベアトリーチェ」と金蔵の間に出来た娘なんじゃないかな。と、勝手な推測をめぐらしてみました。
 つまり戦人は、近親婚の結果、金蔵の孫でありなおかつ実子であるという……。

 想定するストーリーは、こうです。
 金蔵は、オリジナル・ベアトリーチェを愛した。オリジナルベアトは金蔵になびかなかったので、金蔵は彼女を監禁した。関係のすえ、娘が生まれた。娘誕生後、オリジナルベアトは自殺した。
 金蔵は、愛する女が永遠に失われたと考えることに耐えられなかったので、「娘」には、オリジナルベアトの魂が宿っている、と“見なす”ようになった。
 娘は成長して、九羽鳥庵ベアトリーチェになった。関係のすえ、こんどは男子が生まれた。息子誕生後、九羽鳥庵ベアトリーチェは楼座に連れられて逃げだし、崖から落ちて死亡した。
 金蔵は、愛する女の魂が永遠に失われたと考えることに耐えられなかったので、「息子」には、オリジナルベアトの魂が宿っている、と“見なす”ようになった。
 息子を夏妃に預けたところ、「事故」が起こって息子は死んでしまった。

 もう、「女の魂」が宿っていると見なすことができる、ベアトリーチェの血族はいなくなりました。
 あとは、魔法か何かで魂を呼び戻すくらいしか、方法がありません。そこで、息子死亡直後から、オカルトへの没入が始まります。

「19年前の赤ん坊」が死んだと知らされたとき、金蔵はこんな感じのことを言います。
「読めていた、この顛末は。どこまであがくのか。どこまで我がものにならぬというのか。空の檻に興味はない、うちすてい」

 上で想定したストーリーをOKだとすると、
「女を閉じこめる→子供生まれる→直後に女が死ぬ→子供も死ぬ」
 というパターンが、きれいに2回、繰り返されるのです。
 だから、最後のときには金蔵は、「なんとなく同じパターンになるような気がしていた」=「読めていた」。
 金蔵にしてみると、自分の手元にいつまでもつかんでおきたかった「女の魂」が、おのれの手から何度も何度も、するりするりとすり抜けていき、どうしても自分のものにならない、そんな形です。
 空の檻というのは、重要なものである「魂」が抜けた死体のこと。この解釈でわりと整合しそうです。

 もうひとつ。
 戦人がヱリカと一緒に黄金を見つけるくだりで、「金蔵の幻」が、たいそう喜ぶのです。
 どうも碑文解読者が戦人であったことが嬉しいらしい。「ベアトリーチェ、この賭けは私の勝利だ!」と言っています。

 たとえばこういう解釈。勝負は、金蔵がベアトリーチェを捕まえるか、ベアトリーチェが金蔵から逃げおおせるか、というもの。
「この賭け」とは、金蔵を除く在島者16人のうち、誰が碑文を解くのかというルーレット。金蔵が賭けたのは戦人一択。
 16分の1の確率の勝負、ルーレットはみごと戦人を指し示した。
 戦人は右代宮家の当主となり、以後、戦人の直系継承がおこなわれていく。つまり、彼の中の「ベアトリーチェの魂」は、右代宮家に永遠にしばりつけられる。


●女の使用人って熊沢か?

「戦人=19年前の赤ん坊」、という構図を成立させるためには、赤ん坊は死んだと思われていたけれど実は生きてた。夏妃も金蔵も、死んだと信じ込んだけれど、実は生きてた。そういう状況が必要です。

 その状況を作るために、赤ん坊を抱いていた女の使用人は、熊沢だったということにしてしまったらどうでしょう。

 女の使用人は、夏妃の主観で、「年配である」という表現があります。そして当時「壮年」だという描写もあります。
 仮に熊沢が現在70歳だとして、19年前には51歳。壮年といってさしつかえありません。

 熊沢は、ep4で、九羽鳥庵を知っており、九羽鳥庵ベアトリーチェの身の回りの世話をしていたことがわかっています。だから熊沢は、九羽鳥庵ベアトリーチェが誰なのかも、その死も、そしてその遺児のことも、事情を全部知っていると見なせます。

 だから彼女にしてみれば、こうです。
「ああ、おいたわしや夏妃さま。お子が産めないことをなじられ、誰とも知らぬ子を我が子として抱けと命じられ。この赤ちゃんを愛せないばかりか憎しみを抱くのも無理はありません」
「ああ、おいたわしや赤ちゃん。実の母を知ることもなく、継母に預けられ、そして継母は、この子を決して慈しみはしないでしょう……」


 彼女にとっては、両方がいたわしい。
 そして、赤ん坊を抱いてあっちへ行ってろと命じられた熊沢は、木立のあいだを散歩し、
「せめてこの子に、実のお母様が亡くなったあの崖下を見せてあげることにしよう。坊ちゃん、あなたの本当のお母様の魂は、あそこから天に召されたのですよ……」
 そんなことを思って、崖から見える海を赤ちゃんに見せたのではないか。

 さて、その直後に何があったのか。夏妃の手は、熊沢に対してどう動いたのか。そもそも夏妃はそこにいたのかいなかったのか。
 それを確定させる必要はありません。
 どちらにしても、この場面での使用人が熊沢であるなら、
「奥様にとっても、赤ちゃんにとっても、この組み合わせは不幸しかもたらさない。この赤ん坊はどこか遠くの安全な場所に逃がしてあげるほうが良い」
 という考えに、熊沢はたどり着くことができそうだ、ということなんです。


●留弗夫に預けられる

 なんらかの判断がはたらいた結果、熊沢は、留弗夫に赤ちゃんを預けるのが良いと考えた……ことにします。
 積極的に留弗夫を選んだというよりは、「絵羽よりまし」という消極的な理由ではないかな。この赤ちゃんの出自は、幼い譲治の立場を非常におびやかします。そうなると、夏妃のもとに置くのとあまり変わりません。

 留弗夫に預けるにあたって、熊沢は、「この子はこれこれこういう生まれの子で……」という内実を、正直に全部話したと考えることにします。

 留弗夫はずる賢く計算して、この赤ちゃんを、自分の実子だといつわって育てることに決めます。
 この赤ちゃんは、金蔵の実子であり、なおかつ孫であり、金蔵の愛した女の忘れ形見です。つまり、金蔵に対して無条件に勝利するジョーカーです。
 金蔵が赤ん坊に多額の遺産を与えるのなら、それは実質自分のものです。
 金蔵に対して人質をとったようなものです。

 留弗夫が、6年間の別居から戦人を取り戻すために、畳に手をついて謝ったというのも、金策関連で重要なこの時期にこの最強カードを失うわけにはいかないから、という説明がつきます。

(でも明日夢はどこから出てきた人なんでしょうね?)

 ○追記:推理しました→明日夢はいったい誰なのか?


●留弗夫「俺は殺されるだろうな」

 俺は殺されるだろうな問題には、追加情報が出ましたね。基本的に、以前書いた内容から、大きい変更の必要はないと見ました。
 → 留弗夫「俺は殺される」と「07151129」

 ただ、リンク先で書いた、戦人が2人いるという「戦人二人説」(そのまんまだ)については、べつに2人存在させる必要性はなさそうな状況ですね。

 戦人はひとりしかいないのなら、「07151129」の、「1129」のほうの意味を決め直さないといけなくなります。
 たとえば、仮にですが、19年前の「赤ちゃん崖落ち事件」の日付が、11月29日だったというのはどうでしょう。

 つまり、「0715-1129」=「戦人の誕生日 - 戦人の命日」です。
 のちに右代宮戦人と名付けられる赤ん坊は、7月15日から11月29日までの4ヶ月ちょっとの間だけ、ベアトリーチェの魂を宿したベアトリーチェそのもの、つまり「黄金郷の主」にほかならなかったのです。

 ソロモン王にはソロモンの鍵、黄金郷の主には黄金郷の鍵。ということで、現在のベアトリーチェ(わたしの説では朱志香)は、このナンバーを黄金郷の鍵として使っている。そんな感じでどうでしょう。

●追記
 ep6以降、命日説に変更があります。→ 「戦人脱出その2/金文字/一なるトリック」



 あと2回くらい書く予定です。


 続き→ ep5初期推理その7・ノック問題



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ep5初期推理その5・第二の晩

2009年08月25日 02時12分51秒 | ep5
※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■


ep5初期推理その5・第二の晩
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/25(Tue) 01:49:50)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31555&no=0 (ミラー
 Ep5当時に執筆されました]


●再掲にあたっての筆者注
 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者
 ep5初期推理その4・第一の晩

 以下が本文です。


     ☆


●第二の晩・客室、秀吉殺し

 第二の晩なんですが、ヱリカの計画としては、秀吉だけでなく絵羽も殺すつもりだった……ということで、よろしいかなと思います。それができなかったのは、秀吉を殺しているちょうど最中に絵羽が来て、異変に気付いたから。

 あるいは、最初から秀吉だけを殺すつもりだった、というパターンも考えられます。秀吉を殺しただけで、
「ああ、絵羽も狙われてて“寄り添う2人”の見立てだ」
 という印象はじゅうぶん作れますからね。
 その場合は、絵羽はあえて生かされた。
 その理由は、夏妃を告発するときに絵羽を感情的にさせ、その場を「絵羽への同情」という雰囲気で支配するためです。
 絵羽がひどく感情的な人間であることは、譲治の死体が発見されたときの反応から、すでにヱリカには分かっています。

 方法。
 秀吉夫妻が休息を取る客室ナンバーを盗み聞きし、先回りする。
 マスターキーでドアを開け、バスルームに潜伏する。
 返り血を浴びないよう、バスローブを羽織ったり、顔をタオルで覆うなどする(これで「誰やあんた!」という反応が引き出せる)。
 ベッドルームに現れ、秀吉を刺殺する(凶器は朱志香の部屋を勝手に捜索して発見した魔女の杭です)。
 窓から脱出する。
 鎧戸を閉める。
 糸を使ったトリックで、かんぬき、もしくは掛け金をかける。
 玄関から屋敷に入り、廊下から現場にひょいと顔を出し、「鎧戸は外からはびくともしません」と発言する。

 たぶんこれで、密室作成も含めた説明ができる……はず。


●窓と鎧戸の違い

 脱出についてすこし追加説明します。

 糸を使ったトリックは、一見、不可能に思えます。たとえばep2で、朱志香の部屋と使用人室に対して、
「窓については外からは如何なる方法でも施錠する方法は存在しない。」
 という赤字が出されています。ついでに、夏妃の部屋、客間についても、言い方は違いますがほぼ同様の保証がなされています。

 1階客室に関しては、その赤字はないのです。が、客室だけ、窓の条件が違うということは考えづらい。
 ep3では、この客室ではありませんが、2階客室に対して「ベアトリーチェの密室定義」が宣言されています。密室定義は、窓に対する糸や棒を使った干渉を否定します。今回の客室も、それに準拠していると見て良い。


 ですが、いくつか描写を抜き出してみると、こうなのです。

・夏妃の一人称描写(秀吉が戸締まりをする場面)
「鎧戸を閉め終えると、……どかっと、ベッドに倒れこむような音が聞こえた。」

・嘉音の発言
「鎧戸も全て閉まってますし、扉にはさっきまでチェーンが……。」

・留弗夫の発言
「そして窓には全て鎧戸。しっかり内側から施錠されてる。」

 この一連のシーン、ひたすら、鎧戸、鎧戸、鎧戸、なんです。
 特に、秀吉が戸締まりをするシーン。鎧戸をよっこらしょと閉める描写はあるのですが、ガラス窓を閉めて鍵をかける描写がまったくないのです。

 もちろん、赤字や密室定義は、「鎧戸の干渉不可能性」に、いっさい言及していません。
 だからこういう仮説です。
「施錠時の窓はいっさいの外部干渉を拒む」という意味合いの保証は、すべて「ガラス窓」に対するものである。
 そして、この客室において、ガラス窓は、ただ閉められていただけで、施錠はされていなかった。

 これで、鎧戸に対してテグス系のトリックが可能になり、「鎧戸の掛け金がかかっていた」ことをもって、密室のように見なすことができます。


 ちなみに、「鎧戸」って何なのでしょう。雨戸とは別のもの? はっきりしたイメージがわかなくて、気になったので、辞書を引きました。
 最近では、シャッターを表すことも多いようですが、この作品はシャッターのことはシャッターと言いますから(園芸倉庫)、それとは違いそうです。
 辞書の意味では、ルーバーのことでした。
 ルーバーというのは、あれですね、細長い板がたくさん、平行に、ナナメ下を向いて並んでる板戸のこと。角度が固定されたブラインドみたいなの。
 遮光性や、目隠し性はあるけれど、風はよく通す板戸です。
 つまり、スキマだらけのスカスカなんです。糸のトリックなんてたぶん楽勝です。

 三文推理小説の三文トリック……とヱリカなら言いそうですね。でも、その三文トリックをヱリカが使っていたのだとしたら、これは愉快です。

 ちなみにヱリカは、かなり遅れて現場に現れました。そのタイムラグは、屋敷の外をぐるっとまわって、玄関から入って、廊下を歩いてくる、そのための時間だとみることができます。
 現れたヱリカは、
「鎧戸は、外からはびくともしませんでした。今確認してきました。」
 と発言しますが、それを確認した(と主張する)のはヱリカだけです。つまり、窓からの侵入脱出が不可能だというのは、単にヱリカがそう主張しているだけです。


●夏妃inクローゼット

 描写にしたがえば、この秀吉殺しの客室の、クローゼットには、夏妃が隠れていました。
 つまりヱリカは、まっさきに客間を出て行った夏妃が、まっすぐ客室に入るよりも先に、バスルームに隠れていなければなりません。

 そして、「この部屋で秀吉夫妻が休息を取る」ように誘導しなければなりません。

 ムリですね。これは困った。困りましたので、
「夏妃は、秀吉が殺された部屋のクローゼットに隠れていたのではない」
 ということにしてしまいたいと思います。

 秀吉が殺されるのを、夏妃は息をひそめて聞いていた……というのはまるごと幻想描写ということにします。
 実際には、夏妃は別の客室のクローゼットに隠れており、1時間のあいだ、何事も起こることなく、ただただ恐怖や怒りとともにさまざまな思考をめぐらせていた。


 ヱリカにとっては(他の犯人の場合でも)、夏妃のアリバイを奪えれば良いのであって、べつだん、秀吉が死ぬところを彼女に見せつける必要性はないのです。ボタンだけ入手して、現場に仕込みさえすれば良い。

 同室させるのは、むしろリスクが多すぎます。たとえば、朝から疲れきった夏妃が、あまり深く考えず、ふだんの手癖で扉をロックしてチェーンをかけてしまった場合。
 秀吉を襲撃するときに、夏妃が恐怖でパニックを起こして、クローゼットから飛び出してきた場合。そして犯人の顔を目撃した場合。

 夏妃に恐怖を与えるというのは、いくらヱリカがサディストだとしても、明らかにリスクには見合いません。これは19人目の男が実在して犯人だったとしてもやっぱりそうです。

 ヱリカが犯行現場のクローゼットを開けようとして戦人に止められますが、もし止められなかったとしても、そこに夏妃はいなかった……と考えておきます。


 続きます。


 続き→ ep5初期推理その6・戦人の謎



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ep5初期推理その4・第一の晩

2009年08月24日 05時41分21秒 | ep5
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ep5初期推理その4・第一の晩
 筆者-初出●Townmemory -(2009/08/24(Mon) 05:16:14)

 http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=31512&no=0 (ミラー
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 EP5を読み終えた、直後の考えを書き付けておくシリーズです。
 ep5初期推理その1
 ep5初期推理その2・ノックス十戒と赤字への疑問
 ep5初期推理その3・新たな連続殺人者

 以下が本文です。


     ☆


●第一の晩・ゲストハウス

 首をパックリ切られるというのは、これまでにないパターンです。
 従来の殺人は、「人体に穴があく」「顔面が破砕される」というパターンがほとんど。礼拝堂殺人は腹部が裂かれていましたが、あれは、腹部を裂いたことが死因とは思えません。

 ep4までの、本来の殺人者が第一の晩を行ったのなら、銃なり槍なりといった便利な刺突系の凶器をあえて使わなかった(使えなかった)理由があると見るべき。

 もうひとつ。魔法陣のヘブライ語が間違ってるという情報。これは、上層世界の疑わしい人物ベルンカステルがそう言ってるだけのことですが、本当だとすると、これを描いたのは従来の殺人者ではない可能性が高い。

 よってep5の第一の晩の犯人は、ep4までの本来の殺人者ではない。これはOKだと思います。

 ヱリカだったら、比較的簡単に犯行ができそうです。

 いちばん簡単なのは、午前3時以降、そっといとこ部屋に忍び込み、そこに寝ている戦人以外を順番にスパスパやっていく。
 こうでも良いです。24時きっかりに、譲治、朱志香、真里亞を殺す。楼座にはあらかじめ、「遺産相続に関して味方してあげるから、午前1時に私のところへ来なさい」とでも言っておく。1時に楼座が来るのを確認し、いとこ部屋に先回りし、暗がりで娘の寝顔を見ようと思った楼座をスッバリ。

 どっちにしても、1時という刻限を切って楼座を呼び出す、という条件は必要そうです。なぜ楼座が選ばれたかといえば、彼女は「夫に相談しない」から。


●第一の晩・源次(使用人控え室)

 わたしの説ですと、朱志香を殺せばマスターキーが入手できますが、もしできなくっても、屋敷玄関が施錠されたとは描写されてませんし、使用人控え室も鍵がかかってなかったみたいなので(発見時の描写より)、そこに行くぶんには問題ありません。

 封印はヱリカが考案したものですので、ビッと剥がして侵入し、源次の首を切り、また新しい封印をすればOKです。

「全ての封印は如何なる方法でも、痕跡を残さずに剥がすことは不可能なり」という赤字があって、これを無視することにしても良いのですが、この赤は「扉側に」痕跡を残さないとは言っていません。
「剥がそうとしたらガムテが破れる」という意味かもしれません。よって、剥がして、新たな封印を貼り直すことは否定されません。

 なぜ、殺しやすい郷田や熊沢や南條あたりではなく、わざわざ屋敷の源次が被害者に選ばれたのかといえば、それはもちろん、マスターキーを紛失させる……というより、マスターキーを1本、入手したかったからです。
 ヱリカは、マスターキーが5本あって、5人が持っているなんていう情報を、知りません。そして、
「マスターキーが一般のキーよりたくさん存在し、屋敷の主すら1本も持っていないのに、下級使用人たちが1本ずつ所持している」
 なんていう、常軌を逸した管理体制は、ふつう想像しません。この屋敷おかしいです。

(余談ですが、「使用人たちがマスターキーを1本ずつ持っている」という条件が、もうまるごと幻想描写なんじゃないのかという疑いも持っています)

 順当な想像としては、「きっと執事ならマスターキーを持ってるのではないか」といったあたりです。だから源次にアタリをつけて、
「立派なお屋敷ですね。こんなに部屋が多いと、鍵の管理もさぞかし大変でしょう」
 なんていう世間話をすれば、源次がマスターキーを携帯していることは聞き出せそうです。

「源次のマスターキーが紛失している」という情報を、みんなに与えたのは、ヱリカです。そして、それを調べたという描写はありません。
 もちろん、バックグラウンドで、
「マスターキーが存在する。源次はそれを持っている。それは普段これこれの場所にあるはずだ。そこを探してみたが、それがない」
 というこれだけの情報を他の使用人から聞き出し、チェックしたのかもしれません。けど、「自分が奪ったから、マスターキーは紛失されてるよ」という、なめた発言である可能性もあります。
「描写のあるなし」は、ep5以降、どうも細かく問われるものらしいので、このことは意識にとどめておくことにします。


●そもそも封印されてない可能性

 幻想法廷でのヱリカの発言から。

「そして、朝。事件が発覚し大騒ぎになった時、私は真っ先に熊沢さんの控え室を確認し、そして封印が健在であることを確認しました。」

 これ、おかしいかな、という感じがするんですが、どうでしょうか。

 熊沢は、朝、自分で起き出して、厨房に現れました。それで源次が起き出してこないという話になるのですよね?
「事件が発覚し大騒ぎになった」あとで、熊沢は厨房に現れ、郷田たちと楽しげに挨拶したり世間話をした?

 熊沢の朝の描写が正しいとするなら、熊沢の部屋の封印は健在であってはならないのです。彼女が、窓から外に出たのでない限りは。

 ということで、可能性はふたつ。厨房に現れた熊沢は幻想描写である、か、そもそも封印なんてなかった、か。
 後者の場合、郷田、南條の部屋の封印、さらにゲストハウス全体の窓を封印したという話も、疑わしくなってきます。
 水着を着て、ハシゴか何かを使って、1階も2階も、外から窓を全部封印したなんて、ウソッパチなのではないか。
 どうやって、誰にも不審がられずにそうしたのか。
 いつ、どうやって、それを剥がして処分したのか。ゲストハウスの全部の窓にガムテが貼ってあるなんてことを、確かめた人はいません。


●第一の晩・蔵臼と、死体消失

 マスターキーさえあれば、蔵臼を殺すのは難しくありません。鍵を開け、蔵臼を縛り上げ、謎の男として夏妃に電話をかけ、蔵臼の声を聞かせ、それから首を切れば良い。

 夏妃には、蔵臼が生きていると思わせなければならないので、死体を隠す必要があります。使われていない空き部屋のクローゼットにでも押し込めるくらいでOKと思います。

 さて、それ以外の死体。
 ヱリカは、これを隠す必要があります。なぜなら、他の5人の死体を消失させない場合、
「蔵臼は死体が確認できない。よって、彼は行方不明。蔵臼が犯人で、逃走したのである」
 という可能性が非常に濃厚になってしまい、推理構築にさしつかえます。

 でも、全部の死体がその後消えるのなら、
「蔵臼は最初に殺され、最初に死体を移動させられたのだろう」
 という印象が、濃厚になります。
 5つの死体を発見させ、その後に死体を隠すことにより、「蔵臼だけ死体がない」という不自然さを薄れさせることができます。

 ヱリカは、夏妃が娘の死体を確かめたいといって飛び出していったとき、「さあさあみんなで一度ゲストハウスに戻りましょう、戻ったって事態が進展するわけじゃないですけどー」みたいなことを言います。
 この推理では、ヱリカは、「死体が消えてる」ことをみんなに見てもらわなければ困るのです。そういう誘導だと見なすことも可能です。

 5人の死体隠蔽ですけれど、これはヱリカにそのチャンスがあったのかどうか、難しいところです。描写を見ていくと、シーンは飛んでいますから、その間にやったんだと見なすほかないですね。
 源次の死体は、蔵臼同様で良いとして、あとの4人ぶん。
 やはり別室に移すか、そうでないのなら、窓から死体を放り捨てる。そして森の中にでもひきずりこんでおく。そんなところでしょうか。


 続きます。


 続き→ ep5初期推理その5・第二の晩



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 『Land of the golden witch』の大ネタって何?
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