メガリス

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龍馬伝説「世界の海援隊伝説」はウソである。

2015年03月15日 23時18分26秒 | 幕末維新

 “坂本龍馬が作った新政府案に龍馬本人の名が無いことを西郷隆盛が指摘すると、坂本は「役人は嫌だ。世界の海援隊をやりたい」旨の発言をした”という有名な龍馬伝説「世界の海援隊伝説」はウソである。
 そもそも新政府案いわゆる『新官制擬定書』は坂本が作ったものではない。作ったのは当時坂本の近辺に居た戸田雅楽〔とだ うた。後の尾崎三良(おざき さぶろう)〕という人物だ。西郷に見せたのも戸田だ。龍馬ではない。戸田は以前三条実美に仕えていた人物で朝廷の組織官職に関する知識があったので其れを作成することが出来た。
 そして、その「擬定書」には「参議」として坂本の名がちゃんと挙がっている。無論、坂本は承知だろう。坂本本人の言動から判断しても彼が新政府に参加するつもりでいたのは間違いないと思われる。

 明治時代に龍馬の伝記『汗血千里駒(かんけつせんりのこま)』を刊行し彼を自由民権運動の先駆者に無理やり位置づけた坂崎紫蘭(さかざき しらん)という人物が『維新土佐勤王史』を執筆した際に、“龍馬の名前が後の明治政府高官たちと一緒に掲載されるのはマズイ”という判断から龍馬の名前を除外したのが間違いの大元だ。後に其れに「世界の海援隊」云々という話が付加された。

 幕末維新史に詳しい著名な歴史作家 桐野作人氏のブログ『膏盲記』「新官制擬定書」より引用する。NHK大河ドラマ「篤姫」第44回「龍馬死すとも」についての文章である。

---------------------引用開始

それと、龍馬の「新官制擬定書」についてです。
これも二重三重におかしいでしたね。

擬定書を龍馬が小松に見せておりましたが、2人にそんな時間はありませんでした。
それに擬定書を作成したのは龍馬ではなく、龍馬の側近だった戸田雅楽、のちの尾崎三良(さぶろう)です。
尾崎はそれを小松ではなく、西郷に見せに二本松の薩摩藩邸を訪れましたが、西郷は帰国の準備中で、会うことができませんでした。でも、西郷が尾崎に一緒に船に乗らないかと勧めてくれたので、一緒に帰っています(ただし、大宰府の三条実美に会うために下関あたりで下船)。
尾崎の回想によれば、船中で西郷に擬定書を提示したところ、西郷が面白いと答えたとのこと。小松に見せたとは書いていません。

まあ、西郷の代わりに小松に見せたくらいは許容範囲としましょう。
しかし、擬定書のなかに後藤と福岡孝弟の名前はありましたが、龍馬の名前がなかったのはおかしいですね。
そして、それに疑問を呈した小松(従来は西郷でしたが)に対して、龍馬が「世界の海援隊をやるきに」というお決まりのパターン。

これが『維新土佐勤王史』を編纂した坂崎紫瀾あたりがつくったフィクションであることは間違いないところでして。

じつは、擬定書は5種類くらいあります。それを厳密に史料批判した石井孝氏は、『尾崎三良自叙略伝』に収録されたのがもっとも古く、オリジナルに近いものだと結論を出しています(石井孝「船津功氏「『大政奉還』をめぐる政権構想の再検討」を読んで」 『歴史学研究』380号、1972年)。

では、尾崎の自叙伝にある擬定書に何と書いてあるかといえば、

内大臣 一人 (中略)暗に徳川慶喜を以て之に擬す。

参議 若干人 (中略)後藤、福岡、坂本等を以て之に擬す。

徳川慶喜の名前があるばかりか、龍馬の名前もちゃんと記載されています。

ところが、坂崎紫瀾は『維新土佐勤王史』を執筆した際、尾崎の自叙伝から写したと書きながら、意図的に龍馬の名前をはずしました。
それは、坂崎が龍馬の伝記『汗血千里駒』を刊行して、龍馬を自由民権運動の先駆者に位置づけてしまったため、反政府運動だった自由民権運動のなかで、龍馬の名前がのちの明治政府高官たちと一緒に掲載されるのはまずいという判断から、龍馬の名前を除外したと考えて間違いないと思います。

そのような作為がなされ、そこからさらに派生して「世界の海援隊」のエピソードが拵えられたわけです。
擬定書に名前があったら、「世界の海援隊」にとっては具合が悪いことになりますからね(笑)。

もういい加減、そうしたフィクションによる「龍馬伝説」の拡大再生産はやめにしたらどうでしょうかね。
史実の龍馬像からどんどん遠ざかるばかりだと思いますけど。史実の龍馬はそんなに魅力がないのでしょうか?

引用終了---------------------

 「史実の龍馬はそんなに魅力がない」と思われているのであろう。
 だから、“架空の幕末スーパーアイドル坂本龍馬”を金儲けのネタにしている「悪質龍馬業者」の連中は、坂本龍馬の真実の人となりや事績が世間に広まらないよう、必死に“「龍馬伝説」の拡大再生産”をやり続けているわけだ。

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