メガリス

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龍馬殺害は京都見廻組。指図は会津藩主松平容保か実弟定敬

2010年05月09日 12時42分00秒 | 幕末維新

 平成22年5月8日夜21時からフジテレビ系で『土曜プレミアム 知られざる“龍馬伝” 世紀の英雄・坂本龍馬 最大の謎と秘密の暗号』(プロデュース立松嗣章)なる番組が放送された。

 期待はしていなかったがやはりガッカリな内容だった。
 有名な「龍馬フリーメーソン説」こそ出なかったが、龍馬はイギリスのスパイだったとかいう話や龍馬暗殺に関わる「新撰組説」「薩摩藩説」「後藤象二郎説」など俗説に過ぎないガラクタまで寄せ集めての安物のパッチワークみたいな番組だった。

 おまけに、”坂本龍馬が反目していた薩長の手を握らせることを思いつき両者を説き伏せて薩長同盟を結ばせた””坂本龍馬が大政奉還を思いつき奔走して実現した”等のカビの生えた架空のウソ話「龍馬伝説」の垂れ流し。

 世の中は刻々と変化しているのに、立松嗣章氏をはじめ日本のテレビ屋さんの不勉強ぶりは相変わらずらしい。

 第三者で最初に薩長連携を提唱したのは福岡藩に在った筑前勤王党の加藤司書(かとう ししょ)・月形洗蔵(つきがた せんぞう)・早川勇(はやかわ いさみ)らで、彼らに共鳴し実際に周旋活動をしたのは土佐の中岡慎太郎(なかおか しんたろう)と土方久元(ひじかた ひさもと)だ。
 だが、実際に成立した薩長の和解連携は他ならぬ薩摩が自ら構想し西郷隆盛を中心に工作を進めて実現したものである。当時薩摩の庇護下にあった龍馬は西郷・小松帯刀らの指示のもとに関与した。
 ”龍馬が薩長連携を発案し、彼が仲介して気の進まない両者を説得し手を握らせた”という「薩長同盟発案仲介伝説」は司馬遼太郎の空想歴史小説『竜馬がゆく』其の他で広まったフィクションに過ぎない。
 後世に「亀山社中」と名づけられた集団を薩摩の小松帯刀が作ったのも、薩長和解の仲立ちとして働いてもらう為と言われている。
(龍馬が「亀山社中」を作ったわけではない。“龍馬が「亀山社中」を作った”という「亀山社中設立伝説」もウソである。第一、その時、龍馬は長崎に居ない。また「亀山社中」は薩摩藩に雇われ薩摩藩から給料を貰って働く、現代の言葉で言うなら臨時職員の集団であって、商社・会社のような独立した組織ではない。彼らは自分らのことを単に「社中」と呼んでいたが、これは現代の「仲間」「グループ」という程度の意味の当時普通に使われていた言葉。つまり独立した組織らしい名前を持たなかったのだ。「亀山社中」が実は薩摩藩の組織の一部であり当人達もその意識でいた証拠だ。)

  「龍馬が発案し彼の奔走で実現した大政奉還に皆愕然とした」旨のことを言っていたが、この「大政奉還発明奔走伝説」も大ウソ。
 大政奉還策の発案者は幕臣大久保一翁(おおくぼ いちおう)や福井藩主松平春嶽(まつだいら しゅんがく)らである。勝海舟の弟子時代に彼らに会う機会があった龍馬は、後に受売りの大政奉還策を地元土佐藩浮揚の一手として後藤象二郎に提示しただけだ。
 まるで坂本が大政奉還建白書を書き土佐藩に提出したかのようなインチキ再現映像が流されていたが、大政奉還策を実現する為に走り回り建白書を前土佐藩主山内容堂に提出させたのは後藤象二郎であって、坂本ではない。後藤は建白書を提出する前に薩摩の西郷・小松帯刀らに相談しており、薩長は後藤や土佐の動きをちゃんと知っていて、武力倒幕の準備をしつつその成り行きを見守っている立場だった。

 後藤が奔走している間に龍馬が何をしていたかというと、本当に一切サッパリまるっと何もしていない。何もしていないどころか、土佐に鉄砲を運んで戦に備えての購入を迫り、木戸孝允(きど たかよし)に対しては“武力倒幕派の乾(板垣)退助に相談し、後藤は土佐か長崎に引っ込める”というような何の権限も実力も無い彼に出来るはずもないハッタリをかましたりしている。つまり、後藤の動きを把握していなかった龍馬は、知らず知らずのうちではあるが後藤を屋根に登らせたハシゴを外すようなことをしていたのだ。
 龍馬が全く知らない所で後藤の大政奉還運動は成果を上げつつあったのだ。何故か知らないが、徳川慶喜が大政奉還を決意したことが周囲にも明らかになった“後”に、龍馬は後藤に“励ましのお便り”を出している。

龍馬暗殺が「幕末最大のミステリー」などと言われていたのは昔の話で、実は今では相当部分が解明済だ。
 殺害実行は京都見廻組(きょうとみまわりぐみ)である。歴史学者でこれに異を唱える者は皆無に等しく既に定説となっている。(「いや、 違う」と言い張っているのは、他人と違う面白い話が書ければそれで良いと思っているような作家や研究家を自称する素人だけだ。)
 今井信郎(いまい のぶお)の「自分が龍馬を斬った」とする後年の証言の真偽はともかく、近江屋で龍馬と中岡慎太郎を殺害したのが今井を含む京都見廻組であることはもはや動かない。

 「黒幕」として最有力と看做されているのは、この番組で諸説の一つとして紹介されていた京都守護職の任にある会津藩主松平容保(まつだいら かたもり)だ。京都見廻組は新撰組等とともに容保管轄下の組織だった。見廻組与頭(みまわりぐみ くみがしら)佐々木只三郎(ささき たださぶろう)の兄で会津藩士の手代木直右衛門(てしろぎ すぐえもん)が亡くなる間際に、会津藩主松平容保から命令を受けたことを示唆する証言を残している。龍馬殺害事件の「黒幕」に関する最有力説でありほぼこの線で間違いない。〔正規の命令系統からは外れるが、容保の実弟で京都所司代を勤める桑名藩主松平定敬(まつだいら さだあき)の命令である可能性もあるそうだ。〕

 「今井信郎を西郷隆盛が釈放した」という話が出たが、単なる俗説に過ぎない「薩摩藩黒幕説」を信じる人達がバカの一つ覚えのように繰返している伝説に過ぎず、そんな事実は無い。
 今井は、当初は、“見廻組が龍馬を殺したが、自分は現場の下で見張りをしていただけで殺害には一切関わっていない”と言い張っていた。結局、それが認められたというのが真相である。
 そもそも、西郷が“邪魔者”龍馬を暗殺した黒幕だったなら、真相を知る或いは知っている可能性の有る“邪魔者”今井も消そうとするのが自然だろう。何で逆に釈放して助けようとする?少し考えれば判りそうなものだが。

 トーマス・グラバーを「闇の武器商人」とか呼んでいて、笑ってしまった。どこが「闇」なんだよ?幕府や諸藩と堂々と取引していたのに。「亀山社中」の武器取引を「禁断のビジネス」と言っていた。別に密輸をしていたわけではないし、武器の輸入はあの時代は正当な普通の商取引だ。

 プロデュース立松嗣章氏もテレビ界にごくありふれたハンセンヘーワ馬鹿なのだろう。日本のテレビ人の程度が知れる低レベルのトンデモ番組でした。


”勝塾 塾頭”佐藤与之助登場!NHK『龍馬伝』第18回

2010年05月08日 20時47分00秒 | NHK大河ドラマ『龍馬伝』

 NHK大河ドラマ『龍馬伝』

 第18回「海軍を作ろう!」。

 大坂神戸で勝私塾・幕府海軍操練所両方の「塾頭」だった佐藤与之助が登場した。(字幕には「勝塾 塾頭」と出ていたが、そういう肩書きを実際に名乗っていたわけではない。大坂神戸の勝私塾や幕府操練所の筆頭であり塾の現場における事実上の塾頭だった、ということだ。本当の塾頭を求めるなら普段は江戸に居る勝海舟ということになるだろうが、海舟もそんな肩書は名乗っていない。)

 司馬遼太郎の空想歴史小説『竜馬がゆく』ではその存在を無かったことにされ「塾頭」の座を坂本“竜”馬に奪われた佐藤与之助さん。あの世でさぞやご無念な思いだったことでしょう。とりあえずは、良かったですね。

 だが、横柄で短気でいかにも器量が小さそうな人物に描かれている。後に勝塾は神戸に移転するが、そこで佐藤与之助がどういう扱いを受けるか心配だ。

 土佐勤王党に龍馬が入る直前のように、何らかの事件で龍馬が(架空の)大活躍をして塾生たちの心を掴み“神戸では形式的には佐藤与之助が塾頭格だったが本当の塾のリーダーは龍馬だった”ということにされそうな気がする。

 この番組では土佐勤王党は極悪非道の殺人集団とされ、武市半平太はその冷酷無比な首領という扱いを受けてきた。

 その武市がいよいよ“報い”を受け始める。岡田以蔵は龍馬によって勝海舟の用心棒として引き抜かれ、他の勤王党員も前土佐藩主山内容堂によって勝塾へ送られたりして、武市の周りから人が居なくなってしまう。朝廷を動かす程の影響力を誇っていた武市は転落の坂を転げ落ち始める。

 “「天皇をお守りする。国を守る」などと言うような人間はバカだ、能無しだ、悪党だ、差別主義者だ、人殺しだ、落伍者だ、人間のクズだ”という印象付けをしたいのだろう。「皇室を初めとする日本の伝統を守る。国を守る」という気概を日本人から徹底的に奪い去り、将来の中共サマによる「日本解放」戦争に少しでも役立ちたいという一心でプロパガンダに精を出しているに違いないというのが私の想像だ。

 ハンセンヘーワ生命至上二重人格龍馬クンは今回も異常言動を繰り返す。

 龍馬と近藤長次郎を除く勝塾塾生達が「外国と戦をする為の海軍」という“勘違い”をしていることに“気付いた”龍馬クン。わざわざ赤ら顔のホームレスのオッチャン武田海舟のところまで出かけて行き、その皆の“勘違い”問題を訴える。

 勘違いは龍馬クン、君の方だろう。

「戦をしない為の海軍」と「戦をする為の海軍」は同じものだ。国を守る為なら躊躇せずに「戦をする」という気概と能力をしっかり保持している海軍だけが「戦をしない為の海軍」たり得る。「戦をしない為“だけ”の海軍」など有り得ない。それが常識的な考えだしこの世の真実だ。

 ハンセンヘーワ生命至上龍馬と歴史的実在の坂本龍馬を無理やり一人の福山龍馬に押し込めようとするから、其の言動や物語の筋に矛盾が生じる。



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