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本因坊秀策の「耳赤の一手」

2007-05-23 08:55:24 | 文化・学術

 尾道市因島・瀬戸田周辺地域の週間新聞「瀬戸内タイムズ」で面白い記事を見つけた。
 江戸時代を代表する、因島生まれの天才棋士本因坊秀策の「耳赤の一手」を4回に分けて連載している。本因坊秀策については、NHK BSでも放送され、その際にも、この「耳赤の一手」が紹介されており、興味を持ってみていた。
 興味のある方は、下記「せとうちタイムズ」のアドレスにアクセスするとよい。
 http://0845.boo.jp/times/archives/001698.shtml


 図の盤面でいうと、27の手、勝負でいえば黒127手目が秀策の放った「耳赤の一手」ということになるとのことである。
 NHK BS放送では、黒と白の勢力関係から、上辺の黒と、下辺中央部の白の勢力に囲まれつつある黒四子とを微妙につなぐ位置関係にある妙手であると、解説されていたように思う。
 これが、「耳赤の一手」と呼ばれる所以は、対戦相手である井上幻庵因硯(大阪囲碁界の大御所として君臨)に付き添っていた主治医が、因硯の体調を気遣い表情をのぞいて見ると、顔面から「耳」まで赤みがさしていた、とのこと。主治医は、耳たぶまで赤みがさしているのは「先生苦戦」と判断したとのこと、にあるらしい。
現代囲碁全書〈第1巻〉秀策流布石とその新発展 (1958年)

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 私も、NHKの囲碁番組は毎週欠かさず見るようにしており、相手があれば打ちたいものだと思うが、仕事にかまけて打つ機会がないというのが実情である。
 しかし、19×19=361目の盤面の中での陣取り合戦であるが、その盤面上で「無限の世界」が繰り広げられるから面白い。
 例えば、武宮九段の打ち回しなどは、自分自身の碁に取り入れるのは不可能であるが、いわゆる「宇宙流」といわれるように、盤面中央部に大きな陣地を確保する戦略、構想は何とも痛快である。
 あのような打ち回しでと思っているうちに、いつの間にか中央部が武宮九段の狙い通りに、黒番であれば黒っぽくなったり、白番であれば白っぽくなったりする。
 何とも不思議な世界である。
本因坊名勝負物語

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 本因坊秀策に話を戻すと、秀策は30歳台半ばで逝去している。
 NHK BSの最後の場面だったと記憶しているが、多くの弟子たちが疫病(疱瘡と記憶しているが…???)にかかるのを懸命に看病し、その看病の結果、自分自身に疫病がうつり、それが原因で自らの命を失うことになった。
 この中に、秀策自身の「人格・人間性」を見ることができたように感じ、感動したのを覚えている。
 さらに、私自身も、「人生という碁盤の上で、秀策が放った『耳赤の一手』のような、起死回生の一手を打てないものか」とも感じた次第である。

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