NB online1月7日付記事、「山崎養世の『東奔西走』」が面白かった。記事のタイトルは「高成長に戻る世界経済と取り残される日本」で、サブタイトルが「成功の記憶を捨て、新たな経済の仕組みを見据えた1年に」である。
昨年の世界経済の流れを整理し、その中における「日本経済の現状」を整理し、「今後どのように日本が進んでいくべきか」という点について言及している。
「日本の現状分析」であったり、「日本のとるべき針路」等で参考になる部分があるので、ここで取り上げることとする。
その中で、日本の政策当局も、また、政治家も含めて、「日本の低成長は少子高齢化だけが原因ではない」としているところや、「小泉政権で日本は大改革をしたと錯覚しているだけ」という部分に注目する必要があると考える。
サッチャー政権下断行された「イギリスの金融ビッグバン」以降のイギリスの経済状況と、現在の日本の経済状況を比較すると、残念ながら同じようには進展していないと考えられる。
この点については、日経で報じられている「YEN漂流」等の記事を見ていても分かるところである。1月20日付「YEN漂流」においても、「(日本に進出してきている海外企業が日本に根付くことも含めて、)企業が逃げない環境整備」が必要と指摘しているところである。
このような意味で、山崎氏が、「小泉政権下での改革」について、「日本人は大改革を行なったと錯覚しているだけ」と指摘している点を認識し、「不断の改革を断行していく強い姿勢」が政権に求められるのではないかと考える。
少なくとも、「政権奪取のためのイス取りゲームをやっているべきときではない」ことは確かである。。。
記事の一部を引用しておく。
========
記事引用
========
○日本の低成長は少子高齢化だけが原因ではない
ところが、こうした世界の成長に大きく取り残されているのが日本です。21世紀のGDP(国内総生産)はほとんどゼロ成長であり、株式指数はマイナスを記録しています。1980年代終わりには世界の株式市場の時価総額の4割を占めていた日本のシェアは、今わずか7%に過ぎません。年金や個人資産の伸びも止まっていることになります。
今年は、こうした現実に気づいた日本の資産が海外への投資に向かい、大きな円安になる年かもしれません。日本の低迷の根本的な原因は、いまの日本の経済モデルが新しい世界に適合していないことなのです。
よく日本の低成長は少子高齢化が原因、と言われますがそんな単純なものではありません。韓国や台湾、シンガポールなどの先進国や中国を含めてアジア全体で少子高齢化が進んでいるのに、日本だけが大きく経済成長が止まっているのには、もっと根本的な原因があります。
このままでは、日本経済の地盤沈下はいっそう加速するでしょう。かつて日本に消費財の製造業で敗れた米国や欧州は、80年代以降苦労しながら日本への敗北から学びました。そのうえで、既存の工業社会に頼らずに成長するために、産業構造と国土の転換を成し遂げました。
米国では、企業のローカル化とグローバル化の同時進行でした。ニューヨーク以外から新しい世界企業が次々に生まれるようになったのです。そのために、減税と航空、金融、通信のビッグバンを行い、地方からでも世界とビジネスができる経済をつくりました。
欧州はEU(欧州連合)の統合という大事業を成し遂げました。そのうえで、文化を生かし、田園を中心とした農業、観光、伝統、環境をミックスした新しい経済をつくり上げ、さらに企業もグローバル化しました。新しい欧州の強さがユーロの強さに表れています。
○小泉政権で日本は大改革をしたと錯覚しているだけ
ところが、日本は大きな変革をほとんど行っていません。小泉改革の最大の功績は、欧米では93年に終わった、財政資金を入れた銀行と大企業の救済と整理でした。新しい経済ができたわけではなかったのです。
それなのに、痛みが大きかった分、日本が大改革を成し遂げたような錯覚に陥っていました。だから、80年代で有効性が終わった東京一極集中の製造業中心、輸出中心の国家モデルから脱却していません。ところが先進企業は海外に出ていきますから、国内経済の空洞化は着実に進んでいるのです。
それでいて、高速道路に代表されるように、国内のコスト構造は高いままで、文化やサービス産業や観光、農業など欧州型の産業は育っていません。
一方、80年代まで強かった情報通信ハイテク分野も、携帯電話やPCに見るように、国内の特殊な市場に満足しているうちに、世界でのシェアは続落しました。今強い自動車でさえ、中国やインドでの低価格車が今後品質を向上し量産効果で低価格になれば、優位が揺らぐことも予想されます。
根本的問題は、新しい世界企業が日本からは生まれないことです。時価総額上位50社のうち過去30年以内に一から生まれた企業はソフトバンク1社のみ、これでは、経済成長しないはずです。かといって、アジアなどの成長を取り込むはずの金融業は、一層内向きの対応に追われ、日本市場の地盤沈下は目を覆うばかりです。
========
Written by Tatsuro Satoh on 21st Jan., 2008
最新の画像[もっと見る]
- さらなる進化を遂げる、ロンドンのジャパニーズ・レストラン 17年前
- パリのクリスマス 17年前
- パリのクリスマス 17年前
- パリのクリスマス 17年前
- “ネオ・クラシック”が象徴 2007年のNYトレンド 17年前
- “ネオ・クラシック”が象徴 2007年のNYトレンド 17年前
- “ネオ・クラシック”が象徴 2007年のNYトレンド 17年前
- “ネオ・クラシック”が象徴 2007年のNYトレンド 17年前
- “ネオ・クラシック”が象徴 2007年のNYトレンド 17年前
- 神戸ルミナリエ開幕 17年前