グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

コナクリ通信④

2008-11-11 | 国際連帯税&リーディンググループ国際会議
      (写真:NGOの参加者。最終日のレセプションにて)

アップデイトにちょっと時間が空いてしまいました。すみません。帰国前にアップしようと思っていたのですが、ままならず、2日がかりのフライトを経て先ほど成田に帰国しました。金曜日の夜、時間を予想通り超過して、コナクリ会議が閉幕しました。終わったのはいいものの、何から書けばよいのか正直困る会議で、昨日や今日もあれこれ考えていました。

結論から言うと、特に目新しい成果というのはないのですが、ドーハ会議に向けた「コナクリ宣言」のフランス語版を採択(?)して閉幕し、残された課題は次回の議長国フランスでの総会に引き継がれました。15日の金融サミット、29日からのドーハ会議などの議論と成果を踏まえつつ、来年2月~3月のパリ会議に向けて、フランス外務省のがんばりを期待したいところです。

さて、この会議で正直困ったこと。

①とにかくフランス語圏の国が多かったので、ほとんどフランス語ばかり。英語通訳の質が悪く、レシーバーも雑音がひどかったので、何を言っているのか理解するのに苦労した。
②随時、ペーパーが配布されるけれども、ほとんどフランス語。英語はないのか?と聞いても「ない」と言われ、たまに英語ペーパーが配られても部数が足りず、もらえないこともあった。
③会議の中身に関して、事前の準備(各国との間の調整)が十分でなく、議事進行も何が決まったのかはっきりしない。

というような感じで、大変でした。という前置きをしたうえで、今回の会議の概要を以下の通り報告します。コナクリ宣言やNGOの発表など、他にもいろいろと報告したいことはあるのですが、後日まとめたいと思っています。それでは。

高木晶弘

【コナクリ会議 概要】

革新的な開発資金メカニズムを主導する多国間の枠組み、「連帯税リーディング・グループ」の第5回総会は、議長国のギニアの首都コナクリで2日間にわたり開催された。ギニア首相や国連ドストブラジ氏が参加し、フランス、ノルウェー、英国、イタリア、スペイン、ブラジル、チリ、セネガルなどのリーディング・グループ常連国に加え、フランス語圏を中心とした多くのアフリカ諸国が参加した。市民社会からは、英国、スペイン、イタリア、カメルーン、日本の5団体が参加した。

当初、テーマごとに9つものラウンドテーブルが予定されていたが、変更されてすべてプレナリー形式で議論されることになった。会議では、これまでのグループの枠組みで実施されている航空券連帯税/UNITAID、IFFim/GAVI、AMCが報告されるとともに、デジタル連帯基金、リミッタンス、気候変動、民間と連携した自発的寄付とミレニアム基金プロジェクトなどについても報告・議論された。ノルウェー政府が議長を務めていた「不正な資本フローに関するタスクフォース」の議論の成果も発表され、今後取り組みを強化していくために、「不正な資本フローに関するグローバル・タスクフォース」を設立することが発表された。

また今回は、国連開発資金に関するドーハ会議にむけて、リーディング・グループからのインプットをしようという目的があった。2日目の午後に、フランス外務省から提示された「コナクリ宣言」のドラフトを議論し、最終的にフランス語版は合意された。今後、英語版での修正・確認作業を経て、同宣言はドーハ会議で発表されることになった。「コナクリ宣言」は、これまでリーディング・グループが達成してきた革新的なメカニズムによる開発資金の増額と実施プロジェクトの成果を確認するとともに、金融危機による開発資金への影響を考慮し、この取り組みの一層の重要性を再確認したものである。同時に、ドーハ会議において、革新的資金メカニズムに関するサイドイベントをリーディング・グループが開催することで合意した。

世界銀行の担当者からは、革新的資金メカニズムに関する議論の整理がなされ、同時に保健分野でのイニシアティブが乱立している状況についての課題も示された。UNITAIDのトップである、ドスト・ブラジ氏(革新的資金メカニズムに関する国連特別顧問)は、国連ミレニアム開発目標の達成にむけて、今後さらに取り組みを強化する必要があり、革新的資金メカニズムに対する各国の政治的意思の重要性や、主要国の参加の重要性を強調した。日本政府が今回正式参加をしたことは、折に触れて言及され、歓迎を受けた。日本政府を代表して植野氏(外務省国際協力局多国間協力課長)があいさつし、「このグループでの議論や経験を共有していきたい」と述べた。

9月にニューヨークで発表された、ノルウェー、英国、WHOなどが主導する保健システム強化のための革新的資金メカニズム構想については、言及はされたものの、詳細については報告されなかった。10月にドイツが発表した脱税・租税回避に対処するための「International Tax Compact」提案についても、ドイツ政府の代表が参加しなかったこともあり、詳しい報告はなかった。これについては、ノルウェーが主導する不正な資本フローへの取り組みと重なるために、今後何らかの調整が行われるのではないかと思われる。いずれの議論も、ドーハ会議においては何らかの進展があるものと期待されるが、リーディング・グループとの関係性については現段階で不明瞭である。

市民社会のプレゼンテーションは、初日、カメルーンのNGOが声明を発表した。ダカール総会での市民社会の議論をベースにしつつ、ドーハ会議の重要性とリーディング・グループのさらなる行動の必要性を指摘した。通貨取引税に関するセッションでは、英国Stamp Out Povertyのデイビッド・ヒルマンがプレゼンテーションを行った。金融危機はリーディング・グループにとってチャンスであり、通貨取引税という大きな開発資金源を、開発・気候変動・金融・食料・燃料などの緊急の課題が差し迫った今だからこそ見逃すべきではないと各国に呼びかけ、ドーハ会議を念頭におきながら次回のパリ会議において積極的にこれを議論するべきだと提起した。イタリア、スペインのNGO参加者からも通貨取引税の議論をもっと進めるよう発言があった。一方、政府関係者からは、チリがこの問題への多国間の取り組みと市民社会との連携の重要性を指摘したが、他には特に力強いサポートの声はなかった。世銀からは「魅力的な財源であることは理解しているが、今後もしばらく議論の動向を見守りたい」という発言があった。

金融危機とG20サミット、アメリカ大統領選挙、ドーハ会議など、国際的な政策環境としては重要な時期を迎えているが、各国政府代表者の参加レベルもそれほど高いとはいえず、全体を通して、連帯税リーディング・グループがさらなるイニシアティブを発揮していこうという機運にはやや物足りなさが感じられた。議長国はギニアからフランスへと移り、次回のプレナリー会合は2008年2月~3月にパリで開催される予定である。サルコジ大統領が金融危機への対処に意欲を示しており、ドーハ会議の議論も踏まえつつ、次回のパリ会合では金融規制に踏み込んだ議論がなされるよう期待される。現在NGO側としては、次回議長国のフランス政府に対し、通貨取引税に関するタスクフォースの設立を働きかけを行っている。UBUNTUなどの複数のNGOは、ドーハ会議に向けて、すでに独自にNGOの通貨取引税タスクフォースを組織して提言を取りまとめている。
◆参照 UBUNTU ウェブサイト

また、市民社会側は、ヨーロッパの一部のNGOはフランス政府と緊密に連絡をとり、ノルウェー主導のタスクフォースの議論にも貢献しているところだが、ドーハ・プロセスのNGOや南のNGOを含めた市民社会間の連携が必ずしも十分な状況とはいえず、来年のパリ会議に向けて連携強化が必要である。一方、今回の会合には韓国政府が欠席したため、日本の市民社会として働きかけをさらにしてほしいとの声もあったが、日本国内の取り組み・動きについては積極的な評価をもらうことができた。また、国連ドストブラジ氏は、日本への訪問も考えていることを非公式に語った。(了)

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