グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

タスクフォースへの委任事項(国際金融取引タスクフォース)

2009-12-07 | 国際連帯税&リーディンググループ国際会議
               タスクフォース閣僚級会合の模様(外務省HPより)

開発のための国際金融取引に関するハイレベルタスクフォース

本タスクフォースへの委任事項(10月22日合意)


I/ 背景および目的


1.1. 現在の経済・金融危機以前から、金融取引税や国際金融取引における自発的貢献を含む革新的資金調達の問題には、いくつかの国々および多くのNGOが関心を寄せていた。

1.2. 2004年にブラジル、チリ、スペイン、フランスから成る4カ国グループ(「革新的資金調達メカニズムに関する専門グループ」)が国連事務総長に提出した報告書では、このような税の可能性を取り上げ、次のように結論付けた。「(前略)壁にも拘わらず、非常に低率の税を金融取引に課税するという提案は、市場の通常の機能を妨げることなく、多額の開発資金源を安定した予測可能な形で徴収することにつながる」。同報告書は同様に、クレジットカードに基づく自発的な開発資金調達メカニズムの可能性についても取り上げた。

1.3. このようなメカニズム導入の当否は、「開発のための革新的資金調達に関するリーディンググループ」においても2006年の開始時から議論されてきた。この議論は、同じ基盤を使用した世界的な協調に基づく開発資金調達のための税導入に関する議論に沿って行われてきた。これはグローバル化した活動により創出された富のほんの一部分を再分配するための手段となる。航空券連帯税はその一例である。

1.4. 国際経済・金融危機は、革新的資金調達の課題が再浮上するもう一つの理由となった。同危機の世界的影響により、我々が開発へのアプローチを一新する必要性、および途上国の基本的ニーズに応えるために外部的打撃を緩和する必要性が実証された。ミレニアム開発目標(MDG)の達成に関わる課題は、革新的資金創出メカニズムの使用を「拡大」する正当な理由となる。現在では、これらメカニズムの付加価値が認識されている。つまりこれらメカニズムは、より安定した予測可能な資金フローを生み出し、これは従来のODAを補完し、グローバリゼーションおよび各国の市場開放により創出された富を再分配する。このような新たな関心を示す証拠として、同課題は国連、欧州連合を含むいくつかの国際フォーラムにおいて議論されてきた。G20もまたIMFに対し、「金融セクターが銀行システムの修復のための政府の介入に関係するいかなる負担に対し公平かつ実質的な貢献をどのようになし得るかについての各国がとってきた又はとることを検討している一連の選択肢に関し、(中略)報告書を準備するよう」依頼した。ここでは金融取引税も検討される可能性がある。多くの政治指導者、国際機関の代表者および規制当局は最近、このようなメカニズムが開発のための資金調達および/または国際金融フローを規制するのに使用できる可能性を示唆した。後者に関しては、乱高下を伴うフローを抑える、および/または過度のリスクを冒す行動を不利にするというものである。

1.5. このように高まりつつある関心事項に取り組むべく、同メカニズムへの支持を促進する主要フォーラムである「開発のための革新的資金調達に関するリーディンググループ(Leading Group on Innovative Financing for Development)」議長国は、2009年5月28、29日にパリで開催された第6回総会において、金融取引税および国際金融取引における自発的貢献の技術的、法的実現可能性の評価および、これに関する全ての選択肢の検討を行うためのタスクフォースを設立することを提案した。ゴードン・ブラウンおよびロバート・ゼーリックが議長を務める「保健システムのための革新的資金調達に関するタスクフォース(Taskforce on Innovative Financing for Health Systems)」もこのイニシアティブに関わっている。5月29日にパリで開催された同タスクフォースの会議では、同タスクフォースはこの構想を引き続き選択肢として残している(金融市場、金融管轄区域間の競争、および資本フローの移転に対する潜在的影響を考慮に入れつつ金融取引税の実現可能性を検討することも含め)。

II/ 「国際金融取引および開発に関するパリ タスクフォース(IFTD)」:参加者、目的および運営


2.1. 「国際金融取引および開発に関するタスクフォース(IFTD、Taskforce on International Financial Transactions and Development)」の設立は、5月29日のリーディンググループ パリ会議における議長国の最終結論で提案された。本タスクフォースは各国の代表で構成され、必要に応じて国際機関やNGOの代表の助言を求める。本タスクフォースは今後、リーディンググループに対する報告書提出の期限である2010年5月までに、閣僚級または政府高官レベルで3、4回会合する。

2.2. 本タスクフォースへの関心を最初に表明し2009年9月15日のパリ準備会合に出席した国は、オーストリア、ベルギー、ブラジル、チリ、フランス、ドイツ、日本、ノルウェー、セネガル、スペイン、英国である。フランスはリーディンググループの常設事務局として、これら議論の支援、促進を申し出ている。これらの議論は多くの関心を持つ国々に開かれたものとなる。

2.3. 本タスクフォースの目的は、国際金融取引に基づく税または自発的貢献の実現可能性および、これらメカニズムによる開発資金調達の可能性を検討するため、最新の選択肢リストを明示することである。本タスクフォースは、専門家委員会の提案に基づき、大臣らに提言を行う。参加者らはこれらの提言に関し必ず合意に達するよう努力する。提言は、各選択肢をどの程度支持すべきかを評価するために提示するものとする。そのために、本タスクフォースは現実的な枠組みの中で(技術的な実現可能性、収入の可能性、市場への影響、実体経済への影響などを含む)各選択肢の費用便益分析を行う。提言にあたり本タスクフォースは、競争の歪みが生じるリスクおよび支払い回避のリスクに関し、特に注意を払う。また本タスクフォースは、「技術的、法的実現可能性」と、「各選択肢に対する政治的な当否」とを明確に区別することにより、この課題について客観的な議論ができるよう努める。

2.4. 本研究では、国際金融取引の行われる場所、役割、出来高、世界経済における同取引への参加者(仲介業者および市場規制機関を含む銀行セクター)の分析、および2015年というMDG達成の目標年に関連する開発資金ニーズの分析を行う。また、金融取引に基づく革新的資金調達がどのような方法でMDG達成に寄与できるかを分析する。このプロセスの終了時に、専門家による研究を利用して評価を行い、全ての条件が満たされていた場合に、提案されたメカニズムを導入するか否かは、政治指導者らに委ねられる。

III/ 国際専門家委員会:参加者、目的および運営


3.1. 本タスクフォースは少人数のハイレベル専門家グループ(最大8~10名)に依存することとなる。これらの専門家は、各自のマクロ経済、税、金融課題、および/または開発資金調達、法的事項に関わる能力に基づき、参加国の合意によって選ばれ、2010年5月に本タスクフォースに提出されることになる各種選択肢に関して、報告書草案を作成する任務を課される。同専門家らは2010年1月までに進捗報告書を、2010年3月までに暫定報告書を、2010年4月までに最終報告書を発表する。

3.2. これら専門家は、金融取引に基づく税および自発的貢献を使用した、技術的に可能な様々な開発資金調達の選択肢に関して、報告書を作成する任務を担う。その内容には、これらメカニズムが実際にどのように機能するのか、実施の条件、その効果(費用便益分析、歪みが生じるリスクの可能性)、既存の開発金融手段との一貫性、追求する目的(開発のための追加的資源の創出)を含む。同専門家らは、通貨取引税を含む金融取引税および、国際金融取引に基づく自発的な連帯メカニズム(企業の環境、社会的責任および倫理的金融の分野における銀行セクターのイニシアティブなど)の両方を扱うこととする。同専門家らが扱うべき詳細な質疑を別紙に示す。他の質問も後に提起される可能性がある。

3.3. 予算および会議開催地
財源を確保するため、関連費用の見積もりを含む明確なプロジェクト計画があることが重要である。専門家委員会の経費は、彼らの雇用者により支払われるのでない限り、タスクフォース参加国による自発的貢献により賄われる。専門家らは、委員会経費の合理的な管理のために可能な限りテレビ会議やEメールなどの電子的な手段で連絡を取る。本タスクフォースおよび専門家委員会の事務局はリーディンググループ常設事務局により確保される。本タスクフォースおよび専門家委員会の会議は参加国の招待に基づき参加国において開催される可能性がある。


別紙:国際専門家委員会への主要質疑

国際金融取引の背景

‐金融取引税および/または金融セクターによる自発的貢献の論理的根拠および動機は何か。特に、金融業界自体がこの種のイニシアティブに直接的または間接的な関心をどの程度持つ可能性があるか。
‐考えうる開発連帯貢献金の基盤となりそうな、主な国際金融取引の部門と種類は何か。
‐それらに対する現在の課税レベル(および開発資金調達への間接的な貢献)は世界的にどの程度か。各国レベル、地域レベルにおける既存(または過去)の金融取引税の例、経験にはどのようなものがあるか。
‐銀行グループ、他の金融参加者、取引の機構の状況はどのように推移してきたか(彼らの活動の集中や地理的およびセクター別の発展、単一またはいくつかの市場における取引の中央集権化または中央集権化の不在、店頭市場および取引の内部化の重要性)、また現在進行中の議論に関してどのような結論が導かれるべきか。
‐国際金融取引を統治する国際的な法的公共手段の中で主要なものは何か。
‐歴史上、このような税の事例にはどのようなものがあるか、またこれらの事例からどのような教訓が得られるか。
‐取引はどのように決済され、契約されるか(決済、店頭取引vs.正式な市場取引)。また特に追加的コスト(課税)を回避するために将来起こりうる変化は、どの程度現実的、実際的か、またそのような変化の可能性はどの程度あるか。

金融取引税:実現可能性と条件

‐金融取引、金融サービス、金融フローに基づく義務的および/または自発的な連帯貢献金を世界レベルで協調した形で設立するための、理論的に可能な選択肢にはどのようなものがあるか。
‐どのような方法でこれらの選択肢を考慮に適した提案数に絞ることができるか。
‐それぞれの選択肢を技術的、法的に実現可能にする条件は何か。
‐世界レベル、または主要な金融管轄区域および/または特定の地域で導入できるものについて、合意に達するために必要な条件は何か。
‐このようなメカニズムを実施するために必要な条件と問題の予防措置は何か。
‐このようなメカニズムの実現可能性調査に深く関与できる機関はどこか。例えば、我々は国際決済銀行または世界銀行の国際的な専門知識に頼る必要があるか。
‐それぞれの選択肢の経済、金融に対する影響はどのようなものか、またその影響はどうすれば抑制できるか(資本逃避や市場移転のリスク、取引高の減少、リスク管理やヘッジング関連への影響、支払い回避など)。国際的な法的公共手段(の拡大)のうちどれがこのようなリスクの軽減に役立つか。
‐金融市場の中で、資本や金融サービスの移転リスクおよび支払い回避の対象になりにくく、課税の実現可能性がより高い分野はあるか。
‐開発資金調達のために全く新しい税が導入されるべきか、または既に存在する税に追加的貢献を求めることを検討できるか(いくつかの国が協調して課税額を増やす)。
‐税に関する属地主義の原則を考慮すると、金融セクターにおける貢献金の徴収はどのように行えるか。最も貢献するであろう国および金融センターはどこか。
‐この税の金銭的負担は誰が負うことになるか、最終的に支払うのは誰になるのか。また金融業者がこの税の負担を特定の種類の顧客(低所得者納税者、途上国における金融サービスのユーザー)に負わせることのないようにするにはどうすればよいか。
‐このようなメカニズムの実施プロセスと実施にかかる時間枠はどのようなものか。

収入の見込みとその使用

‐考えうるそれぞれの基盤と率による開発資金調達の可能性を評価するために、この種のメカニズムに関し知っておくべき事項は何か。
‐世界全体における税収額の分配はどのようなものになるか(誰が支払い、誰が受け取るか)。
‐課税により徴収される税収の監視および報告は誰が担当しうるか。
‐どの程度安定、予測可能な資金調達が期待できるか。
‐この種の課税は開発資金調達に適しているか。この種の資金源を当てるのに最も適切なニーズ(周期的または非周期的)および目的にはどのようなものがあるか。
‐新たな資金調達の手段が、既に非常に分断化された援助構造の妨害となり効率的な援助の実行を妨げることにならないよう保証するにはどうすればよいか。
‐このメカニズムは他の開発資金調達の方法と整合性が取れているか。
‐この資金調達メカニズムは他のメカニズムより効果的か。

自発的貢献

‐自発的貢献に関して、どのようなイニシアティブが既に存在するか(クレジットカード取引に基づく自発的貢献など)、また我々はこれらをどのように支援し調整できるか。
‐より全般的に、企業の環境、社会的責任の分野における国際基準の関連で(エクエーター(赤道)原則など)、金融機関およびその顧客が持続可能な開発の問題により注意を払うようにするために、どのような提言ができるか(社会的責任投資、倫理的貯蓄商品など)。
‐各国が(仲介機関および市場規制機関を含む)銀行セクターに対し自発的かつ協調した形で開発資金調達に貢献するよう強く促すにはどのような方法を取りうるか。
‐このようなメカニズムの実施プロセスと実施にかかる時間枠はどのようなものか。また各国はこれらメカニズムに貢献することができるか。

変化の政治経済学

‐各種選択肢の支持者およびその反対者となりうるのは誰か。

原文:http://www.leadinggroup.org/article467.html



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