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感染症内科への道標

研究学園都市つくばより感染症診療・微生物検査・感染制御の最新情報を発信しております。

ウィップル病総説

2022-06-03 | 微生物:細菌・真菌
論文:Whipple's disease and Tropheryma whipplei infections: from bench to bedside
雑誌:Lancet Infect Dis. 2022 Apr 12;S1473-3099(22)00128-1.
著者:Asma Boumaza, et al.


トロフェリマ・ウィッペリイ 
・生体内のマクロファージに存在する棒状の細菌 
・細胞膜を持つ
・放線菌とCellulomonadaceaの間に分類 
・土壌中に存在し欧州では下水から頻繁に検出 
・細菌で満たされた泡状のマクロファージが粘膜固有層に浸潤 → 細胞外で増殖できるかは不明

古典的ウィップル病 
・有病率は100万人あたり1.1例 
・中年の白人男性に多い
・慢性消化器症状(下痢、腹痛)を伴う関節症状

慢性限局性感染 
・胃腸症状を伴わない局所感染、主に慢性関節炎 
・ほか、感染性心内膜炎、中枢神経感染(認知障害、運動失調、核上性眼筋麻痺)など

急性感染
・環境中に多く存在するため、菌血症、胃腸炎、肺炎がありえる

無症状保菌
・フランスでは保菌は便で約4%、唾液で0.2%
・口腔・糞口ヒト-ヒト感染する可能性あり

感染性因子
・多くは感染しても除去され、一部がキャリアとなりさらにその一部が発症
・北米と西ヨーロッパで多く、アフリカとアジアでは少ない(保菌はある)
・別の株に再感染する可能性あり

診断
・定量的PCR、病理、免染、FISH

古典的ウィップル病
・スクリーニング:便や唾液の定量PCR:陰性であれば否定的(尿検体の有用性は未定)
・十二指腸生検のHE染色・PAS染色:菌体を含んだ泡沫状マクロファージの粘膜への浸潤(MACはPAS染色されうるためT.whipplei抗体を用いた免染やZN染色を併用)
・生検サンプルを用いたFISHも有用
・無症状保菌者でも陽性となるため血清学的検査はルーチン使用しない

慢性限局感染 
・組織・穿刺液の定量PCR(血液や髄液は陰性が多い)、組織の病理・免染
・リウマチ疾患疑いの抗菌薬で症状改善や、免疫抑制剤による悪化は逆説的に示唆

治療
・1990-2000年代 SM + PCG or CTRX 2週間 → ST合剤 1-2年間
・2014年- DOXY + HCQ 12-18ヶ月 → DOXY終生
・ST合剤はトリメトプリムに感受性がないため疑問視されている
・キノロンは無効
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