感染症内科への道標

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B型肝炎スクリーニングと予防接種(米国内科学会ガイドライン 2017)

2018-01-09 | お知らせ
題名:Hepatitis B Vaccination, Screening, and Linkage to Care: Best Practice Advice From the American College of Physicians and the Centers for Disease Control and Prevention
著者:Winston E. Abara
雑誌:Annals of Internal Medicine. 2017;167:794-805.


【背景】
HBVキャリアの2/3が感染に気付いていない。慢性感染者の15-40%が肝硬変、肝細胞がん、肝障害に至り、25%でこれらの前段階になる。HBVの予防接種やスクリーニングに関してCDC、USPSTF、AASLD、ACIPがガイドラインを出しているが、推奨はガイドラインごとに異なる。ガイドラインごとの共通点を探り、またエビデンスを統合して最良のプラクティスを模索した。
なお、本研究はCDCおよびACP High Value Care Task Forceの承認を得て行われている。

【予防接種】
・HBV感染予防では最良の方法である。40歳未満では90%以上の予防効果があり、最低30年間は免疫が持続する。
<以下の患者に投与推奨>
a)性交渉
 ※パートナーがHBs抗原陽性、パートナーが複数、STDの治療を希望する人、MSM
b)経皮および経粘膜で血液曝露の危険がある
 ※静脈薬物の使用、HBs陽性患者の家族、障害者施設の入居者・職員、刑務所施設・医療機関・public safety worker(消防員や警察など)の職員
c)慢性肝疾患を持つ患者(HCV感染、肝硬変、脂肪肝、アルコール性肝疾患、自己免疫性肝炎、ALTやASTが上限の2倍以上)
d)末期腎不全患者(透析前のケア、血液と失せ液、腹膜透析、自宅内透析)
e)HIV感染患者
f)HBV感染のリスクがある妊婦(6か月以内にパートナーが1名以上、STDの既往、静脈注射使用の既往、パートナーがHBs抗原陽性)
g)中-高リスク地域への国際渡航者
h)希望者は全員に接種する


【スクリーニング】
高リスク患者ではHBsAg、HBcAb、HBsAbのスクリーニングを推奨。以下のような場合が高リスクとみなされる。
・有病率が2%以上の国の出身
  アフリカ全域
  アジア全域
  カリブ海周辺:アンティグア島, バービュダ島, ドミニカ, グレンダ, ハイチ,ジャマイカ, セントキッツ島, セントルシア, タークス・カイコス諸島
中央アメリカ:グアテマラ、ホンジュラス
東欧:ハンガリー以外の国
  中東:キプロスとイスラエル以外の国
  北米:北カナダの先住民族
  南米:ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ギニア、スリナメ、ベネズエラ
  南太平洋:オーストラリア、ニュージーランド以外の全ての国   ※ただし、先住民族では有病率高い
  西欧:マルタ、グリーンランドの先住民族
・MSM
・静脈注射の使用
・HIV陽性患者
・HBV感染者との家族内及び性的接触
・免疫抑制薬の使用が必要な患者
・末期腎不全
・血液や組織のドナー
・HCV感染者
・ALT上昇(女性:19 IU/L以上、男性:30 IU/L以上)
・刑務所に収監中
・妊婦
・HBV感染のある母親から生まれた新生児

【スクリーニング後の対応】
HBs抗原陽性者は全て専門治療につなげる

【予防接種やスクリーニングの副作用】
副作用はまれであり、いずれも軽症である。最も多いのは接種部位の痛み(3-29%)
軽い発熱(1-6%)。アナフィラキシーの報告はあるが、110万人に1人の発症率と非常にまれ。イーストアレルギーがある場合には禁忌である。
HBVスクリーニングの負の側面としては、検査結果への不安感、社会での差別的待遇、恥辱感や抑うつ、治療コストがあげられる。

【考察】
米国ではガイドラインの順守率が低く、予防接種の接種率は低い。以下のような対応を行えば、診療が向上する可能性がある。
・患者への啓蒙を行う
・臨床家はリスクのある患者を認識し、スクリーニングや予防接種を適切に行う。また、HBV感染のある患者は専門医に紹介する。
・電子カルテのリマインダーを用いる
・患者の文化や文脈に応じた対応を行い、必要な治療に導く
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