地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

中国・青島と労山

2010-07-29 | おでかけ
中国の青島(チンタオ)に来ています.冬に研究室に滞在していた,中国海洋大学の王さんとの共同研究のためです.2年前に次ぐ訪問で,今回は,青島の郊外にある労山(ラオシャン)の地形の概要を調査しました.

青島は良港として知られており,北京オリンピックの際にはヨット競技が行われました.一方で背後には急峻な山地があり,労山の最高点は1133メートルです.労山があるおかげで,青島では良質な湧水や地下水が得られ,これが青島ビールにも使われています.

王さんは海底の地形や堆積物を研究してきましたが,僕は陸地,とくに上流域の研究をしてきたので,共同研究の接点を探していました.この点で,海洋大学のすぐ近くに山があるのは幸いでした.

写真は,労山の北東側の海岸で撮影したものです.海のすぐ近くに花崗岩の山地があります.このような景観のため,労山は「海上第一仙山」と呼ばれています.トアや半円ドームのような,特徴的な花崗岩地形が多数みられます.

労山の谷沿いを中心に調査したところ,地形はとても急峻ですが,現在の土砂流出は少ないことがわかりました.ただし,過去には土石流などによる土砂流出が活発であった痕跡もみられました.写真でも,山麓に緩斜面が発達しているのがわかります.今は密な植生に覆われていますが,緩斜面の形成時には物質移動が活発だったはずです.

この種の緩斜面は,韓国で田中さんらが指摘しているように,堆積面か侵食面かの見極めが難しいようです.また,労山に関する既存研究は,地質構造やテクトニクスに関するものが多く,斜面の地形分類等は新たに行う必要があります.これらの点も考慮しつつ,共同研究を進めていきたいと思っています.

You will follow every mountain, sea and shore.
You will see from far and near a world you've never seen before.
(On a Clear Day You Can See Forever / Barbra Streisand)

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2 コメント

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労山、岳人 (田代博)
2010-08-09 20:38:42
山岳雑誌の「岳人」を読んでいたところでしたので、こちらを拝見して、労山を勤労者山岳連盟のことかと思ってしまいました(^_^;)。その「岳人」誌9月号に、「山っぷ」(山岳立体地図画像)の紹介記事を書きました。編集部から肩書きを聞かれたので、「東京大学空間情報科学研究センター協力研究員」でお願いしました。
高校はやめたのですね、という反応があるかどうか、楽しみ?です(^_^;)。
(名前だけで申し訳ありませんm(_ _)m)。
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超山岳人 (OGU)
2010-08-10 06:18:47
田代先生,コメントとセンターの宣伝,ありがとうございます.百名山制覇まであと少しととのこと,超山岳人と思います.

山岳連名「労山」のサイトを見てみました.「労山連」の方が,人の集まりと即座にわかりますが,2文字が良かったのでしょうか.

青島の労山ですが,崂山,勞山という記述もあり,現地では崂山が多かったようです.ただ,読む人の環境によっては文字が化けそうな気がしたので,無難な「労」でタイプしました.

こういうときは,現地読みで「ラオシャン」と書くのが良いのでしょうか? ただ,中国・台湾の場合には違和感もありますよね.
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