地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

山陰海岸ジオパークの歌

2010-10-05 | 音楽
山陰海岸ジオパークが世界ジオパークに認定されました.日本では洞爺湖有珠山,糸魚川,島原半島に次ぐ四例目です.おめでとう!

以前,香住海岸の遊覧船に乗ったことを思い出しました.節理が発達した玄武岩からなる,鎧のような岩壁など,見事な風景を見ました.今回の認定は,このような岩石海岸と,鳥取砂丘などを含む全長110 km の範囲です.

ところで以前にツイッターで,山陰海岸ジオパークのキャンペーン・ソングを,人文地理学者の河本大地さんに教えていただきました.YouTubeで聞くことができます.男女のデュエットで,演歌調で,妙に耳に残ります.「玄武岩の玄さん」といった面白いキャラクターも登場します.

この歌を知った少し後に,ギターで歌おうと思い,歌詞とコードを採りました.昔,バンドをやっていた頃には,さんざんやった作業ですが,今回は久しぶりでした.この機会に公開します.男女のデュエット曲のためか,僕にはキーが低いです.

「なごやか紀行にいい気分」
(悠々・ジオパーク/京 光恵・東山 城)

若きジョン・レノンとマイク・バッティ

2010-07-07 | 音楽
ジョン・レノンは僕にとって特別な存在です.中学~高校の一番のアイドルでした.高3の冬に彼が射殺されたときには,本当にショックでした.その数ヶ月後の大学入試で,"Give me a [  ] to explain" という穴埋め問題が出ました."Give peace a chance" を連想して,"chance"と書きました.ジョンが正解を教えてくれたと感じました.

ところで,ロンドン大学のマイク・バッティ(M. Batty)教授は,GISの世界的に有名な研究者です.彼は,CASA(Centre for Advanced Saptial Analysis)のセンター長で,僕が勤務している空間センターとも交流があります.

彼が来日したときに,出身がリバプールだと聞きました.僕がビートルズが好きだと言うと,ジョン・レノンと同じハイスクールを卒業したと教えてくれました.学校の名前はQuarry Bank High Schoolで,ジョンは数年先輩とのこと.不良のジョンは校内の有名人で,当時から知っていたそうです.ちなみに,ビートルズの前身のバントであるQuarrymenは,この学校から名前をとっています.

マイクは大学のホームページに,1957年5月の学生の集合写真を載せています.解像度は低いですが,マイクとジョンを見ることができます.マイクは最前列の右から3人目,ジョンは後ろから3列目の左から7人目です.ジョンのリーゼントの髪型は,当時の不良=テディ・ボーイのスタイルです.なお,この少し後の7月6日に,ビートルズの歴史を語る際によく使われるQuarrymenの写真が撮影されています.ジョンがポール・マッカートニーと出会った日のものです.

マイクには,次回の来日時に,さいたま市のジョン・レノン・ミュージアムに一緒に行こうと話しました.しかし,ミュージアムは間もなく閉館なので,残念ながら一緒の訪問は実現しそうもありません.閉館前に何かグッズを買い,彼に郵送しようと思っています.

I'll do anything for you.
Anything you want me to.
If you'll be true to me.
(In Spite of All the Danger / Quarrymen)

ソウルのLPパブ

2010-04-22 | 音楽
僕が海外を本格的に経験したのは30代です.欧米には20代以前には全く行っていません.よって,英語によるコミュニケーションに,当初はかなり苦労しました.ただし幸いだったのは,中学の頃から洋楽を聴いていたことです.意味が不明でも耳が音に慣れていたようです.これがなければ,30代からの英会話の修得には一層苦労したでしょう.

先月,ソウルでGIS教育の調査を行った際に,元地理学教室の同級生で,今はソウルの慶熙大学校で教授をしている田中君と夕食を共にし,お互いの研究について情報交換をしました.学生時代には,彼と音楽の話をしばしばしましたが,共通で好きだったのがローリング・ストーンズです.院生だった1990年には,東京ドームで行われたストーンズの初来日コンサートに一緒に行きました.

夕食の後,彼が連れて行ってくれたのが,洋楽のLPレコードが大量に置いてある「サンタナ」というパブです.いかにも洋楽オタクという風貌のマスターに頼み,ストーンズのLP "Let It Bleed"(写真の右上にジャケットあり)をかけてもらいました.飲んでいたのは青島ビールで,韓+日+英+中という実に不思議な組み合わせでした.

アナログの音を久々に楽しんでいたところ,A面が終わり,マスターがターンテーブルに駆け寄ってLPをひっくり返しました.その時に猛烈な懐かしさを感じました.昔は自分もさんざんやっていたことですが,CDの時代になって以来,すっかり忘れていました.

マスターにそのことを伝えたところ,彼はうなずき,流れていたB面の最初の曲に引っかけて,「You are a midnight rambler!」と言いました.しゃれたやりとりと音楽のお陰で,ビールが実においしく感じられました.

Yeah, everybody got to go.
(Midnight Rambler / Rolling Stones)

地図の歌

2009-11-23 | 音楽
僕の自宅の最寄り駅は京浜東北線の北浦和駅ですが,武蔵野線の東浦和駅もときどき利用します.毎年,11月から年末まで,東浦和駅前の広場にクリスマスツリーが点灯されます.派手ではないですが,見ていると家庭的な暖かみを感じます.

先日,夜7時過ぎに電車から降りたところ,駅前広場で女性がキーボードを弾きながら歌っていました.10秒ほど聴いた時点で,すっかり魅了されてしまいました.優しく透明な声に穏やかな曲.クリスマスのイルミネーションと見事に調和していました.キロロを連想しましたが, 独自性も感じました.

すぐにバスに乗る必要があったため,聴けたのは1分間くらい.キーボードの脇に書かれた「あえか」という名前を急いでメモしました.家に帰ってネットで検索したところ,春日部市のミュージシャンと判明.インディーズで高い評価を受け,最近アルバムを出したとのこと.

さっそくアルバムを入手して聴いたところ,駅前ライブの印象どおりでした.歌詞とメロディがきれいにかみ合った曲と,一音一音に微妙な抑揚がついた歌い方に癒されました.

アルバムの最後の曲は「地図」です.感動的な佳曲で,小坂明子の「あなた」と同じ旋律が一瞬聞こえるのが懐かしく感じられました.地理学を専門とする僕は,一般の人が「地図」の語をどう認知しているのかに興味があります.あえかさんの「地図」は,心の中にある情報の集合のような概念で,この点では尾崎豊の「十七歳の地図」と共通といえます.一方,あえかさんは,地図が書き換えられる過程で,新しいことが可能になるかもしれないと歌っています.

この視点は,都市などの発展を地図に示した場合と似ていると思います.たとえば地図に鉄道が加わることは,新たな行動が可能になったことを意味します.地図というと,現在もしくは過去の静的な情報を連想しがちですが,将来への期待と結びつけている点が新鮮に感じられました.

なお,少し前に地形学に関連する番組と記した「ブラタモリ」の最後には,井上陽水の「Map」という曲が流れます.地図はミュージシャンを含む多くの人に,インスピレーションを与えてくれるようです.

***

たとえ今日はできなくても
明日はできるかもしれないよ
だから今はただ前向いて
ただ一歩進めばいいよ
(地図/あえか)

Welcome to the Future

2009-10-03 | 音楽
僕は国際学会の発表に,しばしばジョークを入れる.外国人のジョークは,スライドの合間に一言のような形が普通だが,僕は専用のスライドを使ったりする.笑いがとれると嬉しくなる.もちろん発表は科学を伝えるものであるが,パフォーマンスという面もある.実際,発表をしている時に,かつて文化祭でギターを弾いた時に似ていると感じたことがある.

先日,台湾の学会から戻る飛行機の中で,アメリカのカントリー歌手であるブラッド・ペイズリー(Brad Paisley)の"Then"を聴いた.6月にビルボードのカントリー・チャートで1位になったバラードで,アメリカでは結婚式の定番になり始めている.ベイズリーが次に出したシングル"Welcome to the Future"は,"Then"ほどは売れていないが,日本人が聴くべき曲である.

まず,歌詞にパックマンが登場する.これは世界のゲームの概念を変えた,日本が誇るべき遺産である.ペイズリーは「子供の時にはゲームセンターのパックマンが自宅にあればと夢見ていたが,今は自分の携帯に入っている」と歌っている.

次に,ペイズリーの祖父が第二次大戦の時に,日本兵と戦うためにフィリピンに駐留していた話が出てくる.続いてペイズリーは「今朝,東京の友達とビデオ・チャットをした」と歌っている.

さらに,この曲のビデオ・クリップには,熊本のカントリー歌手であるチャーリー永谷,熊本城の前に立つ子供,高校生による和太鼓の演奏,動くアシモ,東京の夜の風景などが出てくる.チャーリー永谷は,一部をペイズリーの替わりに歌うほどフィーチャーされていて,見事な友情の瞬間になっている.

曲の後半では,人種差別の解消への願いが歌われる.7月には,ペイズリーがホワイトハウスに招かれ,この曲をオバマ大統領の前で歌った.演奏の前のスピーチでは,「世界は予想を超えて良くなる」という歌の主旨を,オバマ大統領の誕生と結びつけた.演奏の終盤で,大統領とペイズリーが涙ぐんでいたのが印象的である.

ところで,国際的な学術コミュニティーは,欧米の白人を中心に動いていることが多く,他はよそ者というイメージが未だに残っていることがある.僕は,そのような古いイメージを壊す意外性を持ちたいと願ってきた.学会発表のジョークも,そのための一つの試みである.よって,"Welcome to the Future"に大いに勇気づけられた.

ペイズリーの日本での知名度は,カントリーのファンを除くと高いとはいえず,日本語のウィキペディアにも今は項目がない.上記のビデオ・クリップとホワイトハウスでの演奏は,YouTubeで視聴できる.日本と交流があり,素晴らしい思想を語るアメリカのアーチストとして,広く認知されてほしいと思う.

追記:"Welcome to the Future"は,ブライアン・アダムスの名曲"Summer of '69"に少し似ています.

海洋地形学の物語(2)

2009-09-13 | 音楽
8/3の記事で,イエスのアルバム「海洋地形学の物語」の原題にあるtopographic oceansは,底に凹凸がある海と同義であろうと書いた.また,アルバムのジャケットには,海底と砂漠を足して二で割ったような風景が描かれているとも記した.

昨日,改めてジャケットの絵を眺めたところ,海底よりも砂漠に近いように見えた.そして,原題が別の意味を持つ可能性に気がついた.それは,あたかも海のように見える地表を「地形の海=topographic ocean」と表現したというものである.ジャケットでは一部の地表や空中に水が描かれているが,これは風景からの想像を追加で描いたと考えればよい.

この解釈は,エジプトの広大な砂漠を「砂の海=sand sea」と形容する事例や,日本庭園の枯山水と共通の発想である.実際,「海洋地形学の物語」の構想は,イエスが来日していたときに得られたそうなので,枯山水で良いのかもしれない.

僕はすっかり中年になったが,未だに頭がオタクモードになるときがある.昔ほど多くはないけれど.

この件,さらに考えても結論は出ないだろうから,これで打ち止めにしよう.

Baby, don't you know where that's at.
(Stop Thinking About It / Joey Ramone)

海洋地形学の物語

2009-08-03 | 音楽
地形学の語は一般人にはあまり知られていない.研究者の間でも,地形学はマイナーな分野というイメージがあるようだ.たとえば2チャンネルには「全く流行っていない地形学」というスレッドがある.ただしそこには国内の古めかしい話しか出てこない.世界的にみれば地形学は流行っている.雑誌Geomorphologyの規模は,ここ数年でずいぶん大きくなった.

しかし日本でも,意外なことにロックのファンの一部が地形学の語を知っている.プログレッシブ・ロックのバンド,イエスが1974年に発表したアルバム"Tales from Topographic Oceans"の邦題が,「海洋地形学の物語」となっているためである.

この邦題は誤訳である.原題ではtopographicが形容詞,oceansが名詞であるが,逆になってしまっている.また,topographicやtopographyは,形や分布としての地形を意味し,学問としての地形学(=geomorphology)とは異なる.英和辞典では,なぜか「topography=地形学」と記している場合が多いが,地形学者として誤りと断言できる.

それでは原題のtopographic ocean(s)とは何だろうか? 実は海洋物理学の論文で,この語が使われている.一つは形容詞としての用法で,topographic ocean gyres(地形に規定された海の環流)のように使う.もう一つは名詞としての用法で,海流のシミュレーションで海底を平面と仮定しない場合に,a topographic ocean =「底に凹凸(地形)がある海」と書くことがある.

イエスのtopographic oceansは,上記の「底に凹凸がある海」と同義であろう.実際,ジャケットには海底と砂漠を足して二で割ったような,起伏を持つ風景が描かれている.この絵は,多数のロック・アルバムのジャケットを描いたロジャー・ディーンによるもので,彼のベストの作品の一つとされている.

このアルバムの曲は長くて退屈とみなされることが多く,前作が「危機」という大傑作だったこともあり,発表時には多くのファンに失望を与えた.確かに精神を集中して聴くのは難しいが,BGMとして使うと素敵である.よって僕のオフィスでも時々流れている.

誤訳とはいえ,地形学の語を広めてくれたことに感謝したい.

琵琶湖周航の歌

2008-12-20 | 音楽
紀伊に先月連れて行っていただいた京大の千木良先生から,琵琶湖周航の歌のカレンダーとDVDが届きました.びわ湖高島観光協会と京大ボート部が作成したもので,千木良先生がボート部長の河合教授に依頼して下さり,特別にいただいたものです.

発端は,僕が京大でレクチャーをしたときの自己紹介です.学生さんらに「自分は京大出身ではないが,京大には特別の思いがある.なぜなら,京大の愛唱歌である琵琶湖周航の歌を作詞した小口太郎は,遠いけれど親戚なので」と話しました.

小口太郎は岡谷市の湊地区で生まれ,旧制諏訪中学(現諏訪清陵高校)を卒業して三高に進学し,そこで琵琶湖周航の歌を作詞しました.湊は諏訪湖に面した集落で,歌では諏訪湖と琵琶湖のイメージが重なっていると思います.たとえば冒頭の「われはうみのこ」は,諏訪湖を「諏訪の海」と呼ぶ場所で育った人の感性でしょう.

僕の本籍も湊にあり,そこに行くと大半が小口姓です.近くの公園には小口太郎の像があり,20年前の建立の際には僕の親父も寄付をしていました.この像の顔は,確かに親父や僕と似ている気がします.大きめの耳とか...

カレンダーとDVDは年末の帰省時に実家に持って行きます.千木良先生,河合先生,ありがとうございました.

今日までそして明日から

2008-12-17 | 音楽
少し前に紹介したGIS教育の論文の別刷が,佐々木さんから郵送されてきました.封筒を開けると,素晴らしいクリアフォルダに別刷が挟まっているのを発見.吉田拓郎の「今日までそして明日から」の歌詞と,彼の写真やサインが印刷されています.佐々木さんが勤めている広島修道大学の公式グッズで,大学のOBである拓郎をフィーチャーしています.

拓郎は僕にとって非常に重要です.もちろん音楽も好きですが,小学6年の時に見た,衝撃的な映像のために.当時は大晦日の日本レコード大賞がとても話題になっていて,我が家でもテレビを見ていました.森進一の「襟裳岬」が大賞をとると,作曲者の拓郎も受賞式に登場.彼は上下ともジーンズ,しかも片足を横に投げ出して立っていて,森進一らが正装で直立しているのとは対照的.びっくりしましたが,素晴らしいメロディを書いたのが彼である以上,誰も文句を言えないことに気づきました.そして,「これはカッコイイ!」と思いました.

今同じことが起きても,驚く人は少ないでしょうが,当時はまだ古き日本の,礼節が優先された時代.その中で,形式ではなく実質こそが重要なことを知らされました.これが自分に与えた影響は大きいです.

ところでYouTubeで検索したところ,上記の場面を数十年ぶりに見ることができました.良い時代になったものです.キャプチャして上に載せましたが,著作権とか大丈夫? もし問題があれば,教えて下さい.