弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

米・黒人少年トレイボン・マーティン殺害事件の自衛団員、殺人罪で起訴

2012年04月14日 | 海外事情

 アメリカのフロリダ州で今年2月、武器を携行していない黒人少年を
殺害した自警団員、ジョージ・ジマーマン容疑者が第2級殺人罪で起訴
されることになりました。

この事件は、オバマ大統領が、もし自分に息子がいたとしたら
彼のようだっただろうと、コメントしたこともあり、全米の注目を集めています。

人種差別ではないかということ、さらにはフロリダの正当防衛を広く認める
法律「Stand Your Ground」についての非難もあるようです。
これは、攻撃に直面したときに、攻撃者から逃げず、必要であれば殺傷能力
のある武器で応じても正当防衛が成立するというものだそうです。
銃社会のアメリカでは行き過ぎが当然予想されるからです。
警察がジョージ・ジマーマンをすぐに逮捕しなかったことも大きな理由です。

検察は世論の圧力に屈したわけではないと言っていますが、影響はあったと
思います。
なお、アメリカでは検事は選挙で選ばれます。ということで、自分の職場のある
地域の声には敏感にならざるを得ないのです。

起訴の罪状は第2級殺人です。
日本は殺人一本しかないのですが、アメリカはいろいろあって分かりにくいです。
わかりやすくいうと、第1級殺人は計画的なもの(PremedeatedとかDelibarated)、
及び強盗とか強姦、放火などの重罪中の殺人をいいます。
それに該当しない殺人が第2級殺人というわけです。
そして、被害者に挑発などがあれば、Manslaughter(故殺罪)になるのです。
検察が第2級殺人で起訴することにしたのは、まずまず妥当な判断のようです。

アメリカというのは、われわれ日本人と感覚が違うようです。
これはたぶんPretrial といわれる手続きと思いますが、全部TVに公開
されるのですね。
アメリカの憲法修正第6条は「public trial」の権利を保障しているからです。
ただ、正式裁判前の手続きは裁量かと思われます。
下の写真は法廷内の写真です。ここはこういう手続きをするだけで
本当の裁判はまた別の法廷で別の裁判官がするのです。
こういう写真はあまりみませんので、ご参考に。
たぶん、これは逮捕から48時間以内にする手続きと思います。
日本でいえば裁判官による勾留質問と思われます。
Probable Cause があれば身柄を拘束し、更に捜査をするものと思われます。
普通はここで保釈請求をすることもあるようですが、彼はしなかったんですね。
もともと保釈が認められるかは疑問ですが・・・

次は5月29日に期日が指定されたようですが、
たぶん認否の答弁があるのでは思います。

Law&Order のファンの皆さんには大変勉強になると思います。

もっと見たい方はBBCのホームページからビデオを見てください。
判事の声もよく聞こえます。ここをどうぞ。

なお、勾留の根拠となる宣誓供述書(Affidavit)も御覧ください。
私は初めてみました。ここをどうぞ。

私たちにはいい勉強になりますが、ここまで公開するというのは、われわれ
日本人にはちょっとわかりにくいです。

ネット世界のいいところは、こうして日本にいながら、同時中継で物事の進行が
見えるということです。

世界はひとつというのを本当に実感するときでもあります。