カディスの緑の風

スペイン、アンダルシアのカディス県在住です。

現在は日本の古い映画にはまっています。

デュラス、「エミリー・L」から、エミリー・ディッキンスンの詩

2013-01-24 22:06:18 | 文学





先日、雨の合間に海岸を散歩していたとき、

雲の切れ間からさしてきた一条の光に圧倒された。

そのとき、ちょうど、フランスの女流作家、

マルグリット・デュラスの、『エミリー・L』(1987年作品)

という小説を読み始めたばかりだったのである。

その小説は、アメリカの、エミリー・ディキンスンという女性が

1861年に書いた詩に触発されて書かれたものである。


その偶然に驚き、圧倒され、そして感動した。

だから、ここにそれをとどめる。



There’s a certain Slant of light,
Winter Afternoons –
That oppresses, like the Heft
Of Cathedral Tunes –

Heavenly Hurt, it gives us –
We can find no scar,
But internal difference,
Where the Meanings, are –

None may teach it – Any –
‘Tis the Seal Despair –
An imperial affliction
Sent us of the Air –

When it comes, the Landscape listens –
Shadows – hold their breath –
When it goes, ‘tis like the Distance
On the look of Death –



(以下は拙訳)


斜めにさしこむ、ある一条の陽光

冬の午後のこと ――

それは胸にせまる

大聖堂に響き渡る荘厳な調べのごとく


それはわれらに天の傷を与える ――

なんら痕跡は見えずとも

うちなる変化をもたらす

心の中のさまざまな意味合いへの ――


それを説くことはできない ―― 何ひとつ ――

それは絶望の刻印 ――

神聖なる苦悩が

われらに下すアリア ――



それが現れるとき、風景は耳を澄ます ――

ものの影は ―― 息をひそめる ――

それが消えるとき、はるかな彼方へ遠ざかる

まるで死者の相貌のごとく ――







デュラスの作品の翻訳を多く手がけている田中倫郎氏が、

『エミリー・L』の単行本のあとがきに、

この詩の英文と、自身による端正な翻訳を載せている。



しかし、わたし自身は、この詩のもつ、抽象的で

ミステリアスな雰囲気には、

説明はいらず、体言止めなどで、言葉の置き換えに

とどめるほうが良い、と思い、拙訳をあえてご紹介することにした。





小説のことや、エミリー・ディキンスンのことについては

また、詳しく書くことがあるかもしれないし、

ないかもしれない。




(これは以前別のブログに掲載した記事のコピーです。)






最新の画像もっと見る

コメントを投稿