カディスの緑の風

スペイン、アンダルシアのカディス県在住です。

現在は日本の古い映画にはまっています。

『生前退位』という言葉の無神経さ

2016-07-16 13:28:32 | 言わせてもらえば




ここ10日ほど、日本を含め、世界でさまざまな出来事、

それも悲惨なテロなどが相次いでおきて、

状況を把握するのが追いつかないほどである。

その中で、一つ、日本での天皇陛下のご退位の意向のニュースに

注目したい。


このニュースはTwitterで速報されたが、それとほぼ時期を同じくして

イギリスのBBCでもスペインの国営放送でも大きく取り上げられた。

わたしは驚いたが、日本の地上波のニュースを見ることができないから

ネットでいろいろと調べてみた。

まず驚いたのは、BBCなどではニュースのソースを明らかにしておらず

すでに天皇陛下がご発表になったような報道であったが、

実際にはNHKが独自にスクープとして報道した、ということであった。

それも天皇皇后両陛下が葉山御用邸でご静養中の出来事であるという。


それに宮内庁はそのニュースをただちに否定していることも、

不思議なことであった。


しかし世界ではたいへん知名度の高い日本の天皇である。

というのも、「天皇」、英語ではEmperor(エンペラー)という地位は

国王の上にたつ扱いを受ける特別な存在であるからである。


いろいろと調べていくと、天皇陛下が実際に退位、譲位のご意思を

お持ちであることは事実であるようであり、皇太子殿下、秋篠宮殿下、

そのほかご皇室の方々とこの件についてはかなり以前から

お話合いになられていたようである。

そして内閣総理大臣を議長とする皇室会議でも水面下で

粛々とお話合いが進められていたような気配である。


しかし、なぜこのタイミングで、誰が、どんな目的をもって、この件を

リークしたのか???

不思議に思うのはわたしだけではないようである。

誰かに政治利用されている可能性も払拭できない。

たとえば平成4年に天皇皇后両陛下が

中国訪問なさったが、これに対しては事前に

さまざまな反対があった。

しかし、政府はこの訪中は、天皇みずからのご意思である、として

実現させた。それは憲法の定める国事行為に

海外旅行は含まれていないので、内閣の助言と承認に

拘束されることなく、天皇の意思によって決定できる、

とされているからである。

しかし宮内庁ホームページの陛下の記者会見では

「私の立場は政府の決定に従って、その中で最善をつくすことだ

と思います」とおっしゃられている。

つまり天皇陛下ご自身の意思ではなかった、ということである。

政治利用されたのである。




「象徴天皇」としての日本国憲法に定められた国事行為、

その他、ご公務の数々は近年だいぶ縮小される傾向に

あったようだが、これは天皇陛下のお心にそむくものであった。

しかしご高齢とご病気などの健康障害から、国事行為、

ご公務をまっとうなさることがしだいに困難になっていらして、

たいへんに生真面目な天皇陛下にとっては大きなご心痛であった

とお察し申し上げる。


国事行為に加えて、皇室には「私事」(これは実際には皇室の

公的な行事)として、伝統的に何世代も継承してきたさまざまな

宮中祭祀がある。

有名なのは新嘗祭であるが、これは夜を徹して行われ、

一晩で2時間の正座を2回行う、つまり4時間は正座を崩せない

儀式であるそうだ。

そういう過酷な祭祀も陛下にとっては

すべて古式にのっとってきちんとまっとうしなければならない、

そういう責任感で臨んでいらっしゃるだろう。


日本国憲法の第一条には、こう書かれている。

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、

この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。


天皇は古来より、国の民を「おおみたから」とし、

民家からたちのぼる一条の煙をみて、民は食に足りているだろう、と思い、

煙がたたなくなれば、民がひもじい思いをしているだろう、と

おもんぱかり、まつりごとをなさる、そういう「おおみこころ」が

おありになる。


今上天皇におかれてはご自分のことより、「おおみたから」を

大切に思う、古来からの天皇のお心をお持ちである、だからこそ

被災地に赴き、美智子妃殿下とともに、床にひざまづき、

一人一人の目をご覧になってお話をきき、お声をかけられる。

そのお姿は崇高であるとともに、痛々しくもある。


公務をまっとうできなくなって退位する、という事例では

わたしはローマ教皇ベネディクト16世のことを思い出した。

派手な人気があった前任者のヨハネ・パウロ二世のあとを継いで

地道に公務をこなしていったベネディクト16世は、

高齢のため、余生は神への祈りのためだけに捧げたい、との

意思を示し、600年ぶりにご生存中のローマ教皇が退位する、という、

当時は世界中を騒がせた事例となったのである。

その時の日本のニュースでも『生前退位』という言葉が使われていた。


しかし、この『生前退位』という言葉には、なんのレスペクトも感じられない。

実に無神経な言葉である。せめて『譲位』としていただきたい。


今回いろいろ調べていて知ったことは実に多かった。

たとえば、陛下の「ご英断」という言葉づかいは正しくは「ご聖断」である。

日本語が実に堪能なケント・ギルバート氏も、天皇陛下に対する

言葉づかいで敬語のまちがいをすると失礼だから、なるべく

天皇の話題は話さないようにしている、たいへん興味はあるのだが、

と吐露なさっている。


一般の日本人でもそういう特殊な敬語を知らない人が多いだろう。

まず新聞などのマスコミの言葉が崩れている。

学校教育で教えなくなったし、各家庭での言葉づかいも乱れている。


言葉は文化であって、日本語は特に語彙が多いことで世界の言語でも

特出しているのだが、しだいにそうした古来よりの言葉は死語となり、

人々は面倒くさいことは排除して、楽なほうへ、と流されていく。


話が、脱線してしまったが、いろいろとネットの動画をみていて、

竹田恒泰さんの説明が興味深かったので、ここでご紹介しておきます。

ご存じのように竹田恒泰さんは旧皇族の生まれで、

明治天皇の女系の玄孫にあたる方であるので、皇室のことについては

わたしのような庶民より知識が深いから、いろいろと参考になります。



https://www.youtube.com/watch?v=YOR1LlLe3n4



とにかく、この件については天皇陛下からの正式な発表があるまで

勝手な想像でいろいろと申し上げるのは、差し控えたいと思います。

特に陛下のお気持ちについては…。








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