小津映画をずっと見てきているが、『麦秋』を始めてみた時、
あるショットに大いなる違和感を感じた。
なぜこのような配膳のちゃぶ台だけを、静かに数秒写すのだろう。
小津ともあろう人が、ご飯茶碗と汁椀を逆に配置する、とは、これは
たんなる間違いではない。なにかわけがありそうだ、と思ったのである。
そのあと、『お早う』を見た時も、同じようなちゃぶ台のシーンがあった。
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蚤を懐しむ
南昌攻略は春だった。
修水河の渡河戦に始って、夜を日についでの追撃だった。
何処も彼処も菜の花の盛りで、菜の花に夜が明けて、菜の花に日が暮れた。
夜が明ければ、陽をうけた一面の鮮かな黄に、眠不足の目を細め、
「いまだ生きている目に菜の花の眩しさ」だった。
日が昏れれば、一面の黄が、夜空に白く抜けて、いつまでも目に残った。
着のみ着のままの、埃と汗と垢で . . . 本文を読む
この映画は前作『カルメン故郷に帰る』の続編なのではあるが、
雰囲気はまるっきり異なる。
前作の日本初のカラー映画の明るさから
一転してこちらはモノクロ作品であるし、
高峰秀子のカルメンや、相棒の朱美(小林トシ子)は
前作のあの溌剌とした天真爛漫さは影をひそめ、
全編を通して、辛辣な時代や政治を
風刺する作品となっている。
あらすじを紹介すると、浅草のストリップ劇場で、 . . . 本文を読む
今年の夏は脚の怪我であまり外出もできず、
猛暑だったので、遮光して暗い家の中で
ほとんど連日DVDの映画を見続けた。
最近テレビを買い替えて、YouTubeにも接続したので、
またまた古い映画を見続けている。
やはり外国生活が長くなると、こうした日本の古い映画で
見られる東京や地方の風景などが懐かしい。
それに加えて、戦後の日本がどのように変わっていったか、
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