このところ、欧州で乱射事件や自爆テロ、教会襲撃など
凄惨な事件が頻発しているが、
それに連鎖したように、日本で障害者施設での大量殺戮がおこり、
欧州のニュースでもトップで取り上げられていた。
ドイツでの一連の事件は、ISIS(自称『イスラム国』)が
関連を発表したものも、しなかったものもあるが、
日本の相模原事件は毛色の変わった事件である。
まだ捜査中で、事実関係が明確にわかっていないので、
憶測で言及するのは控えるが、発表された容疑者の手紙を読むと、
その異常性がいやでも感じられる。
その手紙とは今年の2月に植松容疑者が大島理森衆議院議長に
渡そうとして衆議院議長公邸を訪れ、警備に当たっていた警察官が
受け取っていた、というものである。
手紙の主旨は、社会活動が困難な障害者を安楽死させて
不幸を抑える革命を行い、全人類のために日本国が世界を
担っていくよう、安倍晋三様に伝えていただきたい、というものであるが、
「フリー・メイソン」とか「UFOを見たことがあるから、自分は未来人
なのかもしれない」とか書いているし、
「医療大麻の導入」、「日本軍の設立」などを
脈絡なく、ずらずらと提案している。
また、知的障害者を『安楽死』させる作戦も具体的に書かれており、
自首して逮捕されたあとの判決や無罪となったあとの一般社会への復帰の
ための手段、そして金銭的支援5億円を要求する、など
常軌を逸した内容となっている。
この手紙を読んで、全体の文体を通して、どこか
楽観的で陽気な雰囲気が感じられるのは気のせいであろうか。
そこには幸福な世界を作るための日本の役割をまっとうするために
革命が必要であり、それを担うのはまさにこの自分である、
という自負と自信、目的のための犠牲は当然、という躊躇のなさ、
これが26歳の社会人の考えることなのか!
この手紙は管轄する警視庁麹町署からその日のうちに
神奈川県警津久井暑に内容の情報提供がされていたという。
衆議院議長は実際にこの手紙を読んだのだろうか。
読んだとして、その内容を安倍首相に伝えていたのだろうか。
それはさておき、施設の管轄の警察署に連絡がいっていたのに
なんら警備も警戒もされていなかったようである。
内容があまりに荒唐無稽なので、相手にしなかったのだろうか。
ところで植松容疑者は精神障害で
『措置入院』を強制させられたことがあったという。
しかし異常がみとめられず、あるいは治癒した(?)と
医師の判断で退院した過去がある。
その入院の際、尿検査で大麻が検出されていたそうである。
手紙の中にはこのような一節がある。
――――― 医療大麻の導入
精神薬を服用する人は確実に頭がマイナス思考になり、
人生に絶望しております。心を壊す毒に頼らずに、
地球の奇跡が生んだ大麻の力は必要不可欠だと考えます―――――
さて、イスラム過激派には『自爆テロ』という常とう手段があるが、
これはキリスト教徒には不可解なものであるようだ。
わたしのイギリスの知人、友人たちも、アル・カイーダの
『自爆テロ』が横行し始めたころ、
若いイスラム教徒の心理はわからない、と言う人ばかりだった。
先日、百田尚樹氏が「虎ノ門ニュース」で余談的に
『山の老人』という話をなさっていた。
ネットで詳しく調べてみたら、こういうお話である。
マルコ・ポーロの『東方見聞録』にもでてくる話であるが、
ときは十字軍のころ、つまり11世紀から13世紀にかけて、
イラン北部の山岳地帯に「山の老人」と呼ばれる老人が支配する国があった。
彼らはときどき山からおりてきて、若者を誘拐し、
眠り薬を飲ませて山に連れてくる。
若者が目をさますとそこはまさに美しい楽園、
酒池肉林、そして美女たちがはべり、まるで天国に
いるように快楽にひたるのであった。
しかししばらくたって、若者が眠りから覚めると、
またもとのみすぼらしい生活にもどっている。
ああ、あの楽園にもどることはかなわぬ夢か、と
若者が思っていると、「山の老人」があらわれてこういう。
「お前たちは選ばれた人間だ、だから何某を殺すのだ、
そうすればまた楽園にもどれる、もし失敗したとしても
天国が約束されている」。
若者は楽園に戻りたい一心で「山の老人」のいうとおり
暗殺の使命を果たすのであった。
しかし実際にそんな楽園はなく、「山の老人」の国は
実はキリスト教徒を暗殺したイスラム教徒の
秘密結社、つまり暗殺集団であり、
麻薬のハッシッシを若者たちに飲ませて、楽園の
幻覚を作り出していただけだったのである。
暗殺者を「アサッシン(assassin)」と呼ぶのは
アラビア語で「ハッシッシ(hashish)を飲む人」が
語源だという。
それで、自爆テロに走る若者たちは、死後、
天国が約束されている、と信じている、という説なのである。
イスラム教の教えとテロ組織に忠誠を誓い、
アッラーの名前を叫びながら犯行を実行するアラブの若者たち、
その悲痛な心境と、
相模原事件の容疑者のいかにも身勝手な論理、
実に不謹慎とは思いながらも、比べてしまう。
相模原事件が障害者という弱者をターゲットにしたように、
イスラム過激派のテロも弱者を狙ってエスカレートしている。
直接には関連はないように思えるけれど、
世界的にこうした蛮行がニュースとして大々的に報道されたり
SNSで同時発信されたりしてしまうこの情報社会においては
自覚なく、人の閾下に及ぼす効果は案外大きいのかもしれない。
人間の意識の奥底にひそんでいる野蛮な、
実に残虐冷酷きわまるDNAにきざまれた
遺伝子が、理性をつきやぶり自らの破滅をもって
劇的なデビューをするシナリオを綿密に練り、
異常な興奮状態をもってその機会を虎視眈々と狙っているような、
そんな気がして背筋が寒くなる、きょうこのごろである。
最後になってしまったが、残忍なテロや殺人の被害者となった方々の
ご冥福を心からお祈りし、ご遺族の方々に深くお悔やみ申し上げます。
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