福岡事件再審運動キャンペーン「私はわらじがぬがれない」

開始から55周年を迎える「福岡事件」再審請求運動
毎年各地でおこなわれるキャンペーンのためのブログです

全国集会と再審特例法案について

2011-12-20 00:17:33 | 日記
皆さんは「再審特例法案」をご存じだろうか?
「特例法案」は1968年に,占領下の事案に限った例外的な法案である.
この法案は古い法案である.正確には「古くて新しい法案」である.

福岡事件の雪冤運動は現在この「古くて新しい」法案の成立を目標にしている。
先日行われた50周年記念キャンペーンでもこの法案についてお話しされていた.
しかし,なぜ今「再審特例法案」なのだろうか?
そもそもこの法案はどのようなものなのか?
それでは,この法案の立案者である
神近市子氏(衆議院議員:当時)の立法趣意に耳を傾けてみよう.

「私には,日本の裁判が,全然罪のない人を死刑にするなど考えもできないものですから」

神近氏は,福岡事件に出会った当初について,次のように回想している.
確かに,法務行政は裁判の公正さ,判決の正しさという建前のうえに成り立っている.
しかし,間違った捜査の結果や,無理強いされた自白調書が出されるとその建前は土台から崩れてしまう.
まして,占領下において駐留軍と警察の上下関係の中で,
警察が自らの沽券を守るために「勇み足」をした可能性を想像するのは,
現在の我々より彼女のほうが,よりリアルに感じられただろう.

「再審特例法案」の趣旨は次のとおりである.
①占領下である1945年9月2日~52年4月28日までに起訴された死刑確定事件を対象とする.
②対象事件について,再審開始要件を緩和する.
③地域ごとの判決の違いをなくすため,対象事件の再審請求は東京高裁のみあつかう.
④再審開始の決定に対して,異議申し立てを認めない.

だが,この法案は,「占領下の悲劇」にのみ通じるものなのであろうか?
この法案で注目すべきは,再審開始要件の緩和である.
現在なお再審開始要件について議論があるが,
「再審特例法案」は,その要件を,無罪を言い渡すべき「相当の証拠」とすることで,
刑事訴訟法に規定されている「明らかな証拠」よりも低い証明力で足りるとし,
再審公判以前に排斥されてしまう事案をすくいあげることを明言している.
したがって,「占領下の悲劇」を端的に自白強要及び自白偏重裁判と考えるならば,
この法案は,時代の制約を受けることなく,さまざまな事件にも当てはまるものなのではなかろうか.

キャンペーンの最中,古川龍樹氏は次のように語った.
「『再審特例法案』の制定に向けて運動していた当時と,現在は何ら変わらないのですよ.」
我々は過去の結果としての現在よりも,
未来の原因としての現在を大事にしなければならないだろう.
この法案は福岡事件の再審だけにとどまらず,
現在の自白偏重ともいえる刑事裁判のあり方に一縷の光を投げかけるものではなかろうか.

【参考文献】 神近市子「領巾ふる人々―福岡事件」 中央公論83年第10号360頁