
2週間近くまえの話になるが、東京国立近代美術館で開催されているクレー展を見に行ってきた。
日本人はクレー好きだときくが、わたしもその一人であろう。
出会いは小学校6年のとき。
親が借りてきた美術書を、ピアノの先生から借りたアシュケナージのショパンのワルツのレコードをききながら、
ぱらぱらながめて、あまりの心地よさに参ってしまった。
もう、こんなにぴったり嵌るもんはなかろう、
とか思い込んでいたのだが、実はクレーといえばバイオリンでオケにも所属し、
モーツァルトやらバッハやらとかで、
ショパンのワルツとはとんだ勘違いだった、とあとで知って
がっくり

クレーの絵を観ると、対象にそっくりに見えるか、からは完全に逸脱しているように思える。
むしろ、どこまで違っていてもそれに見えるか?を追求しているような気がした。
それは、脳がものをみて解釈するときにどこを手がかりにしているのか、ということで、
なんだか脳の研究に役立ちそうな気がしてしまった。
それはまた、イメージの喚起、という考え方も出来て、
面白いファンタジーが色々な層で色々なことを想起させ色々な解釈が出来るように、
豊かなイメージを喚起させる絵が素晴らしいのだ、といいかえることも出来そうだ。
クレーの絵を観た最初の印象は、小さい、ということだった。
むやみとでかくて絵の具代もバカにならんだろう、というような最近の絵をみる機会があったので、
クレーの絵の小ささが愛おしさを呼び起こさせた。
クレーは色々な手法を駆使したけれど、やはり線描を転写して色をつけるシリーズが
わたしは全体として気に入った。
出展されていないけれど、
『さえずり機械』 や 『Partie aus G』 (アートポスターを機織り部屋にずっと飾っている) など好き。
沢山の人にいわれていることに、クレーの色彩、があるが、
やはり本物を観たら本当に素敵だった。
また質感もとても凝っていて、平板な印象の絵葉書やら図録やら美術書やら、買うのもバカらしくなりそう。
とはいえホンモノをうちに持って帰るわけにはいかないので、
まあなんていうんでしょうか、本物を観たときの印象を思い出すよすがとして
絵葉書やら図録やら、買ってしまったが。
クレーの色で印象に残ったのが、赤/ピンク系だった。
ほんのりとしていたり、何かあついものをかくしていたり。
ほかの色はみんな赤/ピンク系を惹き立てるためにあるんではなかろうか?
とか思いたくなるくらい。
さっき線描が気に入った、と書いたけれど、じつは
この展覧会で一番気に入ったのは、紅色の美しい 『庭園建築のプラン』。
しばらくまえに安野光雅の 『カラー版 絵の教室』 を読んで、ゴッホがひたすら絵を描き続けた話が
印象深かったが (そこに力点を置く安野氏も印象深かったが)、
クレーの絵に対する情熱もすごい、と感じた。
そういう、止むに止まれぬ衝動、追求し続ける力、それに参ってしまった。
そこで我が身を省みて反省するところなのであろう、と思いつつも、
どうやらわたしは多大に気の散るタイプで、そういう情熱等が欠けている、というのは
客観的に見ても誰しもが納得することだろう。
反省するのではなく、納得してしまった。
でも40も過ぎれば、ふてぶてしくもなるさ。
全か無か、という考え方の馬鹿馬鹿しさを学んだ。
情熱の足りない者に物を作る資格がない、ということはない。
せっかく万難を廃し、群馬の山奥から観に行ったのだから、
何かを得て帰ってきて、わたしのものづくりに生かしたいものだ。
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やっと山奥から出てきたのだし、帰りのバスまでまだ時間もあるしで、常設展も見た。
日本画が面白かった。 いいんだよ。
クレーもよかったが、なんだか日本画がわたしにはしっくり来る。
やっぱりそういうものの見方をしているからか?
2階では小企画 『路上』 というものをやっていた。
いきなりケルアック 『オン・ザ・ロード』 が引き合いに出されているので、のけぞる。
登場人物が違う。 ああそうか、スクロール版ではないからか。
工芸館にも行きたかったが、帰りのバスが早いのでパスして池袋に向かった。
東武百貨店も西武百貨店も呉服売り場を覗くが、
ざんねんなことにこの季節は浴衣が多くて、わたしの見たい織りの着物は殆ど出ていなかった。
勉強になるのになぁ。
↑ところで一番上の写真は、クレー 『猫と鳥』 の絵葉書。
レンチキュラー印刷になっていて、角度を変えると猫の目が動くのが楽しい。
『猫と鳥』 のホンモノは、目が真ん中にあるようだ。
この絵は展示されていません。
私はシュールレアリスムが好き。男性的なんでしょう。私が。
日本画、昔習っていましたが難しすぎて(ダイナミックな構図を女性が描くのは難しい)私も観るだけに。。。ため息が出るほど好きです。
油彩は楽しいですが、乾くのに時間が掛かってそのうちに飽きてしまう(笑)
日本でも美術館で模写してのんびり楽しむ、という楽しみ方もあっていいのにね。あんまり見ないよね。
ルーブル美術館とかは、いっぱい居るんだけれどねえ。
あ、クレーから外れちゃったね。
ああでも、週末は混むそうだから、ウィークデーの方がいいかも。
晩年、病気を得てからはやっぱり暗いけれど、
今回はそんなに多くなかったと思います。
シュールレアリスムって面白いですよね。
日本画って大好きです。
たとえば花を描くとき、やっぱり花びらは何枚、しべは何本、あっここに虫食いが、
とかそういう風に描いてしまいます。
もやもやしゅしゅっ、って油絵みたいに描けない。
みずみずしい雰囲気って油絵より日本画の方が出しやすいような気がするし。
あと、大胆な余白だよね。 あれが日本画の大好きなところ。
殆ど日本画も油絵も書いたことはありませんが、
わたしが描くと、みんな同じ構図になりそうで、
絵より染織がいいや、って感じです。
のんびり模写できる美術館、
地方に行けば空いているかもねぇ、でも模写したい絵があるかしらねぇ。