浜松市楽器博物館へ行った。その9(ピアノその2) よりつづく
エラールが出てきたところで、ピアノの進歩のまとめのキャプションをば3枚。
ハンマーの変遷のキャプション↓ 大きくなった。素材も革からフェルトになった。右の下向きの矢印は音域が下に行くほど拡大、左の矢印は下に行くほど音量が増大、と書いてある。
弦の変遷のキャプション↓ あれもこれも、変わった . ... (雑)。
音域の変遷のキャプション↓ 広がった。
まえの記事 の最後に ベートーヴェンはピアノの変革期に活躍しいくつものピアノを使った というキャプションを載せたけれど、具体的に書かれた曲の音域とその年を調べた記事がある 詠里庵 ピアノの音域の話
ハンマー、弦、音域と総合的に見て、大がかりになってきた、ということが分かった。
どの階層の人々がどの場所でどういうときにどんな音楽を必要としたのか 好んだのか?ということが楽器の発展に大いに関係する。市民革命や産業革命によって、音楽が演奏される場や聴衆の数が変化し、楽器を作る技術も進歩した。流通も進歩し、楽器や楽譜や演奏者の移動も早くなった。歴史なんだなあ。
ジラフピアノ↓ ニューヨーク 19世紀
蔓の絡まる金色の柱と優雅にカーブを描く上辺がグランドハープのよう。鍵盤の蓋もカーブしていて、すごくロマンチックなピアノだ。
”ジラフピアノ”と画像検索をかければ やはり浜松市楽器博物館のこのピアノが多く出てくるけれど、"giraffe piano"だともっと違う形のものも出てくる。左上が渦巻きになっている蓋つきのものも多い。つまらぬ主婦目線で見てしまうと、装飾がデコボコしていて弦が剥き出しのジラフピアノは埃がやたらとのりそう。せめて音に直接関係する弦やチューニングピンには蓋が欲しい、とか思ってしまう。
弦が透けて見えるのは目を惹くが、そういえば響板が弦に沿っていない。うーん、このピアノの音の大きさや伸びってどうなんでしょう?
グランドピアノの弦を垂直に張ることで置き場の面積を小さくしたのがジラフピアノだ。しかしジラフというだけあって背が高すぎる。
置き場節約ピアノといえば、18世紀にはスクエアピアノというのがあったっけ(まえのまえの記事)。それが段々アップライトピアノに置き換わっていったらしい。 楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史7 イギリス 浜松市楽器博物館へ行った。その8(ピアノその1)
ということでお次は ある意味 最もメジャーな楽器、アップライトピアノ。だが楽器の写真がない、ハハ。
アップライトピアノのカットモデル/アクション体験キー↓ これをパッと見ても、キーを押したときのハンマーが弦を打つ動きを想像できないよ。
デモ動画 ★ 精妙だよなあ。アップライトピアノとグランドピアノでは、キーを押す向きとハンマーの打つ方向の関係が違う。そしてハンマーの動く方向に対する重力の方向が違う。グランドピアノのアクションを元にアップライトピアノのアクションを作るにしても、ただ横にすればいいわけがないから、作る人は大変だったろうなあ。
自動ピアノ↓ チャペル(ロンドン) うっ、またしてもピアノの上のキャプションの年が読めないっ。
ペダル↓ 演奏用らしからぬペダルがついている。
自動ピアノのキャプション↓ なんと!人力で漕ぎ続けなければならない。
ジ・エンターテイナー なんかがかかってたのかなあ。って探したらあった。アップライト型だけど。 プレイヤーピアノによるジ・エンターテイナー演奏動画 ★ けっこう漕ぐのは大変そうだ。そして曲が終わったらロール紙を巻き戻す。
何種類か異なるアレンジのプレイヤーピアノ演奏動画があったけど、わたしはこの演奏 ★ がちょっと スーパーマリオブラザーズUSA っぽくて好きだな。
プレイヤーピアノについての素晴らしい解説&演奏動画 ★ いろいろ進歩があったようだ。
紙に穴を開けて曲のデータを記録し、読み取らせてその演奏を再現させる、というのならストリートオルガン/バレルオルガンがあるな。そちらの方が古い。動画 ★ ひたすらハンドルをぐるぐる回し続けるのも大変そうだ。 あ、オルゴールはもっと古く発明された。
おっと、ピアノや楽器のカテゴリから外れてきたのでこの話はここでストップ。
最後に本邦のピアノ。
明治になり学校で音楽教育をすすめるうえで国産のリードオルガンを普及させようと奮闘するところからヤマハは始まったのだが、オルガンの次は国産ピアノを目指した。記念すべきピアノ1号は1900年。その年はわずか2台しか生産できなかったが、1907年には117台になり、1925年には1167台に増えた。
ピアネッテ↓ 日本楽器(ヤマハ) 1923年 49鍵だ。
軽く探したが演奏動画は見つけられなかった。この3月にコンサートがあったようだ。ツイッター記事(写真あり) 川口成彦氏がピアネッテのまえに座っているので いかに小さいピアノかがよく分かる。
ピアノピア YAMAHA //49鍵 pianette No2. 1923年製 にはネコ足のものが挙げられている。
ピアノ↓ 河合楽器製作所 昭和初期 小型だ。73鍵と少なめ。
1926年に日本楽器労働争議が勃発し、翌年に技師の河合小市が日本楽器から独立した。そのときに小型のアップライトピアノを商品化した、と カワイ竜洋工場 歴史資料室 の下の方にある。カワイアップライトピアノ《昭和型》という名だ。菊の紋のついた黒いアップラアイトピアノの写真が挙げられている。
浜松市楽器博物館のピアノはグランドピアノだが、菊の紋と鍵盤数が同じなので、同時期なんじゃないだろうか。
残念ながら動画は見つけられなかった。
そして カワイ竜洋工場 歴史資料室 をもっと下にスクロールするとミニピアノ↓も挙げられている。
ミニピアノ↓ 1949 キャプションが読めないけど多分そう。40鍵しかない。本当に小さくて可愛い。
戦後に、河合小市が1927年に独立時に小型のピアノを作ったときの精神を思い起こして作ったんだろうな。
河合楽器製作所のこの小さいピアノについて ピアノピア KAWAI//40鍵 ベビーピアノ2 1949年 に記事がある。
そのピアノピアにおいて修復したピアノの動画 ★ たまらないね。
この楽器を海外で愛でている動画 ★ 折り畳まれた譜面台を上から出す様子がこの動画で見ることが出来る。
1995年にカワイはミニピアノ復刻盤「マスコットピアノ」を25台限定だけ製作したらしい。 ピアノピア KAWAI 49鍵マスコットピアノ 1995年製 ミニピアノ復刻モデル 。49鍵が魅力的。外装の質感は1949年の方が好きだけど。
中古市場にいくつも出ているならぜひ1台欲しいが、これはレア中のレアだからムリだろうな。出たとしても高いだろうし。
これで 浜松市楽器博物館へ行った。シリーズ はおしまい! 読んでくださって本当にありがとうございます。わたしも調べるのも書くのも大変だった。
こんなに世に楽器の種類が存在するとは思わなかった。演奏する人と楽器を作る人の熱いものがあって楽器は存在するんだなあと改めて思った。一足飛びに楽器が出来るわけではないんだなあ。技術が進歩するまえの楽器が失敗というわけではなく、それぞれに音色があり味わいがあって、制限のある不自由さも込みで愛されているんだな。
いやあ参った、とんだ沼にどっぷり鼻まで浸かってあっぷあっぷした。でもそのおかげですごく勉強になった。楽器を見る解像度が上がった。新旧多種多様の音楽が混在する楽しい時代に生きているわたしはとても幸せだ。
浜松市楽器博物館で見落としたものや撮り忘れたものはたくさんあるし、行った日のギャラリートークでは演奏されなかった楽器はいくつもある。何回でも行きたい!
そして、ヤマハ掛川工場へ行って、ピアノ製作見学とプレミアム試弾をした。 という記事につづきます . .... 。
まだ終わらないのか (T_T)
エラールが出てきたところで、ピアノの進歩のまとめのキャプションをば3枚。
ハンマーの変遷のキャプション↓ 大きくなった。素材も革からフェルトになった。右の下向きの矢印は音域が下に行くほど拡大、左の矢印は下に行くほど音量が増大、と書いてある。
弦の変遷のキャプション↓ あれもこれも、変わった . ... (雑)。
音域の変遷のキャプション↓ 広がった。
まえの記事 の最後に ベートーヴェンはピアノの変革期に活躍しいくつものピアノを使った というキャプションを載せたけれど、具体的に書かれた曲の音域とその年を調べた記事がある 詠里庵 ピアノの音域の話
ハンマー、弦、音域と総合的に見て、大がかりになってきた、ということが分かった。
どの階層の人々がどの場所でどういうときにどんな音楽を必要としたのか 好んだのか?ということが楽器の発展に大いに関係する。市民革命や産業革命によって、音楽が演奏される場や聴衆の数が変化し、楽器を作る技術も進歩した。流通も進歩し、楽器や楽譜や演奏者の移動も早くなった。歴史なんだなあ。
ジラフピアノ↓ ニューヨーク 19世紀
蔓の絡まる金色の柱と優雅にカーブを描く上辺がグランドハープのよう。鍵盤の蓋もカーブしていて、すごくロマンチックなピアノだ。
”ジラフピアノ”と画像検索をかければ やはり浜松市楽器博物館のこのピアノが多く出てくるけれど、"giraffe piano"だともっと違う形のものも出てくる。左上が渦巻きになっている蓋つきのものも多い。つまらぬ主婦目線で見てしまうと、装飾がデコボコしていて弦が剥き出しのジラフピアノは埃がやたらとのりそう。せめて音に直接関係する弦やチューニングピンには蓋が欲しい、とか思ってしまう。
弦が透けて見えるのは目を惹くが、そういえば響板が弦に沿っていない。うーん、このピアノの音の大きさや伸びってどうなんでしょう?
グランドピアノの弦を垂直に張ることで置き場の面積を小さくしたのがジラフピアノだ。しかしジラフというだけあって背が高すぎる。
置き場節約ピアノといえば、18世紀にはスクエアピアノというのがあったっけ(まえのまえの記事)。それが段々アップライトピアノに置き換わっていったらしい。 楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史7 イギリス 浜松市楽器博物館へ行った。その8(ピアノその1)
ということでお次は ある意味 最もメジャーな楽器、アップライトピアノ。だが楽器の写真がない、ハハ。
アップライトピアノのカットモデル/アクション体験キー↓ これをパッと見ても、キーを押したときのハンマーが弦を打つ動きを想像できないよ。
デモ動画 ★ 精妙だよなあ。アップライトピアノとグランドピアノでは、キーを押す向きとハンマーの打つ方向の関係が違う。そしてハンマーの動く方向に対する重力の方向が違う。グランドピアノのアクションを元にアップライトピアノのアクションを作るにしても、ただ横にすればいいわけがないから、作る人は大変だったろうなあ。
自動ピアノ↓ チャペル(ロンドン) うっ、またしてもピアノの上のキャプションの年が読めないっ。
ペダル↓ 演奏用らしからぬペダルがついている。
自動ピアノのキャプション↓ なんと!人力で漕ぎ続けなければならない。
ジ・エンターテイナー なんかがかかってたのかなあ。って探したらあった。アップライト型だけど。 プレイヤーピアノによるジ・エンターテイナー演奏動画 ★ けっこう漕ぐのは大変そうだ。そして曲が終わったらロール紙を巻き戻す。
何種類か異なるアレンジのプレイヤーピアノ演奏動画があったけど、わたしはこの演奏 ★ がちょっと スーパーマリオブラザーズUSA っぽくて好きだな。
プレイヤーピアノについての素晴らしい解説&演奏動画 ★ いろいろ進歩があったようだ。
紙に穴を開けて曲のデータを記録し、読み取らせてその演奏を再現させる、というのならストリートオルガン/バレルオルガンがあるな。そちらの方が古い。動画 ★ ひたすらハンドルをぐるぐる回し続けるのも大変そうだ。 あ、オルゴールはもっと古く発明された。
おっと、ピアノや楽器のカテゴリから外れてきたのでこの話はここでストップ。
最後に本邦のピアノ。
明治になり学校で音楽教育をすすめるうえで国産のリードオルガンを普及させようと奮闘するところからヤマハは始まったのだが、オルガンの次は国産ピアノを目指した。記念すべきピアノ1号は1900年。その年はわずか2台しか生産できなかったが、1907年には117台になり、1925年には1167台に増えた。
ピアネッテ↓ 日本楽器(ヤマハ) 1923年 49鍵だ。
軽く探したが演奏動画は見つけられなかった。この3月にコンサートがあったようだ。ツイッター記事(写真あり) 川口成彦氏がピアネッテのまえに座っているので いかに小さいピアノかがよく分かる。
ピアノピア YAMAHA //49鍵 pianette No2. 1923年製 にはネコ足のものが挙げられている。
ピアノ↓ 河合楽器製作所 昭和初期 小型だ。73鍵と少なめ。
1926年に日本楽器労働争議が勃発し、翌年に技師の河合小市が日本楽器から独立した。そのときに小型のアップライトピアノを商品化した、と カワイ竜洋工場 歴史資料室 の下の方にある。カワイアップライトピアノ《昭和型》という名だ。菊の紋のついた黒いアップラアイトピアノの写真が挙げられている。
浜松市楽器博物館のピアノはグランドピアノだが、菊の紋と鍵盤数が同じなので、同時期なんじゃないだろうか。
残念ながら動画は見つけられなかった。
そして カワイ竜洋工場 歴史資料室 をもっと下にスクロールするとミニピアノ↓も挙げられている。
ミニピアノ↓ 1949 キャプションが読めないけど多分そう。40鍵しかない。本当に小さくて可愛い。
戦後に、河合小市が1927年に独立時に小型のピアノを作ったときの精神を思い起こして作ったんだろうな。
河合楽器製作所のこの小さいピアノについて ピアノピア KAWAI//40鍵 ベビーピアノ2 1949年 に記事がある。
そのピアノピアにおいて修復したピアノの動画 ★ たまらないね。
この楽器を海外で愛でている動画 ★ 折り畳まれた譜面台を上から出す様子がこの動画で見ることが出来る。
1995年にカワイはミニピアノ復刻盤「マスコットピアノ」を25台限定だけ製作したらしい。 ピアノピア KAWAI 49鍵マスコットピアノ 1995年製 ミニピアノ復刻モデル 。49鍵が魅力的。外装の質感は1949年の方が好きだけど。
中古市場にいくつも出ているならぜひ1台欲しいが、これはレア中のレアだからムリだろうな。出たとしても高いだろうし。
これで 浜松市楽器博物館へ行った。シリーズ はおしまい! 読んでくださって本当にありがとうございます。わたしも調べるのも書くのも大変だった。
こんなに世に楽器の種類が存在するとは思わなかった。演奏する人と楽器を作る人の熱いものがあって楽器は存在するんだなあと改めて思った。一足飛びに楽器が出来るわけではないんだなあ。技術が進歩するまえの楽器が失敗というわけではなく、それぞれに音色があり味わいがあって、制限のある不自由さも込みで愛されているんだな。
いやあ参った、とんだ沼にどっぷり鼻まで浸かってあっぷあっぷした。でもそのおかげですごく勉強になった。楽器を見る解像度が上がった。新旧多種多様の音楽が混在する楽しい時代に生きているわたしはとても幸せだ。
浜松市楽器博物館で見落としたものや撮り忘れたものはたくさんあるし、行った日のギャラリートークでは演奏されなかった楽器はいくつもある。何回でも行きたい!
そして、ヤマハ掛川工場へ行って、ピアノ製作見学とプレミアム試弾をした。 という記事につづきます . .... 。
まだ終わらないのか (T_T)
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