Little by Little

慌てず騒がず

9月26日

2020年09月27日 | 日記
「せりふは競り符だ」
と言った人がいる。相手と競り合いながら、ドラマを作っていく。それは、言葉の内容だけでなく、気持ち、テンポ、メロディ、etc.まで、すべてだ。それらをすべてイメージしながら、作家は書く。だのに、自分のセリフの前に、「あ」だの、「その」だの、「はい」だの、笑い声だの、咳だの、を入れる俳優がいる。そして、自分の言いやすいテンポやメロディにセリフを均してしまう。その俳優のセリフではなく、その役の言葉なのに、俳優自身の言葉にしてしまう。作家であれば、一字一句も無駄にしない。一字一句のために聴講することもしばしばだ。言葉を選ぶことで、伝えたいことを明確にし緊張感を生みドラマを構築していく。
上述の俳優のセリフは、すでに競り符ではなくなっている。もしも、言いにくいのであれば、それは俳優と役との違いなので、その違いを咀嚼していくことで役が作れていくし、俳優が持っていないテンポやメロディを踏襲することで、役という新たな自分に入っていくのに、それを自分に戻してしまう。そんなことをするのが、ベテランと呼ばれる部類に多い。それはベテランではなく、長生きした怠惰なのだ。

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