せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

Good Nightmare.

2007-08-14 01:31:55 | その他
「愛してた 愛してた 殺したくなんてなかった」

包帯で覆われた目、手入れもされていない伸びきった髪、乾いて色を失った唇。手足は縛り付けられ、その爪はどれも深く切られている。自ら死を招かないように、だ。
数年前人質に取られた彼女恋人をやむなく見捨ててから、ずっとこの調子だ。これでは死んでいるのとなんら変わりは無い。何のために彼を見捨てたと思っているのだろう。

そう思いながら、彼は包帯に手を掛けた。
情というわけではない。彼女もまた彼の大事な手駒であり、同属であるから。

「貴女の力は自分を傷付ける為のものではないはずなんですがね」

その左目に刻まれているのは一の文字。それはつまり、地獄道の能力を宿しているということだ。そしてその目には、「白の炎」。

「自らの炎で壊れてしまいましたか。その強力な怒りゆえに」

彼女が今宿しているのは死ぬ気の炎ではない。それは怒りの炎、憤怒の炎だった。もし今、彼女に死ぬ気弾を撃ったとしても、何の抵抗もなく彼女は死ぬだろう。
彼の包帯を解く手が、止んだ。

「ごめんなさい 許して欲しいなんて言わない」
「・・ははっ!自らの矛盾にさえ気付かないとは。もうこれは使い物になりませんね」

振り上げられた手が彼女の頬に落ちた。乾いた音と共に、彼女の顔が少しだけ揺れる。けれどその口は謝罪と後悔の言葉を並べることを止めないし、彼女が今目に見ているものに変わりはない。


「ごめんなさい ごめんなさい 愛してた 誰よりも」


終わることのない地獄を、自らの手によって巡って。

――
(Good Nightmare)
直訳でよい悪夢を。夜中に何書いてんの私。