散歩路地《サンポロジー》      毎日が発見! 身近な自然が見えてくる!


 ☆ 多摩丘陵

 ☆ 世田谷の散歩道

 ☆ ネイチャークラフト

 ☆ 環境学習ゲーム

オニヤンマの産卵

2013-07-30 | 僕の散歩道
7月30日。気温はさほど高くないが、湿度が高く、空気が濃密な感じがする。
今年は、本当にオニヤンマが多い。いつもチョウをカウントする地点は、湧水から続く小川が流れている。
カウントを始めたらすぐに、その小川の方で、動くものが目に入った。双眼鏡を当てると、オニヤンマが目に入った。それも産卵行動だ。僕はカウントを中断して、すぐに近づいた。水深2~3㎝の浅瀬で、何度も何度も水底の砂地に産卵管を突き刺している。


オニヤンマの産卵 2013-07-30 世田谷

この個体を含め、今日見たオニヤンマは4頭。
その他のトンボは、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシアキトンボ、ハグロトンボ、ショウジョウトンボ、そして写真が撮れなかったが、オナガサナエだと思われるサナエトンボが観察できた。
オナガサナエは、先日、砧公園で死体を拾ったが、野川で繁殖しているという情報があったので、そちらから飛んできたものだろうと思っていた。
ところが、今日発見したのは、丸子川。どうやら、もう少し広く生息しているようだ。

しばらく行くと、仙川に出る。
いつものように、ひとりぼっちのコガモを確認してゆくのだが、今日は、見慣れぬ顔が…。この話は後日改めて書くことにする。
もとい。コガモを確認して、上流に進むと、先日の大雨のせいで増水し、堰の上流側の水位が高い。岸辺のヨシがなぎ倒されて水没している。その中にちょっと光るものが…。双眼鏡を当てると、そこには連結産卵するギンヤンマの姿があった。


水位の高くなった仙川河川左手の薄茶色は倒れたヨシなど 2013-07-30 世田谷


連結産卵するギンヤンマ 2013-07-30 世田谷

ギンヤンマは、本来池や水田など、止水環境に産卵する。しかし、今回水位が高くなり、水流が弱まった仙川で産卵してしまったようだ。かわいそうだが、幼虫がうまく育つ可能性は低いだろう。

ギンヤンマはヤンマ科で水面に浮かぶ、樹や草の茎などに産卵する。都会でも、有る程度の止水環境があれば、生息している。学校のプールに浮かぶ発砲スチロールに産卵する姿も見たこともある。
とこらが、オニヤンマはオニヤンマ科という別のグループで、弱流水環境を好み、水深の浅い砂地に産卵管を差し込んで産卵する。里山には普通に見られるが、都会には少ない。国分寺崖線沿いの湧水の多い環境が、オニヤンマの生息を可能にしているのだろう。


オニヤンマの産卵場所(中央左の細い流れで産卵していた) 2013-07-30 世田谷

たった2時間の散歩道で、日本で、最も名前の通った大型のトンボ2種の産卵が見られるなんて…、
濃密な空気の中で、濃密な時間が過ごせた事に感謝!


ふんころがし クロマルエンマコガネ

2013-07-28 | 僕の散歩道
7月26日。散歩コースの途中にある公園。地面で何か動いているのを見つける。近づくと、それはイヌの糞であった。――食事中の方申し訳ありません。――
この糞を、小さな虫…、そう、ふんころがしが移動させていたのだ。どぎつい表現だが、この糞、ふたつの塊なのだが、糞に混じる体毛でつながっていて、うまく転がせない。そのため、くるくる回るように動き、思うように進めないのだ。しかし、虫には、明確な目的意識があり、特定の方向に進もうとしているように見えた。虫の名は、クロマルエンマコガネ…。だと思う? 似た仲間が多いため、僕の実力では判断しきれない。


ふんころがし(クロマルエンマコガネと思われる) 2013-07-26 世田谷

動きが面白いので、動画撮影をした。興味のある方は、そちらを見ていただきたい。
動画にリンク
ただし、くれぐれも、食事時は避けていただきたい!

嵐の中のチョウは…?

2013-07-24 | 僕の散歩道
昨日は、久しぶりに散歩に出た。この1週間は、突発的な出来事が重なり、うまく時間が作れなかった。
さて、散歩から帰り、現在進行中の仕事のチェックを終えて、散歩中に記録したデータを入力し始めた。「今年は、オニヤンマが目立つ。クロアゲハがきれいだったなぁ~」などと、ブログ材料を検討していると、何やら、天気が怪しい。


クロアゲハ 2013-07-23 世田谷

そう思う間もなくどんどん雲が広がり、雨が降ってきた。それもとんでもない暴風雨になった。まさかとは思いつつ外を見ていると「いきなり電気が切れた」そのまさかだったのだ。

配電盤を見ると、漏電ブレーカーが落ちていた。雷のせいで停電したのではなかったのだ。廊下へ出て、周囲の家を見ると、みな電機が付いている。我が家は、連棟式のテラスハウスだが、すぐ隣の家の電力メーターは回っている。ということは我が家だけ!
漏電ブレーカーの復旧を試みると、我が家の北西側の一角。風呂・トイレ・洗面所・階段をカバーしている回路が漏電していると分かった。

一夜明けた今日、天気はどんより、普段ならたくさんのアゲハ蝶がヤブガラシに群がるのだが、今日はやけに数が少ない。
曇り空のせいだろうか、それとも…、昨夜の嵐のせいなのか?
蝶たちは、昨夜のような豪雨の中、どこで、どうやって過ごすのだろうか?

雨の中を野山を歩き回った経験は多々ある。蝶やトンボは、意外なほど雨の中でも飛び回っている。もちろん豪雨となれば話は別だが。厳しい雨を葉っぱの裏などでしのぎ、強い風には、翅の向きを変え必死で踏ん張る。
タテハチョウの仲間や、ウラギンシジミは、普通4本脚でとまる。2本の前脚は、やや小さく、いつももたたんでいる。しかし、強風に耐えるウラギンシジミが、強風に合わせるように、前脚を出したのを見たことがある…。


小雨の中のキチョウ(交尾) 1990-07-04 多摩丘陵

残念ながら、豪雨の中で、チョウやトンボがいかに過ごすのかを観察をしたことはない。まして、雷雨の時には、積極的に観察したいとは思わない。どなたかそんな経験のある方は、ぜひ連絡ください。

これを書きながら、何度も庭に目をやるのだが、やはりチョウは飛んでこない。
都心のヒートアイランド化は、野生生物に、こんな形でも影響しているのかもしれない。



その15 脱殻-子供服回収! オニヤンマ・コシボソヤンマ・ヒグラシ…。

2013-07-20 | フィールドノート(多摩丘陵)
昨日は、僕が「多摩丘陵最奥地」と呼んでいる所に出かけた。
狙いは、オニヤンマ、ミルンヤンマ、コシボソヤンマなど大型トンボ類だったのだが…。
相棒のY君と共に、みじめな思いの1日となった。基本的に釣りはやらないが、気合十分で出かけて、坊主だった時の釣り人は、きっとこんな心境なのだろうと思った。

大型トンボ類を見たのは、種の確認もでき無いスピードで目の前を通り過ぎた1頭と、とても手の届かぬ遠くで旋回するクロスジギンヤンマを双眼鏡で確認しただけだ。Y君とこの地へ来るのは3回目だが、これまで良い思いをしたことがない。――やっぱり相性というものがあるのだろうか…。
「次にここへ来る時は、もう誘わないよ」なんて、つまらない冗談を言いながら早めの昼食にした。

あまりの成果の無さに、早めに上がり多摩丘陵のいつものコースへ戻ることにした。前回見事なオオムラサキの求愛行動がみられたので、今回は、比較的近場の樹液を見て回り、オオムラサキの再来をと期待したのだ。
しかし…。これまた期待外れに終わった。樹液に顔を出していたのは、常連のカナブンと、角の小さなカブトムシ、コガタスズメバチ程度だった。
疲れのドッと出る1日だった。

早々に事態を察知した僕は、お土産代りに脱殻集めを始めていた。

この日採集した抜け殻 2013-07-19 多摩丘陵

オニヤンマの脱殻に風変わりなものがあった。採ってから気が付いたのだが、オニヤンマの背中に、小さな抜け殻がくっついていたのだ。

 
写真左 おんぶしたような脱殻 下:オニヤンマ 上:オオシオカラトンボ 2013-07-09 多摩丘陵
写真右 コシボソヤンマの脱殻 2013-07-09 多摩丘陵 

同じ種の脱殻の場合、良く、折り重なるように、いくつも付いていることがあるのだが、こんな風に、おんぶするようなのは初めて見た。川と池の間にある杭についていたので、川で生育するオニヤンマと池で育つオオシオカラが出合ってしまったのだろう。

その他の脱殻は、以下の通り。

  
左:オニヤンマ 中:ヒグラシ 右:ニイニイゼミ 2013-07-19 多摩丘陵

脱殻集めは、結構楽しい。採集本能を、そこそこ満足させ、しかも、資料としての価値も高い。抜けガラだけで、種類も、雄雌も、みなわかってしまう。さらに、自然へのインパクトもほとんど無い!
こんな時のために、僕のザックに中には、いつも、2,3個の密閉容器が入っている。
100円で、数個買えるくらいのものでかまわない。ほっとけば朽ち果てるだけの子供服を、回収してみるのはいかがだろう。親の写真と、脱ぎ捨てられた子供服から、神秘的な成人式の様子などを思い浮かべてみる…。あるいは、子供服をセクションケースに並べてみる。
こんなことで楽しめるのは、僕だけなのだろうか…? 



樹液酒場のいじられキャラ、カナブン。

2013-07-18 | フィールドノート(その他)
7月18日。友人と木場公園で待ち合わせた。僕は時間があったので、2時間ほど先に行き、ドングリの成り具合をチェックしていた。秋にネイチャクラフトの企画を計画しているのだ。
クヌギ、コナラ、マテバシイ、スダジイ、シラカシ、カシワ。とりあえず、クラフト材は十分にありそうだ。
ふとみると、クヌギの幹がなんだか騒がしい。近づくと…。

 
樹液酒場木場公園店(ゴマダラチョウ、カナブン、シロテンハナムグリ) 2013-07-18 木場公園

木場公園にも樹液酒場があった。しかも大入り満員。
数えてみると、シロテンハナムグリが13頭。カナブンガ12頭。さらにゴマダラチョウが居たのにはちょっと驚いた。カナブンより、シロテンハナムグリのほうが体は小さいのに、樹液の中心部は彼ら占領されている。カナブンはどこにでもいるのだが、優位に立っていることはほとんどない。ちょっとかわいそうな存在だ。こんな役回りってどこにでもある。ってことかな…。

ハゴロモ伝説

2013-07-15 | 僕の散歩道
7月15日。散歩道を行く。今日も暑い。
丸子川沿いの道に出ると、道脇の木柵上で、ヨツスジトラカミキリが歩いていた。
この木柵の上では、色々なものが観察できる。ヨコズナサシガメが歩いていたり、オオシオカラトンボが止まっていたり…、そしてある時は、アオバズク(フクロウの仲間)のものと思われるペリット(骨など未消化物の吐き戻し)があったりと、話題に事欠かない。
そして今日見つけたのはこれだ。



小さな綿毛が、木柵の手すりの上を歩きまわっている。それも一つではない。20mほどの間に5匹。
見た途端にピーンと来た。実は、今日エノキの葉の上に止まっていたアミガサハゴロモの撮影に失敗していたのだ。手前の葉をそっとよけて、カメラを向けた途端に逃げられてしまった。この綿毛は、その幼虫だ。

しかし、家で写真の整理をしてみると、これは、アミガサハゴロモではなく、近縁種のベッコウハゴロモの幼虫だとわかった。

ハゴロモは、セミの仲間で、体長は10㎜強。確かに、良く見ると、セミに似ている。ハゴロモという名は、成虫の繊細な翅から付いたものなのか、白い綿毛を背負った幼虫の姿から付いたものなのか、僕は知らない。しかし、いずれにしてもその姿に神々しさを感じてしまう。

街中の緑地や、里山で良く見られるハゴロモの仲間は、4種類。最後に、それらを紹介しておこう。

 
 
上左:ベッコウハゴロモ 2006-08-04 新潟長岡  上右:スケバハゴロモ 2008-08-25 栃木 
下左:アミガサハゴロモ 2010-07-14 世田谷   下右:アオバハゴロモ 2009-07-30 世田谷

セミの初鳴き

2013-07-13 | ガーデン博物記
7月13日。朝7時40分。ブログの管理ページを開いたところで手が止まった。
庭のほうから、変な声が…。 

この記事、実は昨夜書くつもりでいた。それが、ほかの用事を済ませているうちに疲れてきて、「明日の朝でいいかぁ」と、自分に甘えてしまった。連日の猛暑も、僕に言い訳をする余地を与えたようだ。


「あれ、アブラゼミが泣き出した! 今年の初鳴きだ」
昨日の夕方、暑さを倍増させる《ジリジリジリジリ…》という鳴き声が聞こえてきたのだ。
「もうとっくに、近所の公園で鳴いてるよ」と上さん。
「それは、ニイニイ(ゼミ)だろ。これはアブラなの! 鳴き声違うだろ」
「へー。そうなの」
といったやり取りがあったのだ。

僕の確認した、今年のセミの初鳴きは、
5月23日 ハルゼミ   裏高尾
7月 2日 ニイニイゼミ 多摩丘陵
7月 6日 ニイニイゼミ 世田谷
7月12日 アブラゼミ  世田谷
であった。
それをまとめて昨夜書いておこうと思ったらのだが、冒頭のように、今朝
7月13日 ミンミンゼミ 世田谷
というのが加わったのだ。

ハルゼミというのは、5月の連休が明けたころ出始め、6月中旬にはいなくなってしまう。松林に住み、東京周辺ではかなり数を減らしてしまった。多摩丘陵でも、もう15年ほど鳴き声を聞いていない。絶滅してしまったようだ。
この後6月から出はじめるのがニイニイゼミ。
このところ、東京近郊は、ヒートアイランド化しているが、ニイニイゼミの出現は、早まってきている印象はない。


ニイニイゼミの抜け殻 2013-07-09 多摩丘陵


ニイニイゼミ羽化 2010-07-10 世田谷

ニイニイゼミには、ちょっとおもしろい芸当がある。羽化直前に、地表付近まで出てきて、一時的にとどまる煙突状のシェルタを作るのだ。なぜそんなものを作るのか、そして、どれくらいの時間そこで待機しているのかは知らない。しかし、一度だけ、中で待機しているのを見たことがある。こんな泥細工をするせいか、ニイニイの抜けガラは、全身泥が塗りたくられている。

 
ニイニイゼミの煙突状の脱出抗 09-06-09 世田谷         セミの脱出抗 2011-08-23 横浜

アブラゼミやミンミンゼミは、我々にはわからないが、羽化しやすい場所というのがあって、時にほぼ同じ場所で、大量に抜けガラが見られる。この2種は見分けが難しく、触角に生える毛の量と生え方で区別する。老眼が出てきている僕には結構大変な作業だ。


セミの羽化ガラ セミの羽化場所にも一等地があるようだ 2011-08-18 世田谷


ミンミンゼミ(左)とアブラゼミ 201108-18 世田谷

最後に一つ。近年、関東地方でも、クマゼミの鳴き声を聞くようになった。
クマゼミは、もともと西日本に多いセミだ。最近は、何でも温暖化の影響にしてしまうようだが、それは違うと思う。おそらく、樹木の移植時に、根の周りの土と一緒に持ち込まれるのだと思われる。「わし、生まれたのはたしかに大阪やけど、出て来てみたら…。ここ、東京やないけー!」ということなのだろう。

鳴き声だけは目立つが、地下生活の長いセミの暮らしぶりは、わかりにくいものがある。都会のど真ん中でも、樹木さえあれば見られるのがセミだ。脱出抗や、抜けガラを見て、同じ都会者の暮らしぶりを想像してみようではないか。

  

スズメバチに出会ったら…。

2013-07-10 | 僕の散歩道
突然ですが、僕はこれまでに、スズメバチに刺されたことが3回ある。
こう言うと、「よく生きてましたね」などと言われる。
スズメバチは、確かに危険だ。近年、野外で死亡事故が最も多いのは、スズメバチであると記憶している。
でも、刺されて必ず死ぬわけではない、いやむしろ、死亡に至るのは極まれな例であると考えてよいだろう。
万が一刺されても、慌てないこと、気を沈めて、適切に対処すれば、ショック症状は出にくい。

7月10日。公園の樹林の中の樹液を覗いてみた。
いきなりスズメバチが飛び出し、僕をけん制するようにホバーリングした。


モンスズメバチ 2013-07-10 世田谷

こんな時は、動かないこと。
静かにたたずみ、スズメバチ様の怒りが収まるのを待つことだ。
「そんなことをしている間に攻撃されたらどうするの!」とよく言われる。しかし、刺されるのは、最初に飛立った瞬間が多い。ホバーリングして様子を見ているときは、警戒状態で、こちらが変な動きをしなければ、何事もなく戻ってゆく。

仕事で北海道に調査に行ったとき、白樺の樹液を覗きこんだら、突然スズメバチが飛び立った。そして僕の頭上でホバーリングしながら、大顎を合わせ「カチ、カチ、カチ」と警戒音を発するのだ。僕は、手にしていた補虫網で捕まえてしまおうかとも思ったのだが、万が一失敗したら間違えなく刺される。しかも樹液には、まだ2頭いる。逡巡した末に、僕は手にしていた網を自分で被った。

自然観察会などで、危ないシーズンには必ず言うことがある。
「もしもスズメバチが飛んできたら、みんな動かないでください。たとえ、自分の服に止まっても、決して手で払ったり、大きな声を出したり、逃げ出したりしないでください。それが一番危険です。もしも、払ってしまい、スズメバチが怒りだしたら、周りの人も危険です。払った本人が刺されるだけならともかく、周りの人も危険にさらしてします。ですから、スズメバチ様が飽きて飛び去るまで、じっとしていてください。」というものだ。
とは言っても、恐怖に耐え、じっとしているのは、相当の忍耐力を要する。時間も長く感じるが、たいがいは10秒くらいなものだ。30秒とは留まらない。

山の中に行かなければ関係ないと思う方が多いが、最近は、都会でもスズメバチが増えてきている。そして、都会ほうが危ないかもしれないと思わせる状況に出会ったことがある。
新宿の横断歩道で信号待ちしていたら、向かい側にスズメバチが飛んでいるのが見えた。そこに車が通り過ぎ、スズメバチが風圧で弾き飛ばされた。スズメバチは、怒りに狂い、周囲を不規則に飛び回った。もしもそこに人がいたら…。間違えなく刺されていただろう。
これからは、こんな危険にさらされる可能性がある事を知っておいてもらいた。

樹液だけではなく、ヤブガラシや、トウネズミモチの花などでも、スズメバトをよく見かける。近付く時は、ちょっと遠目からスズメバチ様を確認しよう。もしいらっしゃったなら…。 決して無理はしないように!

その14 恋人たちの昼下がり

2013-07-09 | フィールドノート(多摩丘陵)
東京は梅雨が明け、猛暑日が二日続いた。その翌日。7月9日。無謀にも、多摩丘陵へと向かった。
そして、今日もやはり・・・。猛暑日となった。

猛暑の多摩丘陵は静かだった。
時々ガビチョウがうるさく鳴く程度。あまり音は聞こえない。陽炎の上がる、谷戸の景色の中に、動く物の姿も少ない。
元気でいるのは、オオシオカラトンボと、ヒメウラナミジャノメくらい。あとは、ひっそりと、姿を隠しているようだ。
谷戸の奥のクリ畑では、ニイニイゼミの抜け殻が沢山見つかった。ついでに羽化したばかりの成虫も1頭。クリの幹に、ジャコウアゲハのメスが止まっていた。後翅にしわが多く、羽化したてで、翅が伸び切っていないものと思われる。

暑さのせいか、脚が重く感じた。いつもよりゆっくりと坂道を上り、尾根道脇に見付けてあるクヌギの樹液を目指した。なんといっても、今日の一番の目当ては、樹液を吸う国蝶オオムラサキだ。その姿を思い浮かべ、何とか尾根道に出た。
最初に目に入ったのは道脇のヤマユリ。白く大きな花がが咲き誇っていた。その中で、先端に2輪の花を付けた、見事なシンメトリーな株が目を引いた。僕は、そのヤマユリに引き寄せられ、いつの間にかシャッターを切っていた。――この花何かある!


ヤマユリ 見事なシンメトリーだ 2013-07-09 多摩丘陵

残念ながら、樹液には、ほとんど虫が来ていなかった。オオムラサキどころか、カナブンもいない。見られたのは、シロシタバというガくらい。残念。しかし、これは、僕が到着する前に、誰か下来て、追い払っていったのではないかと考え、他の樹液を探しまわった。
結果は…。もう続きを書きたくない。

諦めて、谷戸へ下った。いつもの涼しい木陰で、早めの昼食を取る。
口には出さないが、「さすがにこの暑さでは、虫たちも動きたくないのだろう…。」と思った。この段階で、オオムラサキはほとんど明らめていた。

それでも、食後は、何か面白いやつはいないかと、いくつかの谷戸を歩き回った。しかし、めぼしいものは見つからない。あまり多くはないが、水の張られた田んぼは涼しそうには見えるのだが、とにかく炎天下、暑いことこの上ない。
涼しそうな田んぼの水に指先を付けた。が、すぐに手を引いた。心の準備ができない僕の脳に、指先が「熱い」と言ったのだ。意に反した感覚に、僕の脳は混乱した。


田んぼの水は、風呂並みだった。 2013-07-09 多摩丘陵

気を取り直して、再び手を入れる。
やはり熱い。これはどう控えめに言っても、「熱い風呂」だ。間違えなく40度は越えている。
すぐ脇の素掘りの水路に手を入れる。こちらは流水だし、そんなに熱いはずはない。・・・と思った。
温い風呂だった。僕の感覚では、38度くらい! こんな中で、オタマジャクシや、トンボのヤゴは生きていけるのだろうか…。
携帯電話に温度計が付いていることを思い出した。気温を見てみる。なんと38.5度を示した。日向であるとはいえ、何という温度だ。

さしたる成果もないまま、谷戸の奥の大エノキの木陰で休息した。先週アナグマと遭遇した場所だ。もちろん今日は出てこなかった。――そんな甘いものじゃない。
温度計を、そのまま放置しておく、数値は下がってゆくが、33.4度下降は止まった。涼しいと感じる木陰でも、この温度だ。

ほとんど、諦めて、いつもより早目に帰るることにした。途中に、樹液があるのだが、もう期待はしていない。
この暑さだから、仕方がない。自分に言い聞かせ、尾根道へと向かった。体はさらに重くなっていた。

尾根道を帰り始めると、それは突然飛び込んできた。
道脇のコナラの幹に、蝶ネクタイのように浮かび上がるものがあるのだ。一瞬の空白があった。そして、その直後、僕はカメラの電源スイッチを入れた。目の前の蝶ネクタイはオオムラサキなのだ。国蝶のオオムラサキなのである!
しかも、雄雌が頭を突き合わせ、何か語り合っているような姿だ。


昼下がりの恋人たち(オオムラサキの求愛行動) 2013-07-09 多摩丘陵

3日続きの猛暑は、最後にとんでもないプレゼントを用意してくれていた。これまでの疲れは一気に消え去った。
帰りがけにある最後の樹液にも、さしたる成果はなかった。しかし、落胆はない。「熱いし、仕方ないね」と余裕で見送れた。恋人たちの昼下がりを見守っれたのだから…。