散歩路地《サンポロジー》      毎日が発見! 身近な自然が見えてくる!


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その13  トンボソウとトンボ  意外な7月2日-第3幕

2013-07-03 | フィールドノート(多摩丘陵)
7月2日。ミドリシジミの姿を求めて歩いた多摩丘陵では、まだまだ楽しい出会いが待っていた。今日はその第3幕だ。

オオミドリシジミを求めて、尾根道を下る。この時間だと、うまくすれば、林床の陽だまりなどで翅を休めている可能性がある。オオミドリシジミは、翅を閉じていると、ほぼ白く見える。僕は、緑色の中に浮かぶ、白い影を探していた。きょろきょろと視線を動かす中で、ちょっと違和感のあるフォルムが浮かんだ。通り過ぎた視線を戻すと、そこに緑色の花を付けた、オオバノトンボソウの株があった。

  
オオバノトンボソウ 2013-07-02 多摩丘陵

オオバノトンボソウは、雑木林に生える野生ランの一種で、多摩丘陵では、概ね7月に開花する。ランの花は、花弁が立体的で、その形から、トンボソウ、チドリ(鳥)、サギソウ、スズムシソウなど、動物に見立てた名前を付けたものが目立つ。
僕も、久しぶりの対面にうれしくなり、上から、下から、寄ったり、引いたりと、数枚の写真を撮らせてもらった。でも、家でじっくり見ると、とてもほめられた画像ではない。この花は、どうもうまく撮れない。今までに満足ゆく写真が撮れたためしがない。
オオミドリシジミはあきらめて、先に行くことにした。目指すは、第2のポイント、谷戸のハンノキだ。そこで、ミドリシジミを探すことにした。

谷戸に出た僕たちは、ミドリシジミを探し始めた。
「いないですね。」S君の声が聞こえる。「今年はもう終わったかな…。」と僕。
最も遅く発生するミドリシジミが居ないとなれば、今年のゼフィルスは終わりということになりそうだ。捜し歩くと、時々ふわっと舞い上がるとんぼがいる。ヒメアカネという小型の赤トンボだ。翅がまだキラキラしていて、羽化したばかりだとわかる。そしてまたヒメアカネ。どうやら、ヒメアカネが大量に羽化しているようだ。


羽化後間もないヒメアカネ 2013-07-02 多摩丘陵 

この場はとりあえず休戦。早めの昼食にすることにした。
昼食直後。空模様が怪しい。一瞬雨がぱらついた。しばらく木の下で待機。そして天気の回復を見て、出発することにした。

S君は、まだあきらめきれず、以前にオオミドリシジミを見つけた道を行きたいという。僕も、再び色気を出して、その意見に同意した。

その道は、人家が近く、あまりオオミドリシジミが見られる場所だとは思えないのだが、なぜか、昨年、今年と、2年続けてそこで見付けてしまったのだ。思い出してみると、ほかにも、ムカシヤンマにであったりと、意外な生き物と遭遇することが幾度か…。 そこで、この道を『意外性の道』と名付け、3匹目のドジョウを目指して歩く事にした。

突然、足元の舗装路から、大型のトンボが飛び出した。少し先のトタンの波板に止まる。その止まり方から、コオニヤンマだと確信した。まあ、オオミドリシジミやムカシヤンマほどではないが、これも意外な遭遇と言えそうだ。

舗装路から飛び立ったコオニヤンマ 2013-07-02 多摩丘陵 

結局、オオミドリシジミの姿を見ることなく、僕たちは意外性の道を通過し隣の谷へと至った。S君も、これであきらめがついたようだ。
とりあえず、目的を見失ったまま谷戸内を歩きはじめる。すると、道脇の草に、またまたコオニヤンマが止まっていた。
コオニヤンマは、川の中流域で繁殖するため、多摩丘陵の小さな谷戸には少ない。それが、今日は、これで2頭目。そして、その後さらに2頭が至近で確認できたのだ。

 コオニヤンマ 2013-07-02 多摩丘陵 左右の目が離れている(左写真)

谷戸の中で、1日にこんなにたくさんのコオニヤンマを見たのは初めてだ。
 
ちなみに、コオニヤンマは、ヤンマとは付くが、ヤンマ科のトンボではない。サナエトンボ科のトンボである。大きな体と、オニヤンマに似た模様からこの名がつけられているが、サナエトンボの仲間らしく複眼は小さめで、左右が離れている。このあたりは、5月22日「大きなトンボ」を参考にしてもらいた。

ゼフィルスの旬は終わった。今日は、ヒメアカネとコオニヤンマの2種のトンボが目立つ。よく考えると、今日のトンボとの遭遇はは、オオバノトンボソウに導かれていたのかも…。


その12 マイペースなアナグマ  意外な7月2日―第2幕

2013-07-03 | フィールドノート(多摩丘陵)
「あれ、タヌキですか?」一緒に歩いていたS君が指差した。
大きなエノキの下に座り込み、涼しい風で、体のほてりを取っているときのことだった
彼の指先には…。 藪から顔を出したアナグマの姿があった。


突如現れたアナグマ おやおや脱糞したかな? 2013-07-02 多摩丘陵

僕は小声で「動くな!」とS君を制した。
「アナグマは、目が悪いので、派手に動いたり、大きな声を出したりしなければ、こちらに気が付かない。」と続けた。そして、アナグマに視線を送りながら、ゆっくりとカメラに手を伸ばした。
アナグマは、草原脇の窪みに沿って、小走りで移動してきた。我々にきずくこともなく、5mほど前を通り過ぎ、その先で脱糞するようなポーズを2回。それから林の中の道を上っていった。


アナグマの現れた場所 樹の下に我々(2名) 赤線がアナグマの移動ルート 2013-07-02 多摩丘陵

この間、ほんの30秒。いや15秒ほどだったかもしれない。
写真を取ろうとするがレンズキャップがなかなか外れない。外しはしたが、今度は、興奮していてカメラの設定が合わない。やっと撮ったが、今度はシャッター速度が遅くブレブレ。


興奮状態で撮った移動中のアナグマ(ブレブレ) 2013-07-02 多摩丘陵

冷静を装ってはいたが、やはり興奮していたのだ。
何とか撮影できる状態になり、動画撮影で後を追った。あとで見ると、録画時間はわずか9秒! 平常心に戻ったのは、アナグマが見えなくなった5秒くらいしてからだと思う。

「今の撮れた。」
「ちょっと興奮していて、うまく撮れなかったので、あまりズームアップしないで撮りました」
見せてもらうと、小さいが、ちゃんと写っている。S君の方が冷静だったのかもしれない。
「俺、すぐに動画にしちゃったんで、まともな静止画を取ってないんだ、これ、ブログに使わせてもらっていい。」
「ああ、いいですよ。小さいですけど!」
というわけで、最初の写真になったわけだ。最近のカメラは性能がいい。かなりトリミングしたが、それでもまずまずの画質でみることができた。
「Sクンありがとう…。」

アナグマには、これまでも数回出くわした。たいがい、林道などで向かいから歩いてくると言ったものだ。多くの野生動物は、人間より先に、こちらの動きを察知して、先に逃げて行ってします。しかし、アナグマは鈍感なのか、とにかく、マイペースで歩き続けるのだ。異常に気が付いた時も、視線を定めるのではなく、鼻先を持ち上げ、しきりに上下左右に振り、匂いの情報を集めているような動きをしたのを見たことがある。目が悪いというのは本当のようだ。

何の本だか忘れたが、――山の中で胡坐をかいて座り込んでいると、そこにアナグマが現れ、どんどん近づいてきた。そしてついに、胡坐の上に片足を乗せて、初めて人の存在に気が付き、驚いて逃げて行った。―― というのを読んだことがある。

最後に、アナグマの脱糞跡を確認したが、何も見つからなかった。脱糞したのではなく、お尻をすりつけ匂い付けでもして行ったのだろう。

僕は、姿を消したアナグマの後ろ姿を追うように、同じ道を登り始めた。