石川慶監督の「愚行録」(2017年)は引き込まれたけど、あれ、よくわかんないなぁって感想だった。貫井徳郎の同名小説を読んだら、これがまた変わったスタイル。登場人物が次々に一人称で語るというもので、こちらもわかりやすくはなく。それと、映画を観てないで小説を先に読んだら、殺しや虐待をリアルに思い描けたかなぁって思った。夫木聡と満島ひかりがいいから感情移入っていう点でも映画の方が深かった。「原作を越 . . . 本文を読む
船戸与一「夜のオデッセイア」(1981年)は冒険小説をこよなく愛した北上次郎がイチ推しだったから手にとったのだが。福井晴敏や有川浩を読んだわたしには北上次郎の受けたような感動は訪れなかった。80年代を席巻した冒険小説は姿を消した、というよりは冒険的なエンタメ小説に進化したというべきではないか。夜のオデッセイアには登場人物の心理、葛藤、逡巡が濃密に描かれていない。だから感情移入できず深い感動が得 . . . 本文を読む
「やがて海へと届く」(2022年)は彩瀬まるの同名小説の映画化。彩瀬まるは直木賞候補にもなっている作家だが何も知らなかった。監督の中川龍太郎も海外で賞を取ってるが他には見ていない。でもよかった。岸井ゆきのが日本アカデミーをとった「ケイコ 目を澄ませて」は観ていないが、この作品での演技を観れば受賞したのも頷ける。「らんまん」でこんな美しいひとがいるのかと心奪われた浜辺美波だが映画もドラマもたくさ . . . 本文を読む
「とべない風船」(2023年)は2018の西日本豪雨による土砂災害がモチーフ。災害で家族を失うという不条理に打ちひしがれ、向き合い、乗りこえていく人々のハナシ。泣けました。かなり。脚本・監督の宮川博至は広島出身。これは自分ら広島の人間が作らなきゃって決意したとのこと。三浦透子がいい。美人ではないが映画が進むうちにどんどん素敵に見えてくる不思議な力がある。ドライブマイカー(2021年)、そばかす . . . 本文を読む
映画「ある男」(2022年)に続いて石川慶監督の「愚行録」(2017年)を観た。貫井徳郎の同名小説の映画化。あれ、なに、なんで云々、謎のストーリー展開に引き込まれた。が、よくわかんないなぁ、って感想になってしまう。「ある男」のほうもそうだったから、わかりにくい作り方が好きなのかも。しかしこの人、「蜜蜂と遠雷」(2019年)に撮ってるひとだから目が離せないな。
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映画「ある男」(2022年)は平野啓一郎の同名ベストセラーの映画化作品で、日本アカデミーの最優秀作品賞ほか8部門受賞。ベネチア、韓国の映画祭でも上演。ということだが、ちょっとハナシがわからない。原作と映画の違いについて書いてる人の投稿などを読んで、原作で書かれてるディテールが大幅にカットされてることがわかった。わたしがハナシがわからないのは当然だ。 でもよくわからないんだけど、なんでだろう、ど . . . 本文を読む
「耳をすませば」(2022年)は柊あおいの名作漫画の映画化作品。今日はシリアスなのも、社会派なのも、ミステリーやサスペンスなものも見たくなくて。選んだのがこれだったんだけど、胸キュンしちゃったよ。ラブストーリーでもあり、青春物語でもあり、夢を追い続ける若者の感動的なハナシでもある。漫画は読んでないが、これに限らず漫画が原作の映画、ドラマってホント多い。それだけ人々の胸をうつ素晴らしい作品が多い . . . 本文を読む
「きみはいい子」(2015年)は児童虐待や学校教育の現場の問題をモチーフにした中脇初枝の短編集の映画化作品。監督は「そこのみにて光輝く」で多くの賞をとった呉美保。幼い頃に虐待経験を持つ母親が自分の子どもを殴打する場面では見るのが辛く中断したくなったが、悩みに悩んだ新任教師が生徒を虐待する継父と対峙する覚悟で訪問するラストシーンでは泣けた。映画はそこで終わるが、簡単に問題解決してハッピーエンドに . . . 本文を読む
「今はちょっと、ついてないだけ」(2022年)。何の予備知識もなく見はじめたけどよかったなぁ。マッサンの玉山鉄二が元売れっ子のカメラマンというか、ネイチャリング・フォトグラファだったが、借金を背負ってその道を捨て、ただただ謝金返済のために働く日々を送っていた。当然世捨て人のように暗い。そこからつきが戻ってきて、再び写真の仕事に戻る復活・再生のハナシ。見終えてから、「犬がいた季節」伊吹有喜の同名 . . . 本文を読む
「母性」(2022年)は120万部も売れた湊かなえの同名小説の映画化作品。バンクーバー国際映画祭で正式招待作品としてワールドプレミア上映された際には、監督の廣木隆一とともに湊かなえも舞台挨拶し、Q&Aセッションにまででている。戸田恵梨香を絶賛するなどかなり気に入ったようだ。“娘を愛せない母”と“母に愛されたい娘”の葛藤、確執のドラマで、よかったが、泣かされるほどには感情移入しなかった。原作 . . . 本文を読む
「ONODA 一万夜を越えて」(2021年、フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本合作)は、小野田少尉が終戦から30年後に日本に帰還するまでを描いた作品。なんとフランス人のアルチュール・アラリが監督。驚いた。重厚で、胸が締めつけられるような重い内容だ。なぜフランス人が、という興味が当然あったが、このインタビューを読んでわかった。https://www.banger.jp/movie/612 . . . 本文を読む
「宮松と山下」(2022年)は監督集団「5月」の作品。藝大名誉教授の佐藤雅彦、NHKの演出家関友太郎、メディアデザイナー平瀬謙太朗の3人からなる監督集団で、数々の国際映画祭で招待上映され続けているとのこと。87分と短いがとてもよかった。記憶喪失のエキストラ俳優宮松はかつてはタクシー運転手の山下だった。その同僚のおかげで妹に連絡がつき、横浜の実家を訪れて記憶を取り戻していくハナシだが。本人の努力 . . . 本文を読む
「クライマーズ・ハイ」(2008年)をどうして見なかったのだろう。沈まぬ太陽の映画やテレビドラマ、幾つものドキュメンタリーは見たのに、横山秀夫の小説と原田眞人監督の映画は見ていなかった。1985年8月12日の事故当時、私は東京にいたが、事故をどう受けとめたか、何を思ったか、思いだせない。今年も8月にはこの作品が放送され、やっと見た。この映画は傑作だが、そんなレビューみたいなことを言うと不謹慎な . . . 本文を読む
有川浩「阪急電車」がよかったので、映画「阪急電車 片道15分の奇跡」を観た。小説を読んでいるとき翔子のビジュアルはイメージしていなかった。でも中谷美紀はしっくりきたっていうか、これは中谷さんじゃなきゃっとまで思ったが。でも時江の宮本信子、ミサの戸田恵梨香はどうかといえば、わからないなぁ。悪くはない、ぜんぜん。先に映画を観て、小説を読んだらどう感じたのだろう。この作品ではよくなかったかもしれない . . . 本文を読む
「雨に叫べば」(2021年)は、数々の話題作を世に送り出している内田英治監督と“カメレオン女優”こと松本まりかの共演、とPRしていた。開始早々の場面、松本がテンパって車に閉じこもってしまったシーンが、ありえないから“なんだこれ”ってちょっと白けたんだけど。終わってみればなかなか観せた。80年代の映画業界は当然男性優位の世界。そこでデビュー作に挑む女性監督の奮闘のハナシ。懺悔するかのごとく描かれ . . . 本文を読む